概要
俺の名前は殺人犯A。俺はこの世に存在していなかった。
俺は、殺人を犯してしまった。
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- ★★★ Excellent!!!アイデンティティ形成のために他者から承認を得る方法としての、無差別殺人
何か事件が起こると、決まって例えばTVの情報番組のキャスターはしかめっ面で低まった声色になり、コメンテーターは「真理はこれなり」と訳知り顔で説明を開始し、寄ってたかっていかにも皆事件を憂慮しております感を醸し始めるものである。はじめ、加害者を除く被害者と関係ない第三者の人々は、どうして加害者が攻撃行動を取ったのか不知だ。場合によっては、加害者自身でさえ自分について不知だ。加害者の生きる世界について誰もが不知である。だからこそ、特に事件を取り上げるマスコミなどは新鮮な時事ネタの好奇心に導かれ、もっと深く知りたいと思い、一時的に「教えて貰おう」という姿勢をとるだろう。だが、しばらくすると今度は…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!真正面から問いをぶつけてくる姿勢の力強さ
いろいろどん詰まりの苦しい人生を送る少年が、白昼堂々通り魔事件を起こしてしまうお話。
現代ドラマ、それも相当に直接的なお話です。ある種の社会問題というか、この世の中の抱える重たい何かのようなものを、かなりストレートに叩きつけてくる物語。物語世界そのものは私たちの生きる現実となんら変わりがなく、また事件そのものも普通に起こり得る範囲のものであるため、例えば共感にせよ反撥にせよ、感想が我がことのように身近な感覚になるのが特徴的でした。テーマ性の部分にこっちを引き摺り込んでくる強さ。『読者』という安全な観覧席から、無理矢理リングの上に引っ張り出してくれる物語。
完全に主観のみで書かれていると…続きを読む