48 巨乳令嬢


「「キャー」」


 廊下の遠くで令嬢の悲鳴が……むこうは、中等部だ。


「ルナちゃん、中等部で悲鳴が聞こえたけど、何かあった?」



「え、聞こえませんでした……でも、たぶん、第二王子です」


 国王専属メイド長の娘であるルナちゃんは、心当たりがあるようだ。


「第二王子が、紫の瞳を持つ令嬢を探し、朝から、学園内をウロウロしていると聞いています」


 あちゃ〜、第二王子の考えそうなことだ。



 元女王のコノハ様の顔が怒りでゆがんでいる。廊下の遠くを見て、何かが近づいてくることに気が付いたようだ。



「お~い、聖女を見つけたぞ」


 廊下の遠くから、第二王子の、のん気な声が、こちらに近づいてくる。


 元女王と第二王子から、私とルナちゃんは挟まれ、逃げることが出来ない。



「どうだ、この令嬢を見てくれ! 大物を釣り上げたぞ」


 第二王子が、連れてきた令嬢を私に紹介した。


 隣国のメガネをかけ、紫色の瞳、中等部とは思えない大物……巨乳だ。



「ルナちゃん、あの令嬢は?」


「隣国からの留学生です」


 彼女はあきれている。中等部といえど立派な大人の令嬢であり、第二王子のアホさ加減は十分理解できているようだ。



「僕は、この巨乳聖女を婚約者とする!」


 第二王子が宣言した。これで何人目の婚約者なのだろうか。

 聖女ハーレムを作るため、王国中の聖女を自分のものにすると宣言した彼だ。


「兄には、負けない!」


 第二王子の顔が輝いている。



「フランソワーズ様、あの令嬢は、まがい物です」


 え? ルナちゃんの言っている意味が、私には分からない。



「何を騒いでいる、マズルカ!」


 元女王の声は低く、怒っている。これほど騒げば当然だ。いや、あきれているのか?


「ばあ様、この令嬢を僕の聖女ハーレムに加えます」


「コノハ様と呼べと言ったはずだ!」


 元女王は、ばあ様と言われることが、大嫌いなようだ、覚えておこう。


 ルナちゃんを見ると、彼女も気が付いたようで、軽くうなずいてきた。

 国王の養子と宣言された彼女は、元女王の孫という事になる……



「令嬢の外見にだまされるな、人間の中身を見ろと言っているだろうが!」


「元女王コノハが命ずる。万物に溜まる魔力よ、その力を開放せよ。一万ボルト!」


 元女王が第二王子を一喝し……え、これは詠唱!


 夜会で経験した元女王の怒りのイカズチが、廊下に落ちた。範囲と規模は小さいが、けっこうな威力だ!



 第二王子の制服が、少し焦げている。


 巨乳聖女も、メガネがズレて……あれ? 大きな胸パットが、床に落ちている。



「ケッ、化けの皮がはがれたか、まがいものが」


 ルナちゃんは、意外と口が悪い……


「隣国では、化粧用品の開発が進んでおり、見た目が美しい令嬢が、まがいものではと、気をつけるのは、今や常識です」


 床にへたり込む第二王子と巨乳聖女を、見下ろすルナちゃん。

 中等部なのに、私より王者の風格をまとっている。



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