
高校生限定の小説コンテスト「カクヨム甲子園2025」は、2025年9月8日(月)午前11:59まで応募受付中です。もう応募は済みましたか?
今回は、「カクヨム甲子園2021」ロングストーリー部門で大賞を受賞した、占冠 愁さんの単著アンソロジー『RUST RUN!!!』の刊行を記念し、スペシャルインタビューを実施しました。

占冠 愁さんの受賞作であり、書籍にも収録されている『世界は日高色に染まる。』が書籍化に至るまでの道のりや、当時高校生だった占冠 愁さんがどのようにして大賞受賞作を生み出したのかなど、様々な質問にお答えいただきました。
カクヨム甲子園に応募する方はもちろん、作家デビューを目指す高校生の皆さんは必見です。ぜひご覧ください。
▼『RUST RUN!!!』作品詳細
kakuyomu.jp
▼世界は日高色に染まる。(占冠 愁) kakuyomu.jp
――単著アンソロジーの刊行、おめでとうございます。カクヨム甲子園2021《ロングストーリー部門》で大賞受賞されてから、今回のアンソロジーがどのようにして企画されたのか、その経緯を教えてください。
占冠 愁: 中学時代からカクヨムで、実在する町を舞台にした短編をいくつか書いてきました。受賞作の『世界は日高色に染まる。』は北海道浦河町が舞台ですが、こちらの書籍化が決まった際に、ほかの短編も載せてはどうでしょうと私からご提案いたしました。この国には心惹かれる景色や文化、あるいは歴史を持つ素敵な町がたくさんあります。そういった地縁を活かしてこそ物語は現実味を帯びて、一層鮮やかに伝わると思い、「すべての物語には"故郷"がある」をテーマに、3つの中短編を綴じさせていただきました。
――書籍化のお話があった際、率直にどのようなお気持ちでしたか?喜びや驚き、あるいは戸惑いなどがあったかもしれません。ぜひその時の心境を教えてください。
占冠 愁: もちろん飛び上がって喜びました。同時に、こういうご縁を頂けたのは奇跡ではないのかなとも思いました。というのもカクヨム甲子園2021で大賞を賜った際に、舞台にさせていただいた浦河町の方々にもご報告できればなと、北海道新聞社様にご連絡差し上げていたんです。個人的なご縁はここから始まるのですが、今となってはあのとき地域へお声がけしようとしたところから、書籍化につなげられたのかなとも感じます。
――北海道を舞台にしたアンソロジー『RUST RUN!!!』には、大賞受賞作「世界は日高色に染まる。」を始めとする作品が収録されていますが、それぞれの注目ポイントやお気に入りの部分があれば教えてください。
占冠 愁: 表題作『RUST RUN!!!』は、廃線の危機に瀕した地元の鉄道を守るために立ち上がる高校生たちの青春小説ですが、これは実際に2020年春に廃線となったJR札沼線が廃止に至るまでの経緯をもとにしたハーフ・フィクションです。彼ら彼女らの戦いはやがてコロナ禍という理不尽の時代に翻弄されていきますが、これは同じ時代に中高生を過ごした私たちの世代と通底するところがあって、彼ら彼女ら/私たちの青春時代は何だったのかを振り返って問いなおす作品です。『世界は日高色に染まる。』は北海道日高地方、『幾つ春に別れて』は北海道空知地方が舞台の短編ですが、それぞれ違った毛色の作品です。これらの地に足を運んで、見て感じて、その場で降ってきた「物語」をそのままに記しましたので、旅をするような感覚で読んでくだされば嬉しいです。
――カクヨム甲子園2021の開催時は高校生だった占冠愁さんですが、現在20歳になられて、高校生だった当時ならではの執筆の苦悩やその乗り越え方、逆に、高校生だからこそ持てる視点や強みなどはありましたか?
占冠 愁: 高校生という時分は見識が狭いもので、学校と家庭を往復する日々の中では感性も鈍ってしまいます。ここから連れ出してくれるのが創作の世界であって、多くの人にとってそれは読書なのだとしたら、私にとってはむしろ旅でした。本を開くように、旅に出て、その地の紡いだ「物語」を知るのです。見識が狭いからこそ、解き放たれたとき全てが鮮やかに見えます。そのときのバッと広がるような鋭利な感性こそ、高校生の創作の最大の強みです。この感傷は歳を重ねてからでは再現性がありません。(少なくとも今の私には16歳の頃に見た「日高色」は描けません)
――カクヨム甲子園での経験を、今回の書籍化を始めとする、今後のご自身の創作活動にどのように活かしていきたいですか?
占冠 愁: 実は表題作の『RUST RUN!!!』ですが、むかし『廃線』というタイトルでカクヨム甲子園に出した短編をもとに書いた作品です。『幾つ春に別れて』に至ってはカクヨム甲子園2022で選考落ちした作品なので、このアンソロジーは私のカクヨム甲子園挑戦の軌跡とも言えるかもしれません。読み返してみれば、カクヨム甲子園で同い年の作家さんと読みあって得たものばかりだなあと思います。だからこそ書き方から表現、感性に至るまで、これからも結果的に活きていくと思います。
――今回のアンソロジーを手に取る読者の方々、そして今年のカクヨム甲子園の参加者に、ぜひメッセージをお願いします。
占冠 愁:
人口流出、過疎化、交通問題。地方を巡る環境は年々厳しくなり、継ぎたい未来、守りたかった文化、残せなかった景色、色々なものが失われていきます。それをせめて文章に留める、伝えていく、それが私の作品の役割です。その地に暮らした人々の営みを記憶し、継承する物語。お手に取っていただけたら幸いです。
また、カクヨム甲子園に挑戦する高校生のみなさんへ。他の参加作品を読むこと、意外に侮れません。読書も旅もそうですが、自分という鳥籠の中から飛び立つこと――十代の特権です。このときの感性だけはなにものにも代えがたい。もちろん入賞に勝る栄誉はありませんが、入賞できなかった作品とてこうして世に出すことは叶うし、ずっと活き続ける。あなただけの「世界を変える作品」を、世界は待っています。
――素晴らしいご回答、ありがとうございました。
「カクヨム甲子園2021」ロングストーリー部門 大賞受賞作『世界は日高色に染まる。』も収録された、単著アンソロジー『RUST RUN!!!』は、8月23日発売です。ぜひご覧ください。
また、カクヨム甲子園2025へのご応募もお待ちしております! kakuyomu.jp


