第27話冬月の緑荘で映る星空は。
(俺「おっふぅー。最高だったぜシン!」
俺達はコテージの初日の夕食としてシンが料理した豚汁うどんを食べ終えた。
(シャナ「ほっとにおいしかったですよ!大森さんが料理得意だったなんて思いもしなかったです!」
(大森シン「はっはっはっ!だろぉ?」
シャナが猫舌だったので食べ終わるのに結構かかっていた。俺たちがコテージに着いたのが20時頃で、今は22時だ。
(俺「で、こっからどうするー?寝るのもありだけど」
(大森シン「おいおい?たいき、忘れてることあるなー?。冬のダイヤモンド。」
(シャナ「!そうでした!!お星さん!!!」
あー、そういえばそんなこと言ってたな。冬に見れる星。
(大森シン「さぁ!外行ってみるぞぉ!」
ガチャ。
(俺「おっ…さむっ!街とは比べもんにならねーな。」
山は気圧が低くなるから街よりも断然寒い。
でもまだ雪とかは降りそうにない。雪が降る寒さはこれ以上か?。たまったもんじゃねーな。
(シャナ「しゃ…しゃむい。」
おっ。シャナの尻尾がピィーンと伸びている。たしかシンのカメラ探しのときも寒さで尻尾が立っていたな。毛も逆だっている。
(大森シン「よーし。焚き火をしよう!この寒さじゃまともに星は見れないからねー」
(俺「焚き火なんてできるのか。」
(大森シン「おうよ。コテージ一軒につき焚き火セットは必ずあるって。」
へぇー。まぁたしかにコテージは冬ってイメージがあるな。ありがたいもんだ。
(大森シン「薪置いてねーの。チャッカ!」
ボワッ。
シンがチャッカマンで火を付ける。日が付いた途端に暖かさが広がる感じがする。
やっぱ本物の火の暖かさはストーブや暖房とは違うなー。なんだろう…火の中に暖かさと温かみがあると言うか…言いにくいが安心感があるのだ。
(シャナ「うぅぅ…あったかいですね〜。なんか眠たくなってきました」
火を見てると眠くなるって聞いたことがあるな。
火のゆらぎや、音、熱、光によってリラックス効果が生まれるとか…。動画サイトで焚き火だけの映像があるほどだもんな。効果があるのはたしかだ。
(大森シン「シャナちゃん冬のダイヤモンド見るまで寝ないでよー?」
(シャナ「はぁーー〜い。」
もう眠そうだが…。でもシャナは車の移動中に寝てたはずだ。でも猫ってよく寝てるよな。たしか本能や、消化の効率から他の動物より長時間の睡眠が必要なんだっけ。シャナもおんなじなのか?。
(オーナー「お、君たち焚き火をしているのかい?」
(俺「あっ、オーナーさん。そうなんですよ。まぁ冬のダイヤモンドっていう星を観ようとしたんですが寒くて焚き火を…」
(オーナー「あ〜。冬のダイヤモンドか。たしかにここからよく見えるよ。あれ?そのお嬢さんはもう眠そうだね。」
(大森シン「あ〜そうなんですよ〜。」
(オーナー「…その子変な格好してるね?」
(俺「あっ。えーとコスプレイヤーでして…」
(オーナー「………そうかい。ゆっくりしていってね」
そう言うとそそくさと歩いていった。オーナーさんが変に疑わなくてよかったぜ。
(大森シン「おっ!あれじゃね?!ダイヤモンド!!!」
(俺「おっ見つけたか!?」
シンが南の方向を指差している。その方を見るとたしかにすごく綺麗な星々が見える。
…星の中でも少し力強く光っている星が…。
(俺「ダイヤモンドだから六角形の形をしているはず…」
冬のダイヤモンドは別名、冬の六角形とも言われている。そのため他の星よりは見つけやすいはず。
(大森シン「やっぱあれだわ!青色の星もあれば白色…オレンジも!まーじでキレイだなぁ。」
顔をななめにするとたしかに六角形の形になる。まさにダイヤモンド。
(俺「星なんて久々だ。」
(大森シン「そうだなぁー。こうやって見る星全部に名前があるんだよなー感慨深い」
確かにそうだ。いつも何気なく見るものすべてに名前があるんだ。
星もそう…今見てる星はどれほど遠くにあるんだろう。そういえば…地球から見る星は何年も前のものって話だ。ほんとに不思議だ。
まずいな…これ以上星やら宇宙のことを考えると頭がいっぱいになってしまう。
(大森シン「うぅふうっぅ。シャナちゃんどうよ?これが冬のダイヤモォンド。あれ?」
(シャナ「くぅ…ふぅぅ…」
(俺「あっ…寝てる。」
俺とシンが星に食いつきになってる間に寝ちまったのか。コイツが一番冬のダイヤモンドに興味を持ってたんだけどなぁ。
(俺「星も見たし、もう寝るか。」
(大森シン「そうだな。シャナちゃんを起こすわけにもいかないし。」
今時刻は22時30分を超えている。寝るにはちょうどいい時間だ。明日からはトレーニングもするつもりだ。早めに寝るのが吉。
シャナを2人がかりで持ち上げ、コテージの中まで運ぶ。これが結構重い。
そしてシャナをソファに置く。
(俺「布団とかってどこにあるんだ?」
(大森シン「えーと、2回の奥にあるって書いてたな」
タッタッタッ。
(俺「おっ。広っ…布団多っ」
ここに来て初めて2階へ行ったが中々広い。ここでキチキチだが10人は寝れそうだ。
やっぱコテージは大勢で来る人が多いようだ。
綺麗に畳まれている布団を3人分引く。
枕も3つ。
(俺「シーン。俺布団敷いてっから、湯たんぽ作ってて」
(大森シン「おっけー。」
5分ほどで布団を敷き終わり、一階へおりる。
(大森シン「あちあちの湯たんぽできてんぜー」
(俺「ナァァイス!」
何気に俺はこれを楽しみにしてた。冬の毛布は暖かくなるまで時間がかかる。体温で温めるからだ。でも湯たんぽがありゃ一瞬だ。
(大森シン「…それよりシャナちゃん2階へ運ばなきゃ」
(俺「あっ…そうだったな」
正直ソファに寝かせたままってのも良いかもだが…体制が体制なので、朝起きたときに筋肉痛みたいになってそうだ。
(大森シン「さっさと運ぶぞー」
階段を1段1段登っていく。シャナの重さで不安定になるときがあり、揺れてしまう。でもシャナはまったく起きない。
(大森シン「はあっーはあっー。きっつーぅ。シャナちゃん重たすぎだなぁ。」
(俺「まぁ結構食うし…。」
疲れた…コテージに来て一番の疲れがシャナを運んだからってのは嫌だぞ。
(大森シン「さぁ寝て疲れを取りきろうぜぇー」
シャナを布団に寝かせる。
そして俺は湯たんぽを足元に置く。ゆっくり布団の中へ足からいれていく。
あぁ。
感じるぞ。湯たんぽの温かみを。ありがたさを。
足先が湯たんぽにわずかに触れる。
(俺「あっ。」
思わず声が出た。でも仕方ない。誰でもでちまう声だ。
(大森シン「変な声出すなよー」
シンは既に布団に入り切り、モルモットのように丸くなっていた。
俺も完全に布団に入りきる。
(俺「あぁぁ〜〜〜」
またしても変な声を出してしまった。いや出さずにはいられなかった。
湯たんぽの温かさに気持ちよさを感じていると瞼がどんどん落ちてくる。
もう眠たくなったか。
そんなことを思っているうちに俺の瞼は完全に落ちきった。夢の中へ堕ちていった。
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