幼女とお風呂とろくでなし
自室の風呂の中で待機する八峡義弥。
祝子川夜々が訪れるのを待ち侘びていた。
(これはあくまで合法…夜々さんは幼いが、年齢は俺よりも高いから)
八峡義弥はその様に心の中で言い訳を行う。
祝子川夜々はその姿は幼く見えるが、五百年以上生きている不老者だ。
村の復興の為に人柱として昭和初期まで一人祠の中で過ごしていた所を、抜刀隊に確保されたのだと聞く。
人柱による効果か、彼女の体は老いを知る事が無く、寿命の限界など無かった。
だから現在では彼女がこの世界で最も長生きをしている生物と呼んでも良いだろう。
(もし間違ってそうなっても、合法だから大丈夫…いや、別に幼い子が性的に好きって訳じゃねぇけど)
「やかいさーん?ばっちゃが入っても大丈夫ですかー?」
と祝子川夜々が風呂場の前でノックしながら言う。
八峡義弥は風呂から上がるとタオルを腰に巻いて準備を完了させる。
「お願いしゃっす!」
八峡義弥は緊張していた。
普段の彼ならば女性の裸体を見ても平然とするが。
祝子川夜々と言う親の様な存在との入浴。
禁忌を犯している様で興奮していた。
「では、入りますよー」
そう言って、祝子川夜々が入って来る。
(襦袢姿か、それともバスタオルか、もしかすりゃ、生まれたままの姿ってのも…うひょぉ!)
八峡義弥は期待に胸を膨らませながらその姿を視認した。
其処に立つ彼女の姿は、スクール水着だった。
(…あー、スク水かぁ…まあ…それはそれであり)
「どうしたんですか?ばっちゃの事を見て」
「いやなんも無いすよ」
「そうですか?では、お背中流しますねー」
彼女がそう言って八峡の背中をタオルで拭き出した。
膂力の弱い彼女が懸命に八峡義弥の体を擦っている。
「んしょ……んしょ……」
ボディーソープを垂らして体中が泡だらけになる八峡義弥。
彼女の胸元が八峡の背中に密着すると同時、彼の胴体に祝子川の小さい手が伸びていく。
「お痒い所はありませんかー?」
「首筋ん所がゾワってします」
ゴシゴシと八峡義弥の体を擦る。
その際に彼女の吐息が八峡義弥の首に当るのだ。
「んふふ……贄波さんと同じ事を言うんですねー」
と、祝子川夜々がそう言って八峡がその言葉に疑問を覚えた。
「あ?なんすか、お嬢にもやったんすか?」
「いいえ、違いますよー。贄波先生の方です」
「は!?贄波って、あの贄波阿羅の方すか!?」
八峡義弥は驚愕した。
あの贄波阿羅が、この様な風俗紛いな事をやらせていた事に。
「贄波さんは、元々は寮生だったんですよー?今とは違って、丸坊主で、眼鏡を付けてましたけど」
八峡義弥はあの贄波教師の丸坊主で眼鏡を掛けていた姿を想像する。
「マジすかそれッ?!」
「昔は一部屋に一つ、お風呂なんてありませんので、井戸の近くで、行水の様にしてましたねー」
丸坊主で眼鏡を掛けて半裸で井戸の水を体に打ち付ける贄波教師を思い浮かべる。
「く、ひ、ひゃははははッ!」
八峡義弥は大爆笑した。
「今はぶっきらぼうな人ですが昔は優しい所があったんですよー?」
桶にお湯を張って、それで泡を洗い流す。
八峡義弥は贄波教師の日頃の鬱憤を込める様に、嗤い続けた。
「今日はご飯は食べないのですか?」
祝子川夜々が割烹着姿に着替えると八峡義弥にそう尋ねる。
基本的に祝子川夜々が料理を寮生に提供しているのだ。
「そんな気分じゃ無いんで」
八峡義弥はそう言った。
取り繕う言い方では無いのは、それは八峡義弥も色々と限界があったのだろう。
祝子川夜々は八峡義弥の言葉に頷いて少し寂しそうな表情を浮かべるのだった。
「よよっ、そうですかっ…では、八峡さん、おやすみなさい」
そう言って彼女が部屋から出る前に手を振った。
八峡義弥はそんな彼女の姿を見ながら笑みを浮かべて手を振り返す。
扉が締められると同時に、八峡義弥は左目の眼帯を外す。
「キッツ……」
眼帯を机の上に置くと、八峡義弥はそのままベッドの上へと転がり込む。
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