【10/14締切】「短歌の秋」第二弾開始! 選者は宇野なずきさん。第1回で取り上げられた歌もご紹介

10月1日から募集開始! 短歌を作る習慣を付けてみよう

第1回には1,441首(!)もの応募をいただいた「短歌の秋」第二弾のお知らせです。

本イベントは、募集期間内にカクヨムで発表された短歌作品から、ゲストが気になった歌を選んで生配信で評(コメント)していくというもの。
奮ってご参加ください!

第2回「短歌の秋」概要

スケジュール

募集期間10月1日(火)0:00~10月14日(月)23:59
歌会配信10月27日(日)19:00~21:00頃

※歌会配信は「カクヨム」公式Discordで実施します。
※歌会配信で取り上げる歌について、事前の公表は行いません。配信後、本サイトにてご紹介いたします。

募集テーマ

「光」

季節の変化に応じて、光に感じられる印象はがらりと変わりますよね。
日向が灼けそうにじりじりとして見えていたのが、涼しくなるにつれて、温かくて一息つける場所に感じられたり。
夜の街明かりや月の光はもちろん、推しの輝き、はたまた光線(ビーム)など、いろいろなテーマに登場させることができるはず。
そんな「光」を捉えた一首を作ってください!
※「光」という言葉を短歌のなかに含む必要はありません(含んでもOK)。

ゲスト歌人のご紹介

宇野なずきさん

インターネットを中心に活動している歌人。2024年6月20日にメジャーデビュー歌集「願ったり叶わなかったり」を刊行。階段から転げ落ちたのに無傷だったことがある。

■テーマ「光」に沿った宇野さんの1首

ひかりってひらがなで書くひとがいてそれに照らされたいと思った
(『願ったり叶わなかったり』短歌研究社)

応募詳細

応募要項

  • テーマに沿った短歌1首以上(一人何首でも応募可)
  • 自作のみ(既発表可)

応募資格

  • カクヨムに会員登録している個人の方のみご応募いただけます。
    ※カクヨムへの新規会員登録はこちら

    応募方法

  • 以下の内容で作品を投稿してください。
作品タイトル指定なし。こだわりがなければ「『短歌の秋』投稿作品」等と記載してください。
エピソードタイトル応募する短歌を入れてください。
本文指定なし。こだわりがなければ「『短歌の秋』投稿作品」等と記載してください。
タグ「短歌の秋」(※「」はタグに含まれません)を設定してください。
  • 一人で二首以上の応募も受け付けます。その場合は同一の作品内で新規エピソードを作成し、エピソードタイトルに応募する短歌を入れてください。
    ※タグを設定して投稿すれば応募完了です。「コンテスト」や「自主企画」への参加は不要です。
    こちらに投稿サンプルを作成しておりますので参考にしてください。
    ※はじめてカクヨムに投稿される方は、こちらをご参照ください。

    注意事項

  • 応募期間に新規に投稿された作品が対象となります。
  • 締め切り後に作品を削除、あるいは非公開にした場合は、応募が取り消しとなりますのでご注意ください。選定を受けたい場合は、2024年10月27日まで作品を公開状態にしてください。
  • 選定に関するお問い合わせには一切応じられません。
  • その他、記載のない事項については、カクヨムのガイドラインに準拠いたします。

第1回「短歌の秋」結果発表!岡本真帆さんによる配信でのコメントをご紹介!



◆総評
想定よりもたくさんの作品をいただいて、ありがとうございました!
いろんな歌があったんですが、「赤」というテーマからの発想が共通していることも多くて、それを面白く思いました。
いただいた歌の中だと、頭の中のイメージだけで作った作品よりも、描写に実際にその人が感じている感覚が、リアルに描かれている作品のほうが胸に迫ってきました。
ふだん短歌に触れている中だと、ファンタジックな世界観で短歌を作られる方になかなか出会わないのですが、カクヨムで活動されているからこそ着想された作品も見受けられて、興味深かったです。

◆作品評
今日もまた 変わらず赤い 陽が沈む あたしがふられ たっていうのに
作者:kuramori002

下の句が印象的です。「あたし」に取って衝撃的なことがあったのに、変わらず沈む夕日の大きさ、赤さへの恨みが感じられる。上の句は一般的なことを言っているのに、下の句でグッとそれを裏切って個人的事象が現れるのが面白い。よい歌に出会えた、と思った。「あたしがふられたっていうのに」という感情的になる部分が句跨り(※下の七音と七音に一つのフレーズを跨いで詠む技法のこと)になっていることで、溢れる感情とリンクしているのもよかったです。
(岡本真帆)


こんこんと命の証湧き出でるじっと腕見る健康診断
作者:山葉らわん

自分も採血の時は抜き出されている血を見つめて、「こんな色をしているんだな」と思ったりするので、とても共感しました。また、「血液が赤い」ことへの改めての驚きや発見を、「命の証」として詠むのは、詠み手の方特有の表現だと感じました。作中主体(※短歌の主体)は採血に対して恐怖心が無かったり、看護師を信頼していることが感じられるのもおもしろいです。採血好きなんでしょうね(笑)。身近なテーマを短歌に落とし込んでいるのがよいと思いました。「じっと腕見る」で、「腕を見る」ではなく、助詞の「を」を省略されていますが、ここでは五音、七音に無理やり押し込めているという印象はせず、見つめている時間の連続性は「腕見る」のほうが納得感があると思います。
(岡本真帆)


ちふれでもケイトでもなくディオールのがんばれわたし結ぶ唇
作者:可愛白兎

「ちふれ」「ケイト」「ディオール」すべてコスメのブランドなんですが、前二つは普段使いで使える気軽な価格帯の化粧品なのですが、そこにディオールを並べていることで、「わたし」ががんばる必要があるシーンで特別なアイテムを使っていることを表している歌です。いろんなブランドの、いろんな口紅を持っていて、TPOやファッションに合わせて選ぶのは化粧するかたであればよくあることだと思うのですが、歌の中で何に立ち向かっていくのかが描かれていないことで、どんな勝負が待ち受けているのか自由に想像できるのも楽しいですね。自分を励ましている様子もかわいらしくて好感が持てました。口紅を上下に馴染ませて、きゅっと口を結ぶ様子は、闊歩して勝負事に向かっていく姿まで見える感じがします。
(岡本真帆)


泣きはらす君のまなじり思い出す新幹線の窓に雨粒
作者:狩野緒 塩

まず、「君のまなじり」と新幹線の雨粒の取り合わせが良いなと思いました。新幹線の速さで雨が斜めに細く、細くかかるようなイメージと、目尻の形のイメージが不思議とリンクしてきて、赤いものを見ている歌ではないんですが、赤く腫れた目を思い出していて、主体のいる、今現在の目の前にあるわけではない、というところが素敵だと感じました。思い出の中の、距離のあるイメージという形でテーマ「赤」にアプローチしている作品はなかなか無いと思います。新幹線の中から見る雨だとグレーの風景に雨粒が線を引いているわけで、そんな灰色の世界で赤を思い出しているというのが、主体の気持ちの強さを表しているなと。
(岡本真帆)


ジャングルに住まう幻獣赤竜の革でつくったバッグで新宿
作者:ゴオルド

ファンタジーの要素が入ってきている歌です。実際には存在しない赤竜のバッグと、現実の新宿が取り合わされているのですが、新宿は魑魅魍魎感があり、多種多様の人が行き交う場所なので、「たしかに新宿ならジャングルで獲れた赤竜の鞄提げてる人いてもおかしくないかも」と納得してしまいました。現実とファンタジーをうまく繋げているように感じます。原宿や五反田だったらきっと居ないと思うんですけど(笑)。
(岡本真帆)


レッドスネーク、カモン レッドスネーク、スローダウン レッドスネーク、ホールドミータイト
作者:汐留ライス

特徴的な歌で、「レッドスネーク」に対して3回命令しているような歌です。直訳すると「赤い蛇」になるんですが、わたしは大きな生き物のように想像しました。一般的にこういうふうに生き物に命令する時は犬だったりすると思うんですけど、「レッドスネーク」に向けてできるんだ、というのもおもしろい。一見怖い存在に思えるものを、短歌の主体が操っていて、しかも「抱きしめて」と命じるのも意外性がある結句で面白く読みました。また、「レッドスネーク」はコードネームのようにも思えるので、人やAI、ロボットやスパイ的な存在とも捉えられて、どんな存在か想像すると広がりがありますね。「ホールドミータイト」の抱きしめて、という命令は、切実な内容でもあるので、はみ出した感情のぶん、音が溢れでている感じもします。 
(岡本真帆)


紅に染まったお前を慰める奴がいないならおれがいるだろ
作者:桜井信乃

XJapanの「紅」の歌詞を本歌取りというか、「紅」で歌っているひとに対して語りかける構造になっているんですが、「俺がいるだろ」と親しく語ってくれている主体はいいやつなんだろうな、と思ったりしました。印象的なフレーズから発展させて作っているものは短歌の世界にあるんですけど、ネットミーム的なものも短歌で作れる、という挑戦をしている歌だと感じて取らせていただきました。また、紅のサビに対する返歌としても捉えられると思いました。「紅」はかなり世間的に認知度が高い歌だと思うので、そこに対して返歌していく、という姿勢も面白い。断言されると、「確かに居るわ」と納得してしまう。ドンと胸を張っているイメージが浮かびました。
(岡本真帆)


宝物庫の鍵こじ開ける盗賊の嵌めた腕輪にはにせものの赤
作者:箔塔落

この歌は、悪いことをしている盗賊の瞬間を切り取っているんですが、どんどん視点が近づいていって、腕輪に焦点が合う感じが、ファンタジーゲームの映像のカメラがズームしていく動きに似ている印象を受けました。また、連作としても、箔塔落さんの作品は世界観が統一されていて、他にも、〈王の首を包んだ赤い国旗には凱歌の中でも滲むものあり〉〈戦勝を告げるラッパは鳴り響き血の赤だけがない紙吹雪〉〈謁見を受ける女王は細き指の紅玉《ルビー》の重さをひそかに憂え〉など、確固としたファンタジーの世界が箔塔落さんの中にあって、そこから「赤」にまつわるものを切り取って読み手であるわたしたちに短歌として見せてくださっているような感じがしました。登場する人物も王様、戦士、農夫など様々で、一つ一つ短編小説が作れそうなくらいイメージが緻密にあります。この世界が実在しているような感覚がしたので、とても面白く読みました。もっといろんな歌を見てみたい。
(岡本真帆)


何色であるかは試薬にならなくて〈アゲてこ〉の意のハート見つめる
作者:深川泳

ハートの絵文字は、色によって意味があって、それを送ることで相手の反応を試す、というのがあるらしいんです。ハート一つから相手の気持ちを憶測している情景に、「アゲてこ」というギャルっぽい表現があるのも良いですし、題材としてハートの絵文字の色を取り上げているのも真新しく感じました。メッセージ画面にはハートの絵文字一つがあるのかどうなのか、解釈が分かれるように思うんですが、メッセージ画面にある記号、言葉以外でのやり取りに対して、深読みしてしまう感情を描いているのもよいなと感じました。
(岡本真帆)


黄色から赤へと変わる短さで子は忠告を忘れてくれる
作者:月出里ひな

「黄色から赤へ」は信号機で、「子」を見ている親の目線から、信号が変わる数秒の間に注意したことを忘れてしまう、ということなのかなと読みました。「忘れてくれる」という表現が、責める表現だと呆れていたり、諦めている印象になるんですが、「忘れてくれる」だと子どもの言うこと聞かなさを明るく捉えている感じもします。「赤」をどういうふうに使うかが難しかったと思うんですけど、忠告を忘れる子どもへの比喩として使うというのが、短歌における比喩の使い方という点でもすごく良いなと思いました。
(岡本真帆)


スーパーで出会えぬ非日常がある駅構内に燃える髪色
作者:識織しの木

短歌の主体がどんな生活をしているのか、書かれていない部分から垣間見えるのがよいですね。このひとにとって「スーパー」は生活圏で、「駅構内」は非日常なのかな……と、キャラクター性が見た気がしました。「燃える髪色」は赤系の色なのかな、と思うんですが、このひとの生活で見かけるのは茶髪や黒髪が大半で、真っ赤な髪色の人を見かけて、それが目に留まったんだな、という感情の動きが流れるように伝わってきました。
(岡本真帆)


一生は13年と告げられてまだなお走る真紅の愛車
作者:北風こんろ

「愛車」に対する愛情を感じて、グッと来ました。車を買う時に、「あと走って13年ですね」と言われたのでしょうか。中古車なんですかね。「真紅の愛車」で、ただの赤ではなくて真紅を選んでいるところに、キラキラ輝くような車への愛着を感じました。大切にしているから、この先も走ってくれそうですし、本当の感情を抱えている表現のように感じられました。
(岡本真帆)


赤とんぼホバーで待とう自動ドア 人に紛れて涼めよ休め
作者:かなかなか

自動ドアが開いて店内に入ろうとしているトンボに対して、主体が「休んで行きなよ」と言っているような情景を思い浮かべました。「ホバー」の部分は、滞空していることを表しているので、人がいないと開かない自動ドアの前で待機している感じで、この歌は、「赤とんぼ」と「ホバー」の取り合わせが意外なのがおもしろい。また、たしかにトンボの動きって鳥の飛び方とは全然違って特徴的だよな、と思って、ハッとしました。このあとちゃんとこのトンボが外に出られることを祈っています(笑)。
(岡本真帆)


茜さす非常階段 天国に続く廊下に換羽期の鳩
作者:外村ぽこ

「天国に続く廊下」は屋内なのか外なのか、「天国」がどういう意味のものなのか、まだ読み取りきれていないんですが、そのあと「換羽期」という現実的なフレーズと「鳩」という天国とも関係の強いモチーフをあげていて、取り合わせが面白いなと思いました。一首全体を通じて世界観に惹かれた歌です。
(岡本真帆)


気がつくとあなたの帽子に赤トンボいつもなにかに祝福されて
作者:月夜の黒猫

「いつもなにかに」あなたという存在が祝福されている、という2人の継続的な関係を表す優しく、幸せな世界観で、帽子に「赤トンボ」が止まる、という些細だけど嬉しい光景が合わさるのが素敵でした。
(岡本真帆)


わかれ道「またね」とこちらを見る君の赤い輪郭ぼやけてきちゃった
作者:mame0

別れた後で「君」のことを忘れたくない、と思っているのに、残像が記憶のなかで少しずつ消えていってしまう、という歌なのかと思いました。最初別れてすぐの歌かと思ったんですが、ものすごく前の話を書いていて、その瞬間から時間が経っているのに何度も夕日で赤く滲む「君」の輪郭が遠ざかっていく光景を思い出している、というのもありえて、情景の起こすイメージが素晴らしかったです。
(岡本真帆)


両腕に夕陽は抱えきれなくてぜんぶ赦して坂にたたずむ
作者:友未 哲俊

まず「赦」してとここに赤の入った字を使っているのが面白かったです。両腕に抱えきれない夕日を表現した上で、その光が坂に刺していて溢れているような情景が見えて素晴らしいなと思いました。「ぜんぶ赦して坂にたたずむ」に主体のぼうっとしている様子や、両手を広げている感じも伝わってきて、面白く読みました。
(岡本真帆)


緩やかに赤を自分の色だとは思わなくなるまでの月日よ
作者:小亀令子

赤って確かにそういう捉え方あるな、と思ったんですが、「赤」って主役の色というイメージがありますよね。この歌の主体は、若い頃は赤が自分に似合う、自分の色だと思っていたのが、「月日」が流れていくうちに自分の色と思えなくなることを穏やかに受け入れている。特に、「自分の色だとは思わなくなるまでの月日」に音数を割いていることで、分厚い時間の流れがあるように思えて、よいなと思いました。
(岡本真帆)