天声蹟譜

　この物語は、ある者の死の真相を解明するという小規模な調査だったはずにもかかわらず、それから何故か次々に別の事件に直面していく個人探偵の榊原恵一（と自称助手の少女）が、自らの傑出し…続きを読む

　題の「灰色」の生活とは、米澤穂信『氷菓』(〈古典部〉シリーズ)から採ってきた言葉だ。灰色という言葉で表現されるのは、主人公の折木による一種の自虐的な生活態度だった。青春には灰色と…続きを読む

　学校や職場が辛いなら逃げても肯定されるが、人生が辛くて逃げるのは否定されている。 　日本では、死にたいと思ってもその自発的意志に公の裏付けが取れて死ぬことが許されていない。簡単…続きを読む

　エッセイは日記ではない。両方とも事実に基づくことを書くが、エッセイは他人に読まれることを前提とする散文だ。他人に読まれるということは、例えば情報に客観性を加えることで自分の内と外…続きを読む

　この物語はもう、みんな優秀なのにぼろぼろと悪い方向に走って行ってしまう、その愚かしい様子を、何一つ責任が無い第三者であるところの我々読者が何の責任も無いからこそ無邪気に微笑ましく…続きを読む

　何か事件が起こると、決まって例えばTVの情報番組のキャスターはしかめっ面で低まった声色になり、コメンテーターは「真理はこれなり」と訳知り顔で説明を開始し、寄ってたかっていかにも皆…続きを読む

　この物語は、青年が老人を殺すことがどのような意味を見出すものであるか、通常の刑法とは別の青年独自の思考と語りによって、読者の中で殺人を再構築させる短編である。読者によっては、以降…続きを読む

　この物語は、神部藩における城下町の施設が豪華なのに対し町人が栄えていない矛盾を解明しようとするなかで、ある問題に直面する密偵の体験談である。 　はじめに思考の水面に浮かんだのは…続きを読む

　この物語は、一人の女性の没落をその主観的な筆致で描き出した短編である。例えば「セクハラ」という言葉が労働の場面で不問視されてきた女性の経験を女性の人権侵害とする認識へのパラダイム…続きを読む

　この物語の醍醐味は駄洒落である。いろいろな意味でニンマリしてほしい。 -Fin.- 　でも本当にこれしか書かないのではうら淋しいので、はみ出すようなことを考えてみる。 　思想…続きを読む

　貧しくて暑い気候の国では冬季競技が根付かないといわれるが、この物語はアフリカのサバンナ出身でありながらフィギュアスケーターになるまでの、数奇な流転体験記である。 　どうして主人…続きを読む

　読者がこの物語を読んだ上で最も考えさせられるのは、憎むべき悪しき相手は誰だったのか？という答えのない問いだろう。悪と思われる相手は三者だ。男が憎んだ国(この場合は日本国政府)、憎…続きを読む

　こちら「おすすめレビュー」からでは、文字数制限超過により感想文を掲載できないと判断したので、別の場所にて改めて掲載しました。どうかご容赦ください。 　また、しばらく本文を空白にし…続きを読む

　本文の前に。個人的な事情だが、過去に無意識と主体性との研究をして中途で断念した経験がある。俗に、他人に説明するには他人の3倍理解していなければならない、という。だが深淵の向こう側…続きを読む

　「SDGs」と一口に訊かれても、参照物なしで正式名称や理念をちゃんと自分の言葉で説明できるか不安になるだろう。だが、別に今から国会で野党が伝統芸能としている質問クイズをやろうとし…続きを読む

　この物語の軸はやはりディアーボとの戦いだ。ディアーボを相手に、なぜ存在するのかを確認し、どう戦うべきかを考えて決着つけられるか、その過程を楽しむ話だ。しかしそれとは別の、物語の線…続きを読む

　「自動車で人が轢き殺された。誰のせいだ？」 　この疑問は自動車が開発されて以降起こるあらゆる人身事故を解明するにあたって、警察や保険会社やメーカー、更には遺族やマスコミらが常に向…続きを読む

　この物語は、未来に対して「次どうなるんだろう？次主人公はどんな窮地に立たされてどんな陰謀に巻き込まれてどんな理不尽に遭遇することになるんだろう？」というストレスをほとんど感じる必…続きを読む