まず、この話を読んで「○○っぽい」と思うことはありませんでした。これはこの作品の大きなアドバンテージと言えます。特にハヤカワ等では、既存の作品と似たものを嫌う傾向があるからです。
更には登場人物の過去に起因するミクロと国家の陰謀というマクロの交叉が非常にうまい。現代日本への問いかけもあり、おそらくかなり調査したであろう政治劇は日本がどういう国になっていくのか、確かなリアリティがあります。
終盤の盛り上がりも緩急がうまくついており、外連味を損なっておりません。まるでSF映画のように終盤の情景が浮かびました。
総じて一冊の小説として、満足感のある作品でした。