第31話トールとユダ
俺はシンとシャナが乗った車の中で睡眠をとっていた。だが目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。
(俺「アンタ…これはどういうことだよ?」
鉄製の重たい扉を開け、俺の目の前に現れた男。そう、コテージで筋トレをしていた大男だ。
(筋トレお兄さん「まー、そういう反応になるか」
目の前に縛られた人間がいるというのに動揺していない。やはりこの男が俺を縛ったようだ。
(俺「これはどういうつもりなんだ?!身代金目的の誘拐か?!」
(筋トレお兄さん「身代金だ?そんなんじゃないな」
(俺「シンは?シャナもどうした?!俺と一緒にいたはずだ!」
(筋トレお兄さん「あー、お前と同じようなかんじになってるぞ」
…シャナもシンも俺と同じくどこかで縛られているのか?。そもそもまずここはどこだ?見た感じどこかの廃墟だろうか?。
外からは何も音は聞こえない。人がいるような場所ではないだろう。
いや、まずは場所特定よりもこの状況をどうにかしなくては。
(俺「おい。アンタ。どういう目的で俺たちを監禁してるんだ?」
(筋トレお兄さん「理由か…そんなもんお前に教えるつもりはない」
(俺「じゃあアンタは誰なんだ?仲間は?」
(筋トレお兄さん「ほー。この状況よくそんなに質問できるもんだな。ま、オレの正体は知ってんじゃねぇか?」
俺が知っている…?いやこの男はコテージで初めて会った。こんなにガタイのいい男だ。前に会っていたら確実に覚えているはず。
(筋トレお兄さん「…犬護長ドントル。知らねーか?」
(俺「犬…護長ドントル…?それがお前の名前か?知らないぞ!」
(犬護長ドントル「じゃ、こういえば分かるか?…………アリスの兄…といえば」
(俺「?!」
(犬護長ドントル「おっ。やっぱ知ってるな」
アリスの兄?!…アリスが長にならなかったら兄が犬族の長になっいたと…だがアリスの兄は数々の問題行動により犬族の長の座を優秀なアリスに奪われた。そう言っていた…コイツがアリスの兄…ドントル…?
まてよ、?じゃあコイツが俺たちを監禁してる理由って…
(犬護長ドントル「んじゃ、正体もわかったんだ。これ、取っても良いな。」
そう言うとドントルは被っていた帽子を取る。
(俺「くっ」
そこにはアリスと同じく赤毛の獣耳が現れる。
チッ…トレーニングしているのに帽子を被っいたことに気づくんだった。
(俺「…ドントル…アンタが俺たちを監禁している理由は…「シャナ殺害」のためか?」
(犬護長ドントル「…なかなか感はいいみたいだな。でもおしい。そのシャナ姫殺害は"計画"の一部にすぎない。」
なに?計画の一部?俺は隣国の王がサソリ男に命令したシャナ殺害の後任者かと…いや、でもそうなるとなぜアリスの兄が?………今の情報だけだと何が目的なのかさっぱりだ。
(犬護長ドントル「まー、そこでおとなしくしてるんだな。」
そう言うとドントルは鉄製の扉を開けた。
(犬護長ドントル「またくるからな。」
ドォン。
扉が閉まる。
(俺「…計画の一部…」
アイツの言ったシャナ殺害は計画の一部…あれはシャナ殺害よりも大きな計画があるってことか。
だがシャナ殺害も計画に入っているのならシャナが危ない。どうにかしなくては…。
でも縄はとけそうにないぞ…。
…今考えると少しおかしいところがある…なぜシャナと俺を捕まえたかったのならあの時、襲わなかった?ジムにシャナが来たとき。あの時襲えば関係のないシンまで巻き込むことはなかったはず。アイツラ獣人は人間にバレるようなことはしないはずじゃ?それとも関わったシンを消すつもりか?
(俺「考えてもまったくわからない………ん?」
なんだ?少し音が聞こえるぞ。
コツコツコツ。
これは…足音?耳をすませば音が聞こえる。音が少し響いてるのか。
足音ってことはまたアイツが来てるみたいだ。
(犬護長ドントル「たっく。お前遅いぞ…」
ん…?なんだ?誰かとしゃべっている?俺に向けての言葉じゃないようだ。やはり…仲間がいたのか?誰だ?新手だろうか。
ギィィィイィィ。
(犬護長ドントル「おーい。何もしてないだろうな?」
(俺「あぁ。」
ガチャン。
もう一人の仲間は入ってこない?…。
(犬護長ドントル「おい。暇だからなんか話でもしようぜ」
(俺「あ?じゃあお前のいった計画とやらを聞かせろよ」
(犬護長ドントル「ダメだなそりゃ。お前に聞かせるとな。にしても…妬みってもんは怖いな?俺も言えないが。」
(俺「妬み…?それがなんだよ?」
コイツ…さっきから何が言いたいのかよくわからん。
(犬護長ドントル「ま、そーだな…あ、さっきお前オレの仲間はいるか?とか聞いてたな?教えてやるよ。今、この世界にいるのは"3人"だ。」
この世界にいるのは3人…この世界にってことは獣人の世界には他にもいるってことか。
(犬護長ドントル「ま、もしかしたらもっと増えるかもしれないけどな?」
(俺「もっと…?なんだ?仲間集めでもしてんのか?」
(犬護長ドントル「…仲間は多い方がいいだろ?…増えるだけじゃなく"減る"こともあるかもだけどな」
(犬護長ドントル「そーだ。お前"トール"ッて知ってるか?」
(俺「あ?知らねーよ」
(犬護長ドントル「北欧神話の神…そしてその神々の中で一番強いのがトールだ。」
(俺「あっそ。それがどうした?おとぎ話でも聞かせてくれんのか?」
(犬護長ドントル「ハッ。オレの通り名だ。トールってのは。犬護長ドントル、そしてトール。いい呼び名だ」
(俺「自分語りなんてするタイプには見えねーけど」
(犬護長ドントル「言うじゃねぇか。まぁお前はじきそのでかい口を開けなくなるだろうがな」
…やっぱりコイツの言う計画は俺やシンのようなシャナたち獣人に関わってしまった人間の抹消か?それなら合点がいく。ジムで俺たちに手を出さなかったのはシンもまとめてヤルため。
…じゃあコイツはシンの車がでたあとに俺たちを捕らえたのか?まさか車を止めたってんじゃねーだろうな…?。でもコイツなら素手で動く車を止めてしまいそうだと思ってしまうほどの大男。俺にどうにかできる相手では…ない。
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