第21話海水浴と旅館
和み同好会は現在、バスに揺られ海沿いの道を走っていた。
「もうすぐだね!」
「生の海かー……」
「日焼け止め塗らないとダメでスヨ?」
「えー……めんど。ひゃぽ!」
唐突なロゼの頬っぺたサンド。
息の触れ合う近距離はキス寸前だ。
「綺麗な白肌が土留め色になるのは絶対にダメデス」
「はなひぇ」
「そうだよ! 怜の持ち味でしょ!」
「うるひぇー」
ペシペシと足掻くも無意味。
なされるがまま日焼け止めを塗られまくりのであった。
そんな中、怜の滑らかな素肌を堪能する奈南は、ニヤケ顔を抑えきれていなかった。
「美影さんは既に焼けてますね。やんちゃしたんですか?」
「はぁ? 違ぇよ。おばあちゃん家の畑仕事手伝っ……」
「おやおや。よくあるギャップですね」
「う、うっせ!」
照れ隠しに脇腹やらを揉む攻撃、美影の引き締まった腹回りに少々嫉妬する。
自身も引きを取らないプロポーションだが、ライバルには負けられないと更に揉む。
素晴らし尊いバス内の花園に、乗客も紅潮し見届けている。
「紫音、怜……いいのを頼む……全力で撮影する」
「うっす! よろしくっす! ジーザスパイセン!」
「今回の売り上げは期待できそうです」
「ぐへへ……」
同人誌即売会の写真集ネタでもある今回、ウハウハな未来予知に涎が止まらない。
「み、水着姿を目に焼付けますぜ……でゅ、でゅへへ……」
「美影さん、とても顔が気持ち悪いです。えい」
「にゃ!? こにょやろう!」
モチモチスベスベ頬っぺたを掴み合い、どこでもイチャイチャを見せる後輩達だった。
そうこうしてる内に黒浜海水浴場に停車し、外で思いっきり体を伸ばす。
「んー……! 海の香りデス!」
「人もいっぱい……迷子にならないようにね!」
「子供扱いすんな」
「んうぁ」
頬っぺたをイジり小さな反抗。
そもそも女性陣全員が目立つ存在であり、迷子になる方が難しいのだ。
足早に水着へ着替える女性陣は、自ずと視線を奈南へと向けていた。
「ふぅ……何か視線が気になるような……」
「相変わらずどえらいな。それ」
「ひゃ!? くすぐったいよ!」
「ふむふむ……どのコスも似合うな」
触診で採寸できる特技を持つ怜。
最高の逸材はどの部位も素晴らしいと、匠の面立ちであった。
「しゅ、しゅごいっす……一生もんだ……」
「み、美影ちゃん!? は、鼻血出てるよ!?」
「美影さんは行き過ぎた変態ですから、無理ないです」
「紫音ちゃんも鼻血が!?」
奈南の裸の女神介抱に、後輩達は更に昇天。
茹蛸のように全身真っ赤になる。
「何やってんだアイツにゃ!?」
「小ぶりは感度がいいデス~フニフニ~」
「や、やめろ! 尻と胸を揉むな! にゅ!?」
ロゼの発情期の犬に近い息遣いが、興奮の全てを物語る。
女神達の戯れに、着替え中のモブ女子達は涙を流し傍観するのだった。
そして砂浜に姿を見せた水着の女神達は、大勢の人々の視線を奪っていた。
「準備できたな……」
「あ、ジーザス先輩! 先に着替え終わってたんですね!」
「あぁ……素晴らしい……記念に1枚」
集合写真だけで大金をむしり取れるクオリティ-であった。
「にしてもよ……奈南、絶対サイズ無理してんだろ」
「ぐ……」
軽くはみ出るボリューム、ぎちぎちと今にも切れそうな紐。
開放を求めている体は、常に正直だった。
「ほら。撮影用のもんで良かったら着直すか?」
「こ、こんなに面積が……み、見えちゃうよ!」
「そん時は手ブラのサービスだろ」
「えぇー!?」
着替えれば間違いなく痴女、高速で首を横に振り拒む。
「皆……俺について来てくれ」
ジーザスに続き、人のいない岩場を超えた先には、白い砂浜が広がっていた。
「おぉー! まるでプライベートビーチっすね!」
「数時間限定だが貸し切りにして貰えた……」
「流石兄さんです。配慮に感服致します」
「ここなら撮影し放題だ! うひょー!」
「皆で遊ぶデース!」
「あ、待ってよ!」
水掛けや海水浴を楽しむ水着の女神達。
スイカ割り、ビーチバレー、メジャーな遊びを満喫する姿をキッチリ撮影。
時間帯はすっかり昼時、海の家で昼食に。
「どうして海の家で食う焼きそばは美味いんだ……」
「シーフードカレーもいけるよ!」
「タコライス辛!? 紫音! 水くれ!」
「自分で頼んで下さ……あ! 僕のメロンソーダ!」
「仲良しシェアは最高でスネ!」
遊びに遊び尽くし夕暮れ、帰り支度を済ませ余韻に浸る。
「今年も夏満喫したな~」
「インドア派とは思えないはしゃぎっぷりでしタヨ! そんな怜も可愛いデス!」
「なぁー……抱き着くな……」
胸に埋めスリスリ頬擦り、仄かに潮の匂いが香る。
仲睦まじい姿に頬緩ませる奈南、楽しかったのもあり、帰り道がより一層寂しくもあった。
「帰るのが惜しくなっちゃうなぁー……」
「そうっすね……あ! ならアタシにいい案があります!」
「?」
「知り合いがやってる旅館で近場にあるんっす! 今からでも行きましょう!」
「はぁ……何を言い出すと思えば……行動力には感服しますが、今回は流石に無理があります」
「今オッケー貰った」
「え」
スマホ画面を見せつけ、快く了承するスタンプと一言が添えられたメッセージ。
満身のドヤ顔とポーズで煽り、胸囲の格差もより強調される。
「ぐぬぬ……」
「はん……では、アタシについて来て下さい!」
「俺は編集があるから帰らせて貰う……楽しんでくれ」
真男の後姿を見送り、美影を先導に旅館へと向かうのだった。
♢♢♢♢
数十分後、古き良き日本風情の旅館で、和服美人が大玄関でお出迎えしてくれた。
「わたくし美影の姉従妹にあたる女将、
「ちゃんと女将してんな沙綾姉!」
「美影。前もって連絡して貰わないと困ります」
キリッと凛々しく鋭い眼光、Sっ気たっぷりなクールビューティである。
「こんな美し尊い方々が来るとは聞いていません。おもてなしが足りないではありませんか」
「アタシも手伝うからさ! 今回は大目に見てくれ!」
「今回だけですよ……では皆様、お部屋までご案内します」
凛々しい眼光の奥にはハート、分かりやすく紅潮する紗綾であった。
和を重んじる旅館内を眺め、客室の襖が開かれた。
「和室デス! とても広々で良い匂いもしマス! スンスンスンスン!」
「犬ロゼだな。みゃ!? 流れで嗅ぐな!」
「す、素晴らしいです……コホンコホン……では、わたくしはこれで……美影、来なさい」
「はいよ。皆さんは存分にくつろいでくだせぇ!」
お言葉に甘えてそれぞれが羽を伸ばしリラックス。
「見て下サイ! 浴衣デス! 皆で着替えまショウ!」
「もう脱いでやがる」
「私も着替えよ!」
「痴女が2人になったな」
「脱衣イベントを焼き付けないといけませんね」
「変態は1人だな」
一眼レフカメラを構え、脱衣を激写する紫音。
変態カメラマンはいい仕事をする。
「怜さんも一緒に着替えて下さい。ハァ……ハァ……」
「だったら興奮すんなよ」
「無理です」
「……」
浴衣姿を褒め合いイチャイチャするメロン達は、浴衣片手に2人へにじり寄る。
「着替えましょウヨ~」
「絶対に似合うから、ね? ね?」
「お、おい。詰め寄るな……脱がそうとするな!? ひゃ!?」
「えへへ~……いつ見ても綺麗な体デス……にゅへへ~……」
あっという間に下着姿にさられるのであった。
もはや変態の巣窟も同然だった。
全員が浴衣に着替え終えた頃合い、和装姿の美影が現れる。
「皆さんお待たせ致しました! お食事のセッティングをさせて頂きやす!」
「小綺麗になりましたか。清楚でいいと思います」
「おいてめぇ紫音。アタシが普段だらしねぇって言いてぇのか?」
「いつも肩を露出した服装なので」
「あぁ?」
お互いに似合ってるの一言が言えない。
2人のじれじれは、もはや鉄板だった。
「仲直りのハグはしないのでスカ?」
「それは……」
「流石に……」
「むぅ……代わりにワタシがハグキスしマス!」
「「な!?」」
感情のまま2人を抱き倒し、頬キスの連撃。
「お食事をお持ち致しま……ぶは! な、なんて破壊力のある景色……ぐっぅ……」
興奮状態を抑える沙綾は配膳後、懐石料理の数々を仲良く頂く幸せそうな姿に、涙を流し喜ぶのだった。
「けぷぅ……食った食った~……もう食えねぇわ」
「日本旅館……最高デス……」
「食べてすぐ横になると牛になるよ?」
ダラダラと起きようとしないロゼと怜、これはこれで可愛いとにっこり。
「天然温泉も最高っすから是非とも堪能して下せぇ!」
「温泉! ねぇねぇ皆で行こうよ!」
「少し休ませろよ」
「今は動きたくないデス……ぷへ」
「慌てずとも逃げませんから、少し待ちましょう」
「えー……じゃあ私1人で行って来るよ! ふんふふーん~♪」
奈南は一人、颯爽と浴場へ向かい、本日何度目かの脱衣。
湯気立ち込める広々とした浴場内へ。
「うーん~! 温泉の良い香り!」
日中の疲れを発散させる心地良い温泉。
紅潮する美肌に、まとめ上げた長髪が妖艶に映る。
「おぅおぅ。乳が浮いてんな奈南」
「あ、怜!」
「ワタシもいるデース!」
「僕もいます」
一瞬にして美女風呂完成。
肌が触れ合う近距離に嬉しいながらも照れる。
「こう集まってると猿風呂みてぇだな」
「知ってマス! 冬の風物詩ですヨネ!」
「寄り添う姿は可愛らしいの一言です」
「じゃあもっとくっ付いちゃえ!」
湯船内で生々しい接触が繰り広げられる中、サラシにポニテ姿の美影が登場。
「お背中……お流し致します! ハァ……ハァ……じゅるり……」
「目がガチヤバじゃねぇか」
全員体を洗った後だったため、美影の願望が叶う事はなかった。
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