第35話 女海賊

 僕はついに、自らが設計し開発してきた最新鋭の宇宙船が完成したことに感慨深い気持ちでいっぱいだった。


 この宇宙船は、これまでの技術の粋を集め、魔導と科学技術の融合によって生み出された夢の結晶だ。


「やっと、できたんだ…!」


 僕は宇宙船の巨大な船体を見上げ、達成感に浸っていた。魔導ロボットの開発がひと段落した後、僕は宇宙船の開発に没頭してきた。


 仲間たちの協力もあって、この宇宙船は過去に例のない画期的なものとなった。


「すごいわ、カイ様。こんな宇宙船、見たことがないわ」


 リンが僕の隣で微笑んだ。彼女は僕の右腕ともいえる存在で、ずっと一緒に研究を進めてきた。


 僕たちの宇宙船は、これまでの技術を超越し、宇宙空間での長距離航行や戦闘にも対応できる強力な兵器を備えている。


「これで私たちの星も、さらに安全になるね」


 フェイが小さく頷いて、船の外観を見つめている。その横では、ライラやエリスも驚きと興奮を隠せない様子だ。


「まさか、ここまでのものができるとはな…カイ、君は本当にすごいよ」


 ライラが感心したように笑う。彼女たちパイロットも、この宇宙船の実戦配備が待ち遠しかったに違いない。


 船の内部には、最新鋭の魔導エンジンや高性能シールド、敵の攻撃を回避するための高度な機動システムが搭載されている。


 しかも、魔力の消費を抑える技術を取り入れているため、従来の宇宙船とは一線を画す存在だ。


 その技術が評判を呼び、アラタ王国の技術力が他の星間国家でも注目を浴びることになったのも無理はない。


「しかし、これだけのものを作ってしまったら…他の星も黙っていないかもしれないな」


 僕はふと、不安を感じた。新技術が注目されれば、当然、それを手に入れようとする者たちも現れる。特に、銀河に広がる様々な勢力が僕たちの技術を狙っているという噂もある。


 その予感が的中するのに、そう時間はかからなかった。-


 ある日、アラタ王国に一つの情報がもたらされた。


 それは、銀河を荒らし回っている女海賊が、僕たちの最新技術を狙っているというものだった。


「カイ様、海賊団があなたの技術を奪おうとしているという報告が入りました」


 リンが緊迫した表情で伝えてくる。僕はその言葉に、予感が現実になったことを悟った。


「海賊か…まさか、俺たちが作ったこの宇宙船が狙われるとは思わなかった」


 僕はすぐに女王である母上の元に向かい、対策を話し合うことになった。


「カイ、心配はいらないわ。私たちにはあなたが作ったこの最新の技術がある。アラタの防衛力は今やかつてないほど強力になっているのだから」


 母上は優しく微笑みながら僕を励ましたが、僕はそう簡単に安心するわけにはいかなかった。


「でも、この海賊団がどんな勢力か、まだ詳しい情報がないんだ。無策で迎え撃つのは危険すぎる」


 その時、オリヴィアが静かに口を開いた。


「カイ様、彼らはただの海賊ではありません。彼女、セリーヌ・ブラックホールは、星間で恐れられている存在です。彼女の狙いは、あなたの技術そのもの。それを使って、さらなる支配を広げようとしているのでしょう」


 オリヴィアの言葉には緊張が走っていた。彼女もまた、星間戦争を経験してきた人物だからこそ、その脅威を理解しているのだろう。


「セリーヌ・ブラックホール…」


 僕はその名前を耳にして、さらに気を引き締めた。今までの敵とは明らかに異なる存在が、僕たちに牙を向けようとしている。


「何としても、彼女たちの攻撃を防がなければならない」


 僕は決意を新たにし、最新鋭の宇宙船を実戦投入する準備を進めることにした。もし彼女たちの攻撃を受けたとしても、この船があれば、きっとアラタを守り抜ける。


 アラタ王国は緊急体制に入り、僕たちは防衛準備を整え始めた。


 そして、セリーヌ・ブラックホール率いる海賊団が、着実にアラタへと近づいているという情報が次々と入ってきた。


「カイ様、いよいよですね。準備は整っています」


 ライラが戦闘態勢に入り、僕に声をかけてくる。エリスやフェイも、すでに宇宙船内でそれぞれの持ち場に就いている。


「これが僕たちの技術の真価を示す時だ」


 僕は心の中で自分を奮い立たせ、宇宙船のコントロールルームに向かった。セリーヌ率いる海賊団との戦いは、もうすぐそこまで迫っていた。


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