「後ろだ」を含む小説

　ちいさい頃、三人はいつも並んで歩いていた。 　いつからだろう？　わたしだけ後ろから付いていくようになったのは。 　前をいく二人はまぶしくて、その隣にいる勇気がなくて。 　お似合…

　——私は音に恋をした。 　——でも、恋の音とは、どんなものかわからない。 　結婚をしていない三十三歳の女、眞野しほり（まのしほり）。 　甘えたがりの性格から、元彼から「…

あの日、母方の祖母は長崎にいたかも知れなかった。 もしそうなら今頃母はおろか自分もいなかった。 被爆をまぬかれても負った心の傷は、三代後まで受け継がれた。 【注意】 ※縦書きを…

ある日、「俺」の元に見知らぬ着信があった。 「もしもし、私、メリーさん。今、昭和基地にいるの」 イタズラと思い切ろうとしたが、それからもメリーさんの着信は続いた。 どうやら本…

後ろの正面は自分。

古い神々と諸仏が共存する、紀伊・和歌山。 この地にある遺跡・寺社・美術品等の「文化財」の中には、あやかし達への結界として機能しているものも多いのです。 そして、そんな結界文化…

主人公の今井泰章は、しがないサラリーマンとして生活している中年だった。 ある日、体調が悪く家に早退すると、妻が自分の上司と不倫していた。 勢いよく扉を開けて、咎めようとしたが…

見習い和菓子職人・杏崎かの子、22歳。 彼女には不思議な力があった。幼い頃から、妖や幽霊の影が見え、人の嘘が「猫語」に聞こえるのだ。 その能力のせいで親しい友人もできず、苦労しな…

新学期を迎え、席替えで窓側一番後ろの大当たりの席を引いた阿坂瀧弥(あさかたきや)。しかし左横には『鉄仮面』と呼ばれる、誰も笑顔を見たことがないと言われている生真面目な学級委員長の…

あるとき目が覚めたら中世に似た世界にいた。佐藤素一。 佐藤素一としての記憶もあり、たった今、借金取りらしいものに追い込まれている、ジーノ・ロッセリーニとしての人生の記憶もある。混…

自分の努力不足、過去ばかりを見続ける「私」。そんな後ろばかりを見ているが、かつての姿は全く違っていた。

面倒くさがりの高校生高橋省吾は道端で泣いている小さな女の子と出会う。どうにかなだめて幼女に気に入られた省吾は面倒になって離れようとするのだが、後ろから突然、幼女との関係を聞かれる…

人生の歩みの中で、選んだ選択肢。 強制されたり、仕方なくだったり、見誤ったり、深く考えず勢いに任せて…だったり、後悔して自暴自棄になる事あるよね。 そういう時の為に、選択した道…

平松綾香は自称、読書好きな平凡な女子高生だ。 でもどうしてか不思議なことに、自分とは正反対の人種が後ろをついてくる。 迷惑極まりないはずなのに、絢香の心には変化が起きたり、起きな…

全力で講義室まで走ったのだが、間に合わなかった。担当教官は厳しいので有名な清家准教授である。息切れしながら一番後ろの席にそっと座ったが、清家先生は見逃してくれなかった。

前田 未来《まえだ みらい》は前向きな性格をしている。 いつも明るく、爽やかに、太陽に向かって咲く向日葵のように前だけを向いている。 ポジティブ思考をモットーとしている中学三年生…

こんなにもすごい光景を、自分は忘れてしまったのだろうか。 おかえりなさい、と。 みんなで待ってたんだ、と。 口々に優しい言葉をかけてくれる彼女たちに、実は表情を歪めるしかなかっ…

　物語を語りなさい。 　そこに森が広がる。 　山が広がる。林が、木の匂いが。主人公の恐れが、 　どよめきが。 　太古の夜の影におびえた誰かの記憶が、国境で泣いた人物の影が。 　太…

桜咲く新学期。それは教室で二人、昼食を終えた後の事だった。 「優ちゃんはさ……」 「んー？」 「好きって、誰かに伝えた事ある？」 いつまでも後ろについて来るだけと思っていた幼…

メリーと田中がお互いの背中を追い続ける事になります。