BBQの肉
「つか、イヌ丸、お前は何を買ったんだ?」
永犬丸統志郎の手には。
多くのビニール袋が掲げられている。
「取り敢えずは肉だ、肉を沢山買っておいたぞ」
「流石だ、海でバーベキューすっからな、肉は多くて困る事は無ぇ」
そう八峡義弥は永犬丸統志郎を褒めて。
「あとイヌ丸、服を着ろ、流石に公衆の面前じゃ警備員の人も出て来たぞ」
永犬丸統志郎の服装は全裸だった。
そんな永犬丸統志郎の姿を見て、警備員の男性が近づいてくる。
「おっと、一先ず、服を着ようか」
「つかずっと着てろよ」
そう言って、八峡義弥と永犬丸統志郎は。
その場から離れるのだった。
屋上へ一足早く到着する八峡義弥と永犬丸統志郎。
様々な子供用の遊具が起動する屋上から見える景色は辺り一面の街を見渡す事が出来る。
「うわ暑ッ」
八峡義弥はそう言って蒸したタイルの上に立つ。
永犬丸統志郎は回収した自前の服を着ながら舌を出しながら深く溜息を吐く。
「まったく、夏は厄介だね、折角の肉が腐ってしまう」
「クーラーボックス買っときゃ良かったな」
「遠賀あたりに頼むか」
取り敢えず八峡たちは屋根のある場所で一休みする事になる。
其処は一昔前のコインゲームが並べられていた。
じゃんけんを楽しむゲームや、針がマスを示すとそのマスの枚数分のコインが出てくるコインゲームもある。
八峡義弥はそれを見て少し懐かしみを覚えたが、流石にそれをする程に金を消費する気は無く。
またそれを子供の頃の様に熱中して出来るものでもないと理解している。
「あ、奥に自販機あるわ」
「なんか居るか?」
「ありがとう、我が友よ」
「それじゃあ、水を一つ」
「あいよ」
八峡義弥が自販機に小銭を入れるとミネラルウォーターを押す。
そして八峡義弥は適当にコーラを購入した。
「ほら」
「ありがとう」
そう言って笑みを浮かべる永犬丸統志郎。
ベンチに肉の入ったビニール袋を置いて一息つく。
二人は何も言わず、飲み物を喉に流し込んでいく。
暫くして携帯電話が振動した。
八峡義弥がそれを確認すると、遠賀秀翼からの電話だった。
「おう、遠賀、どうした?」
『買い物が終わった所だ、お前は屋上か?』
「あぁ、イヌ丸と一緒、あ、あとさ遠賀、クーラーボックス買って来てくれよ」
『CoolerBox?
「ウェイ?…お前それ、ウェイじゃなくてホワイだろうが、アメリカ語やめろお前、英語を学べ英語をよ、ま、取り敢えずよろしくな」
会話を終えて通話を切る。
永犬丸が水を飲み込んで息を吐く。
「幽霊遣いか、どうだった?」
「問題無いだってよ」
「十分もしない内に屋上に来るかもな」
「そうか」
そうして再び沈黙が起こる。
それは決して話が続かないワケでは無い。
ただ特別話す事も無いので、この時間は小休憩の様なものだった。
話題があれば、普通に会話を再開するだろうし。
そもそもこの二人は、会話をしなくとも確かな絆を感じている。
「あー……彼女欲しいわ」
ふと八峡義弥は口癖の様にそう言った。
永犬丸統志郎はその話題に入る。
「作れば良いだろう、我が友ならば簡単だろう?」
93期生の中で一位二位を争う容姿を持つ八峡義弥。
ホストで人気上位に食い込む程の顔の良さがある。
永犬丸統志郎も八峡に次ぐ容姿の持ち主であり。
八峡がホストならば、永犬丸統志郎はモデルの様な雰囲気があった。
「まあ、顔だけは良いからな」
「そんな事は無い、我が友の良い所は沢山ある、ボクはそれを知っている」
「…イヌ丸ぅ」
八峡義弥は永犬丸統志郎を見る。
既にシャツを脱ぎ捨てて半裸な男だが、何処か魅力を感じつつあった。
「あー、いかんいかん、趣味が偏る所だった」
八峡は少し考えて。
「おし、この夏、少し頑張るか」
八峡義弥はそう決意した。
どうやら、別荘に行く際に彼女を作るらしい。
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