地球文明から見たSDGs――冗長じゃない国際政策の話

 「SDGs」と一口に訊かれても、参照物なしで正式名称や理念をちゃんと自分の言葉で説明できるか不安になるだろう。だが、別に今から国会で野党が伝統芸能としている質問クイズをやろうとしているのではない。ただでさえ目標が17個・ターゲットが169個・指標が232個もあるのだし、これをひとつずつ端から説明しようとすれば興味が失せてしまうだろう。

 興味が湧かないのは、それが具体的に自分の生き様とどう関わって来ることになるのかが掴めないからだ。生き様は、未来と置き換えても良い。「持続可能な開発をしましょう」とだけ言われても、人々には何の事か解らない。ある程度立場が上の者にとっても、金の出しようがない。だがそこへ「参加したら総計12兆ドル(約1200兆円)の儲けが生まれます」「3億8000万人相当分の新しい仕事雇用が生まれます」と言われたら、そりゃよいものだと思える。SDGsという政策に興味がなくても、画期的な仕事と金儲けができる未来になら投資をしたい、そう思う人は沢山見つかるはずだ。

 SDGsは次第に社会的観念に影響を及ぼし始めている国際政策である。SDGsに賛同していると言うことによって、国際取引をしたい企業にとっては商売し易くなるし、取り組んでいないか口先だけな実績かをしている企業はブランディングが傷付けられて行くようになるのだ。だから一時期の国会議員は17色のバッジを胸元に付けてポーズを示したし、一時期のメディアもCMを盛んに打って自己宣伝をした。電通はわざわざ「SDGs Communication Guide」という説明ガイドを発表した。SDGsは、それをするうまみのエネルギーとそれをしない恐怖のエネルギーの二つの力学を作用させて人を動かすのである。

 なるほど、SDGsについて解っていた方がよいことが解った。だが先にも述べたように、SDGsは大別された目標で17個ある。「わぁだからSDGsバッジが彩り豊かなのね」などと現実逃避してもしょうがない。国際政策なのだから、外国人に「ワフー(和風)ってのはヤフー(Yahoo)ってことか」「クールジャパンのくせにフールジャパンじゃねぇか」などと上手いことを言われて嗤われている場合ではない。結局SDGsとユーモアを解せない方がいけないのだ。座布団一枚寄越した処で誰も得しない。

 じゃあどうすればいいのだろう。そこで本解説を読むのだ。なんと、この解説は4つの種類を以ってSDGs読解の手掛かりに出来るよう纏め上げた。人類文明を発展させるために、大別して4種の政策を実現していくものなのだと主張する。その4種って何か?続きは本文をどうぞ。
 更に興味がわいたなら、そこから調べ物をしてみるとよい。本やインターネット上には、理念と17個の目標について様々な語り口で解説をしてくれている。他人からレクチャーされるよりも、興味に動かされて自ら調べてみれば、SDGsに関する事のみならず深掘りして調べる力や学力が鍛えられるだろう。その点でも、本解説はよい素材になる。子供でも大人でも、興味が湧いて自発的に調べるというのは楽しいことに変わりはない。

 大事なのは解らないことではない。解らないことを解らないままにさせてしまう事態にあるのだ。解らないことは勉強すればいいのである。

不知の自覚 byプラトン
遅延は失敗に勝る byジェファーソン
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり。…されども今廣く此人間世界を見渡すに…有様雲と泥との相違あるに似たるは…学ぶと学ばざるとによりできるものなり。 by福沢諭吉