第25話 パイロット戦

 隣国ヴァンガードとの戦争が激しさを増し、ついにオリヴィア・セリーヌ・ヴァンガード自らが前線に姿を現した。


 彼女はヴァンガード王国でもトップクラスのエースパイロットであり、専用の魔導ロボットを駆使して戦場に立っていた。


 その冷徹な眼差しと堂々たる態度が、敵味方を問わずに圧倒していた。


 また、その専用機である真っ白な機体も、宇宙空間の中でかなりの目立つ存在だった。


「カイ王子、私は貴方を手に入れるために、ここまで来ました。それでも、まだ私を拒むのですか?」


 オリヴィアは、全艦に届くように通信越しで僕に問いかけてくる。


 彼女の声は穏やかだが、その背後には鋭い決意が込められていた。


 僕はすぐに答えることができなかった。彼女の求めているのは、僕だけではない。


 アラタ王国の未来も彼女の野望の一部だった。


「オリヴィア…君が何を考えているのかは分からないけど、僕は君には屈しない! この国を守るために戦う!」


 僕が決意を告げると、オリヴィアは少し笑みを浮かべた。


「ならば、その決意を見せてもらいましょう。私を止められるのならね」


 オリヴィアの魔導ロボットは戦場の前線に立ち、こちらに向かって突撃を始めた。

 

 その動きは鋭く、今までの敵とは比べ物にならないほどのスピードと力強さを感じさせた。


「ライラ、エリス、フェイ、気をつけて! オリヴィアは強い!」


 僕が警告すると、三人の専属パイロットたちはそれぞれに応答した。


「「「OK!!!」」」


 ・ライラ vs オリヴィア


 ライラが前に出て、オリヴィアの機体に向かって一直線に突進した。

 彼女の魔導ロボットはスピードを最大限に活かし、敵の懐に飛び込むのが得意だ。


「カイは私が守るんだ! 任せてくれよ! この速さならオリヴィアだって…!」


 ライラの魔導ロボットは高速でオリヴィアに接近し、一撃を加えようとする。

 しかし、オリヴィアはその動きを見事に読み切り、軽やかに回避した。


「甘いわね…その程度のスピードでは、私には追いつけないわ。あなたのことは選手権で存分に観察させていただきましたの!」


 オリヴィアはライラの背後に瞬時に回り込み、強力な一撃を放った。

 ライラは防御に入るが、その攻撃の衝撃は大きく、機体が一瞬制御を失った。

 

 反射速度で魔導ロボットは勝っているのに、相手の読みが優っている。


「くっ…!」

「あなたの速さ、悪くないけれど、それだけじゃ私には勝てないのよ」


 オリヴィアはさらに追撃を仕掛けようとするが、ライラは辛うじて体勢を立て直し、撤退した。


 ・エリス vs オリヴィア


 ライラを逃すためにエリスが強引に割り込んだ。


 彼女は冷静な判断力を持ち、相手の隙を見逃さないタイプのパイロットだ。

 

 お互いの読み合いが開始される。


「ライラの速さはすごいけど、オリヴィアはそれを上回る反応速度を持っているわけじゃない! ここは、相手の行動を冷静に見極めて…」


 エリスは距離を保ちながら、慎重にオリヴィアの動きを観察した。彼女の魔導ロボットは中距離攻撃に特化しており、魔力槍と鞭を合わせたような武器で相手を近づけさせない。


「さあ、どう出るかしら…」


 オリヴィアは挑発するようにエリスを見つめた。その隙をついて、エリスが武器を振るう。


「狙いは外さない!」


 エリスの魔力鞭が、正確にオリヴィアの機体を捉えたかに見えたが、オリヴィアはギリギリのところで回避し、鞭が引かれるタイミングに合わせてカウンターを仕掛けた。


「あなたの冷静さ、見事だけど…まだまだね。経験不足!」


 オリヴィアの一撃がエリスの機体に命中して、エリスはバランスを崩してしまう。


 しかし、エリスはすぐに回避行動に移り、大ダメージを回避した。


「くっ…オリヴィア、さすがだわ…!」


 ・フェイ vs オリヴィア


 エリスのピンチを救ったのは、遠距離射撃の名手であるフェイだった。


 彼女は今までずっと控えめで、他の二人に比べると戦闘に自信がないように見えた。しかし、フェイには卓越した射撃技術がある。


「私…カイ様のために頑張らなきゃ…!」


 フェイはオリヴィアに向かって冷静に狙いを定め、遠距離から魔導ライフルを放った。その弾は正確にオリヴィアの機体に迫り、彼女は一瞬反応が遅れる。


「…何っ!? どこから?!」


 フェイの攻撃はオリヴィアの機体を捉え、その衝撃でオリヴィアの魔導ロボットがバランスを崩した。フェイはその一瞬の隙を見逃さず、さらに追撃を仕掛ける。


「このまま終わらせる!」


 フェイは次々と正確な射撃を放ち、オリヴィアの機体にダメージを与えていく。


 オリヴィアは明らかに焦り始め、機体の制御が不安定になっていた。


「この私が…ここで負けるわけにはいかない!」


 オリヴィアは必死に反撃しようとするが、フェイの冷静な射撃に阻まれ、ついに完全にバランスを失った。


 戦線に復帰した、ライラとエリスも加わり、オリヴュアが退却する。


「やった…! 私が勝ったんだ…!」


 フェイは信じられないような表情で自分の勝利を実感した。


 オリヴィアは敗北を悟り、機体を後退させながら悔しそうに叫んだ。


「これで終わりではないわ…! 戦艦で決着をつけましょう」


 オリヴィアはその言葉を残し、撤退していった。

 フェイはホッとした表情で機体を下ろし、カイに通信を送った。


「カイ様…私、勝ちました…!」

「フェイ、よくやった! 君のおかげでオリヴィアを退けることができたよ」


 僕は心からフェイを称賛し、彼女の頑張りを喜んだ。オリヴィアとの戦いはまだ終わっていないが、今日はフェイの勝利で終わることができた。

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