第15話 選手

《side三人称》


 隣の星のある王族は、アラタで開発された新技術を耳にした。


「それは本当ですの?!」

「はい。王女様」

「それはあまりにも凄いことではなくて?」

「はい! アラタでは、専属パイロットを選抜する試験をするそうです」

「ふふ、楽しそうに偵察に行くとしましょうか?」

「よろしいのですか?」

「お祭りみたいなものでしょ? 行くわよ」


 その日、一人の王女が惑星アラタに向かった。



 カイ王子の技術がアラタに波紋を広げたことで、女王は状況を打開するための新たな決断を下した。


 パイロットたちの不満を解消し、同時に未来のパイロットたちを育成するために、新たなパイロット選抜試験を実施することが決定された。


 その発表がされた日のこと。アラタ中がこの試験の話題で持ちきりになった。


「新たなパイロット選抜試験が行われるって聞いたか?」

「ええ、女王様が発表されたわ。これで私たちにもカイ様の技術を適用する機会が訪れるのかしら?」

「きっとそうよ! これは私たちにとっても、もう一度自分の実力を示す絶好のチャンスよ!」


 アラタの各地で、パイロットを志す若者たちがその知らせに胸を高鳴らせた。

 

 選抜試験に参加することで、自分たちも新技術を手にし、戦場で輝かしい成果を上げることができるかもしれないという期待が高まっていた。


 一方、王宮の会議室では、カイ、リン、ミカ、そしてライラ、エリス、フェイの三人が集まっていた。


 女王の元で、この試験の詳細を決めるための会議が行われていた。


「母上、パイロット選抜試験を開催することにしたのは分かるけど、本当に大丈夫かな?」


 カイは少し心配そうな顔をして、母親に尋ねた。


 女王は静かに頷いた。


「ええ、カイ。この試験を通じて、アラタの未来を担う新たなパイロットを選抜し、あなたの技術を適用することで、全体の戦力を底上げする必要があるわ」


 リンは研究者として、熱意を込めて分析する。


「カイの技術を適用するには、やはりパイロットの適性が重要なんです。適性がある者にのみ、この技術は効果を発揮する。試験を通じて、それを見極めるのは理にかなっていますよ」


 ミカも手を口元に当てながら、小さく頷いた。


「はい…リンさんの言う通りです。カイ様の技術は素晴らしいものですが、誰でも簡単に使えるものではないですから…試験を通じて適切な人を選ぶのが一番かと」

「やっと全員が同じ土俵に立てるってわけか! 燃えるぜ! これで実力を証明できるし、もっと面白いことになりそうだな」


 ライラの言葉にエリスも頷く。


「選抜試験を通じて、私たちの実力もさらに試されるわね。カイがどれだけの技術を生み出したか、その真価を見せる機会よ」

「私…ちょっと緊張しますけど…新しいパイロットたちと一緒に訓練できるのは、楽しみです…」


 カイ王子は仲間たちの意見を聞いて、彼女たちの意見を尊重することにした。自信を取り戻していた。「分かったよ。試験を通じて、適性のあるパイロットを見極めよう。彼女たちが僕の技術を最大限に活かせるように、全力を尽くすよ」


 選抜試験は、アラタ全土からパイロット志願者を集め、厳しい訓練と実戦を通じて行われることになった。


 試験内容には、カイ王子の技術を適用した新型魔導ロボットの操縦テストも含まれており、これに合格した者だけが、特別なパイロットとして選ばれることになる。


「選抜試験の合格者には、最新の技術が施された魔導ロボットが与えられる。そして、それを操縦するための特別訓練も用意されているわ」


 女王はそう発表し、志願者たちに試験への意欲をかき立てた。



 試験が始まる日、アラタの空は晴れ渡り、希望に満ちた空気が広がっていた。

 志願者たちは次々と集まり、その瞳には決意と期待が宿っていた。


「絶対に合格して、あの技術を手に入れてみせる!」

「これで私も最強のパイロットになれるはず!」

「王子様のお嫁さんになれるって本当?」

「これが王子の嫁取り合戦だってね!」


 一部で変な噂が流れながらも、既存のパイロットたちも試験の進行を見守りながら、自分たちが果たすべき役割を再確認していた。


 彼女たちは、今こそ自分たちの実力を証明し、カイ王子の技術が持つ本当の価値を示す時だと感じていた。


 こうして、アラタに新たな時代を切り開くためのパイロット選抜試験が始まった。


 この試験は、アラタの未来を担う新たな英雄たちを選び出し、カイの技術がどれだけの力を持つかを示す重要な機会となる。


 カイ王子自身もまた、この試験を通じて、自分の技術が持つ影響力と責任の大きさを実感することになるだろう。


 そこに異物が混じっていようとも気づかないほどのアラタ始まって以来の、女性ばかりの大運動会が始まろうとしていた。

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