第14話
ある晩、俺は路地裏の酒場で酔客からあの森のことを聞いた。
あの森には精霊が住むという者がいるかと思えば、悪魔の森だという者もいた。
あそこでは不審な死を遂げた者やおかしなものを見たという者、それほど広い森ではないのに迷い出られなくなってあやうく命を落としかけた者等がいるという。
特に新月の晩には、悪霊が森をさ迷うと言われていた。
そんな話を聞いているうちに、俺はやはりあの森に何かがあると確信した。
俺はその町で仕事ををみつけ、しばらく住む事に決めた。
そして、暇さえあれば森に出掛けた。
特に、新月の夜には何かが起こりそうな気がして、俺は人目を避けて森に出掛けた。
しかし、町で囁かれているような不思議なことは一度もなく、一度は期待に膨らんだ胸も、いつしか諦めに変わっていた。
この場所をみつけただけでもう十分だ。
これからはもう果実のことは忘れて、一所に落ち着き、真っ当な暮らしをしよう…
そう思い、これで最後だと決め、五度目の新月の夜を迎えた。
もう何度も来ているとはいえ、黒い闇に包まれた夜の森は、やはりいつ来ても不気味だ。
俺は、ふと家を出て初めて迎えた夜のことを思い出していた。
怖くて朝まで眠れなかったあの晩のことを思い出しては苦笑した。
(………!?)
目の端にぼんやりと光るものを認め、俺はもう一度その方向に視線を戻した。
一瞬誰かがいるのかと思ったが、その光はランプのものとは明らかに違う。
もっと小さいし、光量も少なく俺の顔あたりの高さにある。
(……まさか…!?)
脳裏を過る馬鹿げた想像に、俺は突き動かされるように走り出した。
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