概要
領主一家八人が暮らす館には、彼等の生活を支える、多くの使用人たちがいる。
彼等の愛すべき日常を切り取った短編集。
※架空の世界を舞台にしておりますので、年中行事や宗教観は現世界と異なります。
※下記の三話には、蜂蜜ひみつさまの作品『てんとれないうらない』の一行より、インスピレーションを得て創作しました。
第四話『首に 加齢臭を纏ってこそ 一人前』
第六話『昼飯のあと ついまぶたが重くなってしまう』
第七話『何もかも 許されるのなら 光の速さで 会いに行く』
(作者様に、使用、掲載許可は得ております)
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!生きること、食べること、日常を紡ぐこと
異世界ファンタジーですが、魔法もモンスターも出てきませんし、剣での戦いや国同士の争いもありません。
ですが、ここには何よりも温かく豊かな「日常」があります。
ひとつひとつのお話が、ひとりひとりのキャラクターが、丁寧につくられた料理のように、丹精こめて育てられた花のように、愛情深くこまやかに描かれています。
はじめは読者に良い印象を与えないようなキャラクターにも、読みすすめれば彼なりの思いや考えや事情があり、家族に愛されていることがわかります。
また、「食べること」の大切さを語っているのも、本作の大きな魅力のひとつ。
食べることは生きることであり、生命を繋げることだというキャラクターたちの想い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!モブなんていないんだ。どんな人にも豊かな人生がある――優しい眼差し
小さな幸せ。
でも、それこそ、きっと誰にも大切ななくてはならないもの。
生きていくうえで大切なことがぎゅっと詰まった短編集でした。
わたしは何より、幸まるさんのあたたかな眼差しが素敵だと思いました。
人生観をそのまま表した、優しい物語です。
アニメも漫画も小説も、だいたい、ヒーローがいてヒロインがいる。
活躍する人たちがいる。
だけど、どの世界にも、ヒーローやヒロインでなくとも生きている人たちがいて
その誰もが、その人自身の人生の主人公なのです。
生きる、ということを大切に描いた物語。
「種を蒔く」話がとても好きでした。
みんなそうして、優しくあたたかく眼差しのもと、微笑んで生きてい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一話一話、大切に読み進めて頂きたいです。
小説を読む時、その読み方は人それぞれ。僕はそう思っています。ルールなんてない。自由に読んでいい。最初から読まなくても、又は好きな部分だけ繰り返し読んでも、どんな読み方でも自由。
だけど、こちらの物語。じっくりと、そこに書かれている言葉、文章、人物、出来事、そしてそれらが織りなす物語、噛みしめる様に、ゆっくり、じっくり、深く、深く、愛して、抱きしめて、読んで頂ければ幸いです。
何故なら、筆者である幸まる様が伝えようとする事、その意味、とても、とても、深みがあり示唆に富んでいます。小説家なら当たり前かもしれませんが、それでもこう書かせて頂きます。
言葉をとても大事にしていらっしゃる。
僕…続きを読む - ★★★ Excellent!!!毎日の楽しみやったの。ここだけの話、入院中も楽しませてもらいましてん。
ただいいお話というだけと違いまっせ
領主の末息子がスープの入った鍋を引っくり返したとき、そのスープの中身から誰が口
にするものだったかを考え反省し、領主館の厨房で働く人たちに頭を下げる。
話はそれだけに留まらず、頭を下げた末息子の侍女への体罰事件へと発展する。
ああ、ダメやわ。この体罰を与えた長男は領主にはなられへんとオカンはあっさりと切
り捨てたのやけど、思慮深く優しい作家さんは彼に挽回のチャンスを与えた。
ときに立ち止まり考える機会をもらい、共に成長してゆける。
そんな物語、一緒に楽しんでみまへんか。
この物語が終わってまう。ショックを受けてたのやけど……。
いやいや、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!当たり前の日常は、だからこそ尊い
この物語は、英雄も豪傑も居ない、血沸き肉躍る冒険とも歴史に残る大事件とも無縁の、古今東西、きっとどこにでもあった日常の物語です。
封建時代の君主制国家と思われる世界観の一隅、領主館と呼ばれるお屋敷で織りなされる、老若男女それぞれの人間模様。
そこで語られるのは、恋だったり仕事だったり自分自身の在り様だったり子育てだったり未来だったり大切な人との永遠の別れだったりと、様々なことに迷ったり悩んだりしながら、その日その日を前向きに生きている、下は四歳の少女から、上は年齢不詳の老人までの、等身大の人々の姿。
彼らの笑顔が、『そうだった。幸せってこういうことだったね』ということを、思い出させてくれます…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これこそ、悲喜こもごも
舞台は、とある地方の領主館。
八人の領主の一族と、彼らの下で働く使用人達が織りなす日常が色とりどりに詰まった、珠玉の短編集です。
地方とは言え領主の館ともなれば、働く人間は少なくありません。となれば、その彼らが抱える事情も様々です。
時には恋愛に胸を焦がし、時には噂話で一喜一憂…こうした様々な問題や事件が、シンプルで無駄のない文体で生き生きと描かれていきます。
また、主だったメンバーは調理場の面々。彼らが幾度となく見せる仕事に対する情熱は、この物語における人間ドラマの深みを一層増してくれています。
人間ドラマという意味では、領主の一族もまた然り。まだまだ幼い末っ子から、領主の座を退い…続きを読む