第36話 脅威
アラタ王国はすでに警戒態勢に入っていた。セリーヌ・ブラックホール率いる宇宙海賊団が確実にアラタへと接近している。
彼女たちの目的は明確であり、僕たちの開発した最新鋭の宇宙船とその技術を奪うことだった。
「カイ様、敵艦の接近が確認されました」
リンの報告が僕の耳に届く。僕たちの最新鋭のセンサーシステムが、遥か彼方に迫りくる艦隊を捉えていた。
画面には、海賊団の艦が数十隻も映し出されていた。
「かなりの数だな…これは厄介だ」
僕は舌打ちしながら、画面を見つめた。彼らの戦力は予想以上だった。
セリーヌは並の海賊ではなく、銀河中のならず者や裏社会の連中を集めた強大な艦隊を持っているらしい。
「カイ様、どうしますか?」
フェイが少し緊張した表情で僕に尋ねる。
彼女は普段冷静だが、これほどの大規模な戦闘は初めてかもしれない。僕も内心の緊張を隠せなかったが、ここで動揺していては、皆を導くことはできない。
「大丈夫だ、フェイ。僕たちには最新技術を搭載したこの船がある。それに、僕たちの技術は彼女たちには絶対に手に入れさせない」
僕は力強くフェイに語りかける。彼女は僕の言葉に少し安心したように微笑み、頷いた。
「カイ、敵が接近してきたようね」
母上、アラタ女王が静かに現れた。
彼女の表情は冷静そのもので、恐怖や焦りの色は微塵もない。
「母上、ここまでの脅威は想定していませんでした。敵の戦力があまりにも強大です」
僕は母上に正直な気持ちを伝えたが、彼女は動じなかった。
「カイ、あなたの技術があれば大丈夫よ。私たちはこれまで幾度となく戦争を乗り越えてきた。そして今、この宇宙船とあなたがいる。どんな敵でも必ず勝てるわ」
彼女の強い言葉に僕は胸の中にあった不安が少し和らいだ。だが、それでも今回の相手はただの海賊ではない。
セリーヌ・ブラックホールが指揮するこの艦隊は、僕たちが今までに経験したことのないほどの脅威だった。
「カイ様、私たちも準備はできています」
ライラがすでにパイロットスーツを着込み、やる気に満ちた表情で僕に告げる。彼女の背後ではエリスが腕を組み、冷静に状況を見つめていた。
「ここで負けたら、今までの努力がすべて無駄になるわ。必ず勝ちましょう」
エリスの言葉には強い決意が込められていた。僕は仲間たちの顔を見渡し、静かに頷いた。
「よし、全員、準備を整えろ。僕たちの星を守るために、そして僕たちの技術を守るために戦うんだ」
僕たちはすぐに宇宙船に乗り込み、戦闘準備を始めた。各々の持ち場に就き、最新鋭のシステムを起動させる。エンジンの起動音が静かに響き渡り、船全体が戦闘態勢に入った。
「セリーヌ・ブラックホール…彼女は本当に危険な相手だわ」
オリヴィアが通信越しに僕に言葉をかけてきた。彼女はすでに別の戦闘艦に乗り込み、僕たちの援護に回る準備をしている。
「オリヴィア、何か情報があるのか?」
「彼女の戦術は非常に狡猾で、直接的な戦闘だけではなく、心理戦にも長けているわ。それに、彼女の艦は強力な魔導エンジンを搭載している。正面からの攻撃だけでは簡単に撃ち負かせないわ」
オリヴィアの冷静な分析に、僕はさらに緊張感を高めた。セリーヌの艦は、僕たちがこれまでに相手にしてきた敵とは次元が違う。
「そうか…ありがとう、オリヴィア。君の情報が役に立つよ」
僕は通信を切り、作戦室に目を移した。敵の動きを監視するスクリーンには、セリーヌの艦隊がじわじわとアラタに近づいているのが映し出されている。
僕たちは最悪の事態に備えなければならなかった。
戦闘準備が整い、僕たちはいよいよ戦いの時を迎えた。宇宙船がアラタの大気圏を離れ、深い宇宙に出ると、目の前には無数の敵艦が広がっていた。
「敵艦、数十隻確認。どうやら、セリーヌ・ブラックホールがいるのはあの大型艦のようです」
ライラが冷静に報告する。スクリーンに映る巨大な艦船が、彼女の旗艦であることが明らかになった。
「奴がセリーヌか…」
僕はその艦を見据え、決意を固めた。アラタを守るためには、彼女の野望を止めなければならない。
「全員、戦闘準備完了。行こう、僕たちの技術を守るために」
僕たちは一斉に攻撃を開始した。宇宙船が敵艦に向けて加速し、光の速度で突き進んでいく。次々と放たれるビームやミサイルが宇宙を交差し、壮絶な戦闘が幕を開けた
この戦いが、僕たちの未来を左右することになる。果たして、僕たちはセリーヌの野望を打ち砕くことができるのだろうか。それとも…?
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