第34話ドジっ子と卑猥

 9月上旬、美影宅に女性が訪問していた。


「そんじゃ実葉月みはづき、旅行の3日間サタッペを頼んだぜ」

「全身全霊で子守させて頂きます!」

「おぅ、土産楽しみにしとけ」

「はいっす! お気を付けて!」


 おぼろ実葉月20歳。

 美影一派を統率する若きレディースのトップである。

 赤髪ポニテ、愛嬌ある猫目、妙に体付きが艶かしい美少女である。


 尊敬する美影を見送り、ふんすと気合を入れ直す。


「3日間よろしくっす! サタッペ!」

「ミャー」

「お、擦り寄ってくるっすね! このこの~」


 上機嫌なまま抱き、大きな胸に埋もれるサタッペも、心なしか居心地良さげ。


《妾もフォローするので心配いりませんわ》

「オナシャス! 蕾さん!」

「ミャー」


 首輪の小型カメラから様子を窺う蕾。

 美影に頼まれ、快く引き受けていた。

 普通ならフォロー不要だが、実葉月が相手だと話が変わるのだ。


「さてと……何すればいいんすかね?」

《サタッペ様が遊んでほしそうですよ?》

「お! なら早速遊ぶっす!」

「ミャー」


 おもちゃスペースでガサゴソとおもちゃ選び。

 サタッペも向かい側で眺めていた。


「どれで遊びたいっすか?」

「ンニャー!」

「おっと! 猫パンチで選ぶっすね! 了解っす!」


 次々に選ばれるおもちゃ、猫パンチでことごとく除けられる。

 これはこれで遊びの一種だが、真面目な実葉月は選び続ける。


「では、これでどうっすか! 羽の猫じゃらしっす!」

「ニャー!」

「キャ!」


 急に飛びつかれ、後ろに倒れる実葉月。


「いたた……」

《あら、立派な谷間ですわね……ふむふむ》


 服が大きく捲れ、立派な胸が御開帳。

 そんな事は気にも留めず、キョロキョロとサタッペを探していた。


「だ、大丈夫っすかサタッペ? どこっすか?」

「ニャ♪ ニャ♪」

「ほっ……後ろにいたっすね」


 ドジっ子な上、毎度卑猥な姿になるのが実葉月なのだ。

 本人は卑猥な姿を気にせず、その都度指摘するのが蕾の役割なのであった。


《実葉月様、服を直して下さい。お胸がエロイですわ》

「は! ご指摘感謝するっす! んしょんしょ!」


 何をしても仄かに卑猥さが滲む実葉月。

 サタッペが再び擦り寄り甘える。

 太股に乗せ、撫でたり匂いをスンスン嗅いだり楽しむのだった。


 オヤツ時間になり、チューブタイプのオヤツを食べさせる。


「美味しいっすか?」

「ミャー」

《あげ過ぎ注意ですからね》

「了解っす! ワタシも自分のおやつを食べるっす!」


 キャリーバッグをから手作りクッキーとグミを嬉しそうに出す。

 冷蔵庫で一礼し、牛乳を拝借。

 コップにも一礼し、飲む分だけ注ぐ最中。

 足元に擦り寄るサタッペに気を取られ、手元が疎かになる。


「あー……零しちゃったっす! 拭かないと!」

「ミャー!」

「キャ! さ、サタッペ! ぺろぺろ舐めないで欲しいっす!」

《ほほぉん……牛乳で張り付いた雅な体……大いにありですね》

「そ、そこは大事なところっす! あ!」


 甘い吐息と卑猥な姿を、静かに見守る蕾。

 冷静に分析する姿は変態の鏡だ。


 サタッペに翻弄されながらも、どうにか止めることに成功する。


「着替えないとっすね……張り付いて気持ち悪いっす」

《誰もいませんですし、その場で脱いでは?》

「そうっすね! んしょんしょ……」


 下着姿となった実葉月の、女体品評会を開催する蕾は、ただの変態である。


 揺れる下着紐に、サタッペがうずうず目で追い、我慢できずにダイブする。


「ニャー!」

「きゃ!? ぱ、パンツはおもちゃじゃないっす!」

《おほぉお~! 縞パン強奪~いいですわ~》


 縞パンを強奪されるが、すぐお風呂に入るから気にしない実葉月。

 これが素で、美影一派も大変に苦労している。


「さぁサタッペ! 一緒にお風呂に入るっすよ!」

「ンニャー!」

「あ! 逃げないで下さいっす!」


 家中を走り回りドタバタ。

 サタッペを捕まえた実葉月は、何故か素っ裸だった。

 もはや裸族である。


《首輪は外して下さいね》

「了解っす! よーしよし、怖くないっすからね」

「ミャー!」

「あ! 暴れないで下さいっす! んぁ! ふぁ!」

《吐息がいちいちエロイですわね》


 浴室の慌しい声と音を聞き、しばしのティータイムで暇潰す蕾であった。


 サタッペを抱え、湯上り姿の実葉月が映る。


「ふぅー! スッキリし……まだ体拭いてないっすよ! サタッペ!」

《……風呂上がりの生乳ですか~素晴らしいですね♪》

「待って欲しいっすー!」


 揺れる生乳は、無防備過ぎるが、本人は気にしない。

 どうにかサタッペを拭き、綺麗さっぱりに仕上がった。


「はい! もういいっすよー!」

「ミャー」

「ご機嫌になったっすね! ニャーゴロゴロ~」

《あの実葉月様……貴方は着替えないんですか?》

「寝袋とオヤツで中身がいっぱいで、持ってきてないっす! 洗濯が終わるまで裸っす!」


 もしもの時を考え、使命に駆られる蕾が動き出す。


《……実葉月様。今そちらに向かいますので、大人しくして下さい》

「来てくれるっすか! 了解っす! お待ちしてるっす!」


 着替えを始めとした、あらゆる物を詰め込み、美影宅へと着く。

 

「いらっしゃいっす! 早かったすね!」

「……どうしてエプロン姿に」

「自炊っス! こう見えても料理に自信あるっすから、エプロンは常備してるっす!」

「裸エプロンですが、まぁいいです。お邪魔しますわ」


 裸エプロンを自然に着こなすのだから、恐ろしい子である。


「こちら着替えです」

「感謝するっす! んしょんしょ……」

「……恥じらいを知らないんでしょうか」

「え? 何か言ったっすか?」

「ミャー!」


 いきなり飛びつき出したサタッペ。

 目標は蕾の揺れたネックレス。

 大きな胸が邪魔をし、軽々しく弾き飛ばされる。


「あらあら。妾は実葉月様と違い、強者ですよサタッペ様」

「ンニャー!」


 屈んだことで自ら距離を縮め、間髪入れずに二度目の攻撃。

 ネックレスをもぎ取られ、同時に服の首元を引き釣り落とす。

 大きな胸がモロ出しになり、蕾は陥落した。


「わ、妾がこんなにもあっさり……」

「さ、立ち話もなんなんでどうぞっす!」

「す、スルー……」


 それから実葉月のドジっ子感染。

 あられもない姿が絶えない3日間が過ぎた。


♢♢♢♢


「ただいまー……お、おい実葉月。な、何でパンツ姿で出迎えてんだ」

「話せば長くなるんっすよ!」

「ミャー」

「お、おかえりなさいませ……美影しゃま……くへ……」


 疲労困憊な半裸の蕾に、原因は実葉月なのは分かっていた。


「はぁ……とりあえず中に入るぞ。サタッペも大人しくするんだにゃ」

「ミャー」


 嘘のように大人しくなる魔性の子猫。

 胸に抱かれて気持ち良さげだ。


「ほら、土産だ」

「あざっす! 全力で食べさせて貰うっす!」

「ありがとうございますわ……妾は疲れましたので、これで……」

「お、おぅ。本当に助かった」

「感謝するっす! 玄関までお見送りするっす!」

「い、いえ! ここで結構で……」


 時すでに遅し、自分の足に引っ掛かり転倒。

 青ざめた蕾が巻き添えに。

 覆い被さった実葉月は、蕾の胸を生で鷲掴み。

 お互い服が乱れ、下着も半脱げ状態。


 サタッペは実葉月の縞パン紐にロックオン。

 美影の胸をジャンプ台にダイブ。

 紐を可憐に咥え取り、下半身が御開帳する。


「いたた……わ、悪い子だにゃ! サタッペ!」

「ミャー」


 可愛らしく怒る美影も黒パンツが見え、蕾視点だとモロ見えだった。


「ナイス……パンツ……ふへ……」


 ノックアウトした蕾は、幸せな夢を見るのだった。

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