message

神在琉葵(カミアリルキ)

第1話





「ちょっと、あんた…」


不意にかけられた声に俺はゆっくりと振り返る。

声に聞き覚えはなかったが、あたりには他に人間はいないし、おそらく、それは俺に向けられたものだろう。




「……なにか?」


振り返った先にいたのは、目深に帽子をかぶった若い男で……

どこがどうということはないのだけれど、何かが俺に違和感を感じさせた。




「あんた…アラン=カルヴェスだな?」


「あ…あぁ、そうだが…」


「……あんたに伝言だ。」


「伝言?」


手渡されたのは、四つに折り畳まれたやけに白くてつるつるした紙切れだった。

伝言だなんて、一体誰が…?




「これは、だ……」


俺は言いかけた言葉を最後まで言うことが出来なかった。

なぜなら、今しがた俺に伝言を渡した男はもうそこにはいなかったのだから。




あたりは見通しの良い長い一本道。

男が身を隠すような場所等どこにもない。

一体、どこへ……


狐につままれたような奇妙な想いを感じながらも、俺はそのもやもやをどうすることも出来ず…

仕方なく、先程の紙切れに目を移した。

紙を開き、そこに印刷された文字を見た瞬間、俺の心臓は早鐘を打ち出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る