第11話 母の願い

 試運転を終えた僕は、母上との食事の席で、この星を守るためにどれだけの責任を背負っているかを知った。


 母上は穏やかな口調で話してくれたが、その内容は大変だと思えるものだった。

 

 星を支配するということが、ただの権力ではなく、数え切れないほどの命を守ることだと教えられた。


 僕は何ができるだろうか?


「カイ、あなたは王子だから、星のことよりもこの国に住む女性のことを考えてほしいの」

「女性のこと?」

「ええ、男性は少ないことは知っているわよね?」

「うん」

「子供を作るために、私たちには医療の発展が急務だった。今では安全に授かって子供を産める環境も出来ているわ。だけど、異性に対しての興味や、本能と言えばいいのかしら? 女性は男性を求める傾向が強くなっているの」


 前世の記憶では、男性が女性を求める傾向が強かったと思う。

 それが逆になっているってことなんだね。


「だから、あなたが男性として、この星の未来について考えてくれる時、あなたのしたいことをしてほしいと私も思っているわ。だけど、大切な女性をたくさん作ってほしいとも思っているのよ」

「大切な女性」


 僕は、四人の顔が浮かんできた。

 先生であり、幼馴染の四人はタイプの違う女性たちで、僕にとって最も親しみやすい女性たちだ。


「あなたは特別な存在なの」


 母上の言葉が、僕の中で女性に対する認識を考えさせる。


 この星をもっと強く、もっと安全な場所にするために、僕は自分の持つ知識と技術を最大限に活かしたい。


 そして、大切な人たちを守りたい。



 その夜、僕は部屋に戻り、一人で考え込んでいた。


 試運転で感じた魔導ロボットの課題――特に魔力の消費が激しすぎる点が、どうしても頭から離れなかった。


 パイロットには膨大な魔力量が求められ、それがなければロボットを動かすことすらできない。


 それに魔力に依存した武器を使うこともナンセンスだ。

 いくら、同じ魔導ロボットを相手にするからって、パイロットにかかる負担をさらに増やしている。


「このままじゃダメだ。もっと効率的に魔力を使えるようにしなくちゃ…」


 そう呟きながら、僕は設計図を広げた。


 早朝から僕は自分の部屋にこもり、設計図とにらめっこしていた。


 どうすれば魔力の消費を抑えつつ、強力な武器を作り出せるのか、その答えを求めて試行錯誤を繰り返していた。


 そこへリンさんがやってきた。


「カイ、失礼するわね」

「リン、いらっしゃい」

「そろそろ勉強の時間よ。来ないから迎えにきたの」

「うわっ! もうそんな時間! ごめんなさい! 魔力の消費を抑えるために、魔導回路をもっと効率的にする方法を考えている間に時間が過ぎていたみたいだ」

「魔力の消費を抑える? 魔力回路の効率化?」

「うん。それと、誰でも使えるような武器を考えようと思って」


 リンは僕の言葉に少し驚いた様子を見せたが、すぐに微笑んで頷いた。


「面白いそうね! 素晴らしいアイデアだわ。魔力に依存しない武器があれば、もっと多くのパイロットが戦場で活躍できるようになる。ううん、なんなら日常的な運用にも応用できるかもしれない。私も協力するわ」


 僕よりも知識が豊富で、魔導に精通しているリンの協力を得られることになり、僕の心は一気に軽くなった。


「だけど、今日はみんなで勉強よ」

「は〜い」


 それからは二人で頭を突き合わせ、具体的な改善策を検討していった。


 まず取り組んだのは、魔導ロボットの魔力効率を高めることだった。


 魔導回路の配置を見直し、魔力の流れを最適化することで、少ない魔力でより強力なエネルギーを生み出すことが可能になるかもしれないと考えた。


「ここを少し広げて、魔力の流れをスムーズにしてみたらどうかな?」


 僕は設計図の一部を指しながら提案した。


 リンはその部分をじっくりと見つめた後、頷いた。


「そうね、それなら魔力の消費も抑えられるし、エネルギー効率も上がるはず。さらに、ここに新しい魔導回路を追加すれば、魔力の循環も改善されるわ」


 僕たちは試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ改良案をまとめていった。やがて、設計図には新たな魔導回路の構造が描かれ、魔力の消費を大幅に抑えることができる見込みが立った。


「ライラ、どう?」

「うん。前よりも魔力は抑えられたと思うぞ」

「ありがとう」


 調整にライラに乗ってもらったが、正直に効率が上がったのは数%で、飛躍的な躍進とは言えない。それでも何百年も研究されて、発展していないものが1%でも上がるのは凄いことだリンは褒めてくれた。


「すぐに成功するものじゃないわ。なんでも最初の一歩を踏み出せたことが大事なんよ」

「うん! そうだね!」


 リンに励ましてもらいながら、パイロットの三人にも協力してもらう。


 不意に、母上の言葉が思い出される。


 この国に住む女性たちのことを考えてほしいという言葉、僕はプレイボーイではないし、たくさんの女性を愛せるかと聞かれたら自信もない。


 だけど、短な人たちのことは大切にしたい。


「ねぇ、リンは男に興味がある?」


 僕の問いかけに、ドンガラガッシャンと凄い音を立てながらリンが吹き飛んでいった。


「え〜!!!」

「きゅっ、急にどうしたの!? 今っ……そんな話してなかったよね?」


 気の毒になるほどに、動揺するリンはとても興味があることだけは伝わってきた。

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