第10話偽りの非日常。

(俺「アリス帰るの遅いなー。」

(シャナ「そりゃそうですよ。別世界転送装置は起動から完全な転送に結構かかるんですよ?」


アリスが俺たちの家から出ていってから5時間が経過した。思ったよりかかってるなー。


(サソリ男「…なぁ?この縄キツイすぎるぞォ。少し緩めてくれェ。」


(俺「アリスが帰ってからって言ってるだろ…。アリスにてめぇをこれからどうするか聞かなきゃならん。」


サソリ男は俺のパンチが効いているのか演技なのか、力が出せないようだ。

…縄って言っても、縄跳びなのにな。


ガチャ。

(アリス「すまない。遅くなった。」

おぉ。アリスが帰宅したぞぉ

(シャナ「おかえり!!!」

(俺「遅かったなー!で、どうだった?!」


(アリス「…まぁ一応王のとこへ出向いて、私が無事だとは伝えた。シャナについては、まだ見つけれてないと…」


(俺「えぇ?!王様に嘘なんかついて大丈夫か?」

 王様に嘘ってよ…。王様って大体暴君だと聞くが。


(アリス「大丈夫だとは思う…。あと、シャナを探しにまた誰かがくる、ということはとうぶんないと思う」


(シャナ「お父さんは優しいから…嘘をついたとしててもアリス相手なら許すと思います。」


うーん。そんなものなんだろうか?だが王様はアリスの言ったことを受け入れたみたいだな…。

もしや、説得すればシャナが人間世界で暮らすことを許してくれるかも?


(サソリ男「おい。俺はどうすんだよォ?はやく自由にしてくれ」


(俺「そうだったな。アリス?こいうどうするよ?」

(アリス「…悪いがお前を自由に身にすることはできない。今日からこの家で縛られながら暮らしてもらうぞ。」

(俺「え?」

ここおれんちだぞ。


(シャナ「えぇ?!このサソリさんと?!危なくないかな…」


(アリス「大丈夫だろう。これをサソリ野郎お前にはつけてもらう。」

そう言ってアリスはなぜかビニール袋らしきものの中からおもちゃの手錠と思われるものをだした。

(俺「なんだよそれ?てか、帰りにお店にでもよったのか」

(アリス「あぁ。そうだ。サソリ野郎にはこの手錠を3つずつ付けてもらう。」


3つずつ…。つまり右手、左手、に3つずつつける…。3つ付けたとしても所詮おもちゃじゃ…。


ガチャ、ガチャ、ガチャ、


(サソリ野郎「これ…さっきの縄よりもキツイかもしれねェ。」

うわぁ…これじゃまともに手使えないぞ。


(俺「でもコイツが危険なのはこの尾じゃないか?そこはどうするんだ?」

(アリス「それにはさっきの縄跳びを使う。尾を曲げてそれをぐるぐるに…」


そう言いながらサソリ男の尾に縄跳びを巻きつけていく。


(サソリ男「ぐ…それもキツイ!お前らにはもう手をださねぇよ。」

(アリス「うるさい。黙っていろ。貴様は信用できんのだ。」


(アリス「…ふぅ…。」

…こんなんでいいのか…?力付くで突破できそうだが…。



ーーー2時間後ーーー


アリスがサソリ男をぐるぐる巻きにしてから2時間ほど経過した。

アリスがサソリ男から目を離しても、サソリ男は落ち着いたままで、特に暴れるなんてことはない。

……俺が心配性なだけか…?そう思うほどサソリ男はおとなしい。



(俺「…お?もうこんな時間か…」

サソリ男を見張っているのに集中してたからか、もうすっかり夜だ。

(アリス「今日は疲れた…。私はもう寝るぞ。」


(シャナ「私もねよー!」

(俺「えっ?!じゃあ俺も…」


(サソリ男「おい。俺はどこで寝ればいい?」

あぁ…そっか…コイツの寝床か…。俺はベットで寝てるし、シャナはテレビの隙間。…アリスは…

アリスはどこで寝てんだ???


(俺「お、おい。アリスお前、今までどこで寝てたんだ?」


(アリス「あー、天井裏だな。」

(俺「…そんなとこで…。」

(アリス「静かで居心地がいいぞ。」


(俺「あぁそう…。」

(サソリ男「だから俺はどこで寝ればいいんだァ?」

(俺「お前はもう床で寝てなさい」

そういうことでサソリ男には床で寝てもらうことにした。



ーーー次の日の早朝ーーー


(俺「ん…ぅぅん?」

俺が目覚ましもなっていないのにこんな朝早く起きた理由は、

ベットの下らへん…俺の足元に何かが当たって目を覚ましたんだ…。

(俺「…だれだ…?シャナ…?アリス…?違うか?」

モゾモゾ。

やはり何かが動いている。


バッ!


布団を引っ剥がすと、

(サソリ男「さムゥ!」

(俺「………」


(サソリ男「おい。寒いだろ。まだ寝てたいんだ。」


そう言ってサソリ男は俺から布団を奪い返し、眠り始めた。


こんなことがあったから、二度寝なんてものはできっこない。


(俺「あ…あ…眠いのに…」


いつもならまだ寝てたけどなぁ…。サソリ男と同じベットで寝るなんてことは今の俺にはできない…。


(俺「…そういえば…俺には元々モーニングルーティンなんてものがあったな…。」


もうとっくに消えちまったけど…。


俺はとくにすることもなく、椅子に座って太陽が昇るまでじっとしていた…。


(シャナ「ぐぅゔうぅん!」


俺の次に起床したのはシャナだった。いつもこんな唸り声をだすもんだから、この時間帯に俺は少しだけ目を覚ます、がすぐに寝る。今日はそんなことはできないが…。


(俺「シャナー。おはよ」

(シャナ「?!たいきさん!?今日はやいですね!!!」

(俺「まぁ…ちょっとね…。」

シャナは朝から声量がおかしい。正直近所迷惑になっててもおかしくはないレベルだ。


(アリス「…お?山本たいき。貴様今日は早いんだな。」

(俺「うん…ちょっとね…。」

シャナの次にはアリスが天井から現れる。


(俺「アリスはいつもこの時間におきてんのか?」


(アリス「まぁな。シャナの唸り声で、目を覚ます。」

ははぁん。シャナの唸り声が目覚まし時計代わりか。


(俺「…お腹空いたし朝飯にするか…」


俺の朝飯はまずトーストがほとんど。そのため、アリスに食パンを買い込んでもらった。


チィーン。


ちょうどいいぐあいに焦げたパンの上に塗るバターはたまんない。

そしてコーヒー。朝のテンプレご飯みたいなものだが、おいしさは抜群だ。


アリスはパンにレタスやらトマトやらの野菜を挟むサンドイッチをよく食べてる。


シャナはパンにサバを挟むとかいう美味そうにはあまり感じないものをいつも食べている。


(サソリ男「おぉ。朝飯かァ。」

コイツの存在忘れてたぁ。


(俺「パンとか色々あるからテキトーに作って」

(サソリ男「あぁん?お前はこの手錠が見えねぇーのかァ?」


そっか…これじゃコイツなんもできねーな。

仕方ねーや。


(俺「ほれ。」

サソリ男には普通のパン2枚でいいだろう…。


(サソリ男「おい…せめてなんか挟めよ。肉とかさ」

注文の多いやつだ。


それで俺はしかたなーく、鶏胸肉を塩コショウで焼いただけのものを挟んだパンを作った。


(サソリ男「まぁ…これならいい」

そう言って手錠のついた手で食いにくそうに口へ運んでいた。






いつのまにか、俺の静かな朝はとても騒がしい朝へと変わっていた。

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