KADOKAWAとカクヨムを共同開発する株式会社はてなの20周年を記念し、はてながカクヨム上で初めて開催した「はてなインターネット文学賞」。2,406作品におよぶ応募作品の中でもっともインターネット文学らしいと選ばれた個性あふれる受賞作の作家のみなさまに受賞作や創作活動、そしてインターネット文学についてお話を伺いました。
--受賞作『尺八様』について、教えて下さい
2021年の夏は八尺様(尺八様の元ネタであるインターネット発の怪異)がツイッター内で流行しており、毎日のように僕のタイムラインに白ワンピースを着た上背のある痴女が流れてきました。
ブームの寄生虫こと春海水亭は、そんなブームに乗ろうと思って白ワンピースを着た上背のある痴女のコメディを書き、その結果として八尺様要素が消滅しました
ちなみに、作中における「尺八様だと思ったら尺八様じゃありませんでした」という天丼は、八尺様が原典では八尺という身長とぽぽぽという奇妙な鳴き声だけが共通しており、その姿は時代によって異なるという点から来ています、爺ちゃんも尺八様の姿を知らないので、じゅぽぽぽ言ってる上背のある痴女を見ると「すわ、あれが尺八様か」と思ってしまうのです。
結局最後まで尺八様は登場しませんでしたが、本物の尺八様は白ワンピースの痴女ではないのかもしれませんね。
--カクヨム賞ではカクヨム内でのおすすめレビューを勘案して選考をいたしました。尺八様へのおすすめレビューは数も熱量も圧倒的でした。おすすめレビューをみてどう思われましたか?
尺八様に限ったことではありませんが、おすすめレビューを貰うたびに嬉しく思っています。
文章を書くという行為は非常に面倒くさい行為だと思っていますが、そんな面倒臭さを乗り越えてでも「この作品を読んだ感想を誰かに伝えたい!」と自分の作品が誰かに思わせたのならば、なんと言えばいいかわかりませんが報われたな――と思います。
ただ正直なところ、感謝とか歓喜よりも先にカクヨムって思ったより利用者がいるんだなぁということを思いました。
--インターネットで小説を書きはじめたのは、いつ、どこで、どのようなきっかけでしたか?
具体的に何歳だったかは覚えていませんが、最初の体験が小学生の時の星のカービィで書くリレー小説(と言っても、しっかりとした小説の形を取っているわけではなく、チャット形式で様々な人間が書いていくタイプのもの)だったのは覚えています。
それから、FF9の二次創作、デスノートの二次創作など今は消滅した投稿サイトを転々としながら、作品とも言えないような駄文を生み続けました。
ほとんど、荒らしと言っても過言ではなかったと思います。
人生の殆どの期間、創作のベースが「あの作品のあのキャラを自分なりに書きたい!あのキラキラ輝くものを自分なりに再現してみたい」だったので、一次創作に手を出すことは殆どありませんでした(即興小説トレーニングというサイトでわずかに書いたぐらいです)
本格的に一次創作を書き始めたのは2020年の2月からでした。当時の僕はかなり長い間創作活動を行っておらず、何かしら書きたいが特に書きたいものはないという焦燥感に駆られる日々を過ごしていました。
そんな日々を過ごす中、「殺伐感情戦線」というTwitterの企画に出会い、殺伐百合というテーマの素晴らしさと周囲の人間の企画参加から、本格的に一次創作の世界に足を踏み入れることとなりました。
そして、現在に至る――と言えたら良かったのですが、「殺伐感情戦線」への参加(殺伐感情戦線は毎週お題が発表され、そのお題に沿って作品を投稿する)は一ヶ月程度で辞めてしまいました。速攻でネタが無くなってしまったのです。
最後に「殺伐感情戦線」に投稿した2020年3月中頃から2ヶ月ほど、何も書かない期間が続いたのですが、知人が「小説家になろう」へのオリジナル小説の連載を開始し、それに触発される形で「大人はメスガキには負けないが羆は想定していないんだが???」の執筆を開始しました。
「殺伐感情戦線」といい、「大人はメスガキには負けないが羆は想定していないんだが???」といい、創作仲間がいなければ僕が一次創作に手を出すことは無かった可能性がかなりあるので、そこはもう感謝です。
--春海水亭さんにとってインターネット文学とはなんでしょうか?
パワーワードという言葉に代表されるように、文章には上手さか美しさ以外に強さという評価軸が出てきたように思われます。
個人的には前後の文脈がわからなくてもそれだけ抜き出して面白く、そして読んでくださっている方が思わず突っ込んでしまいたくなるような文章のことを強い文章と言うのであると思っています。大賞を受賞されたファンキー竹取物語などは全文が強いですよね。
そんな強い文章による拡散力、僕はそこにインターネット文学を見出しています。
つまり僕にとってインターネット文学とは、ニンジャスレイヤーのことです。
--ありがとうございました。