第22話恐怖心と恋心は紙一重。

俺の住む街で一番有名な心霊スポット…それは山奥にたたずむ廃トンネル。今は使われておらず車は通らない。そのトンネルの名前は「猫泣トンネル。」名前からして怖いと話題に。そこへシンがカメラを落としてしまったので俺とシャナ、シンで探しに行くことに。


(大森シン「はーい。車乗ってー」

(シャナ「その心霊スポットのトンネルってどれくらいかかる所にあるんですか?」

(俺「それが…1時間はかかるんだよなー。山奥だし…近くに民家とかもない」

猫泣トンネル…俺は一度だけ行ったことがある。まぁあれは昼の時間帯だったけど相当不気味だった。廃トンネルのため明かりもついておらず、中はただただ暗い。トンネルの出口の明かりが少し見えるだけ。廃トンネルと言えば落書きが目立つだろうが猫泣トンネルには落書きが入り口付近にしかない、奥へ行くに連れて落書きが消えていってるのだ。それが余計怖さを増している。あのときはトンネルを抜けると異世界へ繋がってるんじゃないか?とか思ってたからトンネルを通ることはなかった。

(大森シン「猫泣トンネルの近くにはコンビニとかないからねー。いったんコンビニ寄ってからいこー」

(俺「あぁ?それだと時間が遅くなるぞ?今でも19時だ…」

(大森シン「大丈夫っしょ!どうせもう暗いし…飲み物買うついでにライトとか買うから!」

シンの野郎ちゃんと探す気あるのか?黒色のカメラだし暗闇に溶け込んで見つけにくいだろうに。


(シャナ「たいきさん…変なのでないですかね…?」

シャナは見るからに怯えているな…。さっきからガタガタ聞こえるがシャナの震えの振動だった。まぁほとんどの人は怖いだろうな…。実際俺は幽霊は信じてはいないが…夜の廃トンネルっていうだけでいろいろと怖さがある。

(俺「大丈夫だろ…幽霊とか見たことないし…まぁ変な人はいるかもだけど」

(シャナ「そんなこと言わないでください」

わぁお。シャナのこんなに元気のない声は初めてだな。やっぱアリスとか連れてきたほうが良かったかな…。いや…サソリ男連れてくれば良かった。

(大森シン「うぃーす。コーラ買ってきたぞ。ライトも3つ」

(俺「コーラかよ…普通の水がよかったけど…まぁいいか」

(シャナ「こーら…知らない飲み物ですね」

(大森シン「ぇー?!シャナちゃんコーラ知らないの?!まじかぁ…田舎だとコーラもないのか」


シンはシャナを田舎出身だと思い込んでいるようだ。俺は別にそんなこと言ったことないが。

(大森シン「この上のキャップを捻って開けて飲むんすよー」

プシュ

(シャナ「きゃっ!!!…」

(大森シン「ギャハハハハハハハ!」

うわっ…コイツ性格悪る。

(大森シン「ごめんごめん!初めてじゃそこびっくりするよねー」

(シャナ「これ…飲んで大丈夫ですか?なんか…色おかしいですけど」

(俺「全然飲んで良いんだぞー。そういう色の飲み物だから」

(大森シン「さぁコーラ飲みながら出発するよー」

ゴックゴックゴック。

シャナの奴、初めてコーラ飲む奴とは思えないほど一気にいくなー。この飲みっぷりはお嬢様とは思えないな。

(シャナ「ぷっ…なんかシュワシュワします…口の中が…けど!いい味ですね!」

なんだ?いい味ってのは、美味しいのか…?

(大森シン「2人ともー。こっから暗い道入っていくからね。きおつけろよ!」

気おつけるものとかないと思うけどな。気おつけるのはシンの運転だけだろう。


(シャナ「ほんとに…暗いですね…木ばっかりで明かりが一つも…」

(大森シン「まぁこの道は廃トンネル行くやつくらいしか通らないしなぁ。整備する必要がないもんな」

(大森シン「お?タイヤ痕があるなー。最近誰か車で来たみたいだな。」

(俺「まぁ人気な心霊スポットだもんな。若いカップルでも来たんじゃねぇのか?」

でもなんで心霊スポットなんて行くんだろうな。みんな面白半分で言ってるんだろうけど。


ーーー45分後ーーー

(大森シン「あと少しだぞー!もう完全に山の中だ!!!」

シンはなぜかテンションが高い。まだ20時頃というのに深夜テンションか???お前のカメラを探しに行ってるっていうのに。

(シャナ「………」

ガタガタ…ブルブル…ガタブル。

シャナはコンビニ辺りからずっと震えてる。あまり口数もないし…ガチで怖がってるな…。そう言う俺もさっきから寒気がする。普通に冬だからってのもあるかもしれないが…車内は暖房を効かせてるためそんなはずはない…。寒気を紛らわせようと外を見るも外は真っ暗、見えるのはうっすら見える木々だけで月明かりもない。

車のライトのみで走行している。

(俺「おい…?シャナ大丈夫か?」

(シャナ「………はい。大丈夫なんですが…尻尾が…」

ん?尻尾…?あっ…シャナの尻尾がピィィーン!っと立っている…それに尻尾の毛が少し逆だっている。猫が威嚇するときみたいな?あの感じ。

これは寒気のせいか?

(大森シン「シャナちゃん大丈夫?でももう付くから安心だよー」

何が安心だよ…。付くって言っても心霊スポットだろうがよ。


(大森シン「おっ!付いたぞ!!!猫泣トンネルだあ!」

お…遂に付いたか。約1時間走行しやっとつくことのできるトンネル…。正直付いてほしくなかった。

(俺「さ…降りてさっさとカメラ見つけるぞ」

ガチャ。

車のドアを開け外に出ようとする

(俺「うおっ…寒…」

ありえないくらい寒い…寒気とかじゃなく普通に寒い。

(大森シン「ひぃ。なんだよ。コンビニで降りた時とは別次元の寒さだなー?」

(シャナ「うっ…風も吹いてないのにこの寒さですか…」

(大森シン「さ、寒いけどはやくカメラ見つけなきゃ…よし…行こう」

遂に…トンネルへ入ることに。猫泣トンネルの看板?は古すぎてもう文字がまともに飲めない。

相当前のトンネルだからな。


タッタッタッ。

よし…入ったぞ。…トンネルは異様な雰囲気だな…なんつうか、外とはまったく空気が違う。寒さもだ。圧倒的にトンネル内の方が寒い…。それに風が吹くとヒュゥゥゥゥーと風の音がする。それがまた不気味だ。


タッ。

(大森シン「ギャァァァァァァ!!!」

!!!なんだ!!シンがいきりなりアホみたいに叫びだしたぞ!

(大森シン「ひっ…人…?ひとがいるぅ?!」

(俺「はっ…?人?…うわ?!」

まじだ…俺たちが行こうとしてるトンネルの奥…人影がある。はっきりと、女性だろうか?あれは確実に人。でも…ライトすら持ってない。

(シャナ「た…たいきさん…」

シャナは目をつぶっている。怖くて直視できないんだろう。無理もないが…


タッタッタッ。

(大森シン「ギャァァァァァァ!近づいてきたぁ!」

なっ…まじかよ?!

(???「ちょ…ちょっと…脅かしちゃったかな?大丈夫すか?」

なんだ?女性の声が…

(女子高生さき「あーどうも、ここに肝試しに来た高校生のさきでーす」

なんだよ、ただの心霊スポットに来た女子高生か。紛らわしい…。

(大森シン「じょ…女子高生か…いや!でもこういう場合って大体幽霊じゃ!」

なんて失礼な奴…でもまぁ映画や小説だとこういった場合は幽霊とかかもなー。


(女子高生さき「私はー、ちょっと友達と3人で来ててー、ライトを車の中に置いてきちゃったから友達に持ってきてもらってんのー」

そうだったのか…それでライトも持ってなかったのか。てか伸ばし棒多いな。

(大森シン「あっ…そうだったんだ…そう言えばトンネルの脇に黒い車があったな…アレか」

(女子高生さき「そそー。」


タッタッタッ。

(大森シン「ひぃぃぃ!今度は後ろからぁ!」

(ギャル美「あれ…?シン?」

(大森シン「へあ?ギャル美?なんでー?!」

な…ギャル美?!

(女子高生さき「ちぃーす!ライトあざっす!もしかしてこの人たちと友達なーん?」

そう言うことか。ギャル美がシンのカメラ探しを断ったのはコレがあったからか。たしか女子高生となんちゃらとか言ってたらしいな?

(ギャル美「なんだー!シンのカメラってここで落としたんだ。それならそう言ってよ〜。」

(大森シン「いや…だってお前が、カメラ探してくれない?、って言った時点で断ったから…」

(女子高生さき「まーまー。アンタたちカメラ探しに来たんだって?トンネルの奥にそれっぽいのあったよーん」

(俺「おっほんとか?!」

(シャナ「良かったですね!大森さん!」

(大森シン「うん!じゃあさっさと見つけて帰ろー」

ザッザッザッ。

ん?なんだ?トンネルの奥から足音…?これは人間の足音か?

(シャナ「あの…ギャル美さんたちのお友達ってトンネル奥にもう一人…?」

(ギャル美「いや…もう一人は車の中にいるから…それはないよ〜」


(イノシシ「ぐゔゔぅ〜」

あっ!イノシシかい!

タッタッタッ!

あっ!イノシシが向かってくる!

(女子高生さき「あっ、ちょいこっち来てるんですけどぉ〜」

なんでイノシシに突進されているのにあんなテンションなんだ!


(大森シン「あっぶっなぁーい!!!」

ドォーーン。

(シャナ「あ…大丈夫ですか?!」

イノシシが突進する瞬間にシンが女子高生に突進した!それでイノシシが直接当たることを回避しやがった…。あの野郎、やるときはやるんだな。

(大森シン「たっく…いってて…さきちゃん?大丈夫かい?」

(女子高生さき「あっ…はい…大丈夫でぇす…」 なんだ?さっきまでギャル口調だった女子高生が急に敬語に?

(大森シン「それなら良かったよ!ほんとに危ないイノシシだね…」

(女子高生さき「(この人…かっこいい…)」

…女子高生の顔が赤くなってる。これはまさか…いや、そんなはずは。

(ギャル美「まさか…さっきー…アンタ…シンに惚れちまったの…?」

(女子高生さき「そ、そんなわけないじゃぁ〜ん!もうギャル美ったらぁ〜」

これは確実に惚れてやがる。まぁイノシシの突進から守ってくれたんだもんなー。

(大森シン「さっ…俺達はカメラを探そうぜ!」


タッタッタッ。

(女子高生さき「たしか…この辺にあったような…あっ!あれじゃないすか!」

(大森シン「おお〜!これこれ!ありがとうねさきちゃぁぁん!」

おぉ…やっと見つかったか。まぁ案外あっさり見つかったな。これでやっと帰れる。シンのカメラも別に壊れてるようではないし。


ヒュゥゥォォォー。

おっ風が…。

(女子高生さき「きゃっ………」

トン。

(大森シン「あ…大丈夫かい?さきちゃんはドジだなぁー!アハアハアハ」

(女子高生さき「…あの…私…あなたのことが

…」

なんでこんなことになってんだ?惚れることはあるかもだけどここで告白するか?!ここ心霊スポットだぞ!縁もクソもないだろ!

(大森シン「シッ…だめだよ。ここでそれはいけないよ…」

コイツもコイツで変なことしてんな。口調が完全にナルシストだぞ。


(俺「もう帰ろうぜ…疲れたし?」

心霊スポットで告白する奴なんて見たくないぞ。さっさと帰る。

(シャナ「そ、そうですよ!大森さん!帰りましょう!」

(大森シン「まっそうだな。さきちゃん!またね☆」

(シャナ「ギャル美さん!バイばーい!」


そうして俺達はそそくさと心霊スポットから帰ることに。その後普通に家に帰ることに成功した。


後日シンのカメラには写ってはいけないものが写ってたそう。

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