フィギュアスケートに憧れたアフリカの少年の話

平和な村で暮らしていたカンパラ君。
義父による村の近代化で偶然フィギュアスケートを知り、競技と一人の男子選手に憧れた普通の少年。
いつか自分も氷の上を滑ってみたい。お金持ちになって憧れの選手の演技を見にいきたい。
それなのに村がゲリラに襲われて、拉致されて、なりたくもない少年兵にさせられて……それでも彼は生きる事を諦めなかった。

重いテーマです。彼の身に起きたことは、紛争地帯で日常的に起きている事です。

　貧しくて暑い気候の国では冬季競技が根付かないといわれるが、この物語はアフリカのサバンナ出身でありながらフィギュアスケーターになるまでの、数奇な流転体験記である。

　どうして主人公カンパラは、出自はサバンナにもかかわらずフィギュアスケートに興味を持ったのか。それは、外の文明が義父ヤンカによって強制的に村にもたらされた(曰く「キンダイカ」された)副産に因る。それまではおじいのように植物採取生活の責任者になろうと思っていたのだ。

　文明的な生活を享受している人間からみれば、特に考えなしに自分たちの生活水準の方が優越であるからして、人の生き方の質も優越であるものと思いがちになる。
　ある意味で…続きを読む