異星メカニクス - 貞操逆転の宇宙戦記

イコ

第1話 滅びゆく星と新たな始まり

 西暦4200年。


 人類はついに太陽系を超えて、広大な宇宙へと進出した。


 無数の星々が新たな故郷となり、宇宙都市や植民地が次々と誕生した。


 科学技術の発展は、エネルギー問題や食糧危機を克服し、宇宙での生活を可能にした。人々は新たな希望を抱き、宇宙に広がる無限の可能性を夢見ていた。


 しかし、その平和は突如として破られた。


 宇宙の深淵から現れたブラックホールが、次々と星々を飲み込み、広がる銀河系を脅かし始めたのだ。


 ブラックホールの脅威に対抗する術を見つけるため、各地の科学者たちは命を懸けて研究を続けたが、その圧倒的な力の前に成す術はなかった。


 俺はその中の一人だった。


 宇宙物理学者であり、宇宙船や機動兵器のエンジニアとして、ブラックホールの脅威に立ち向かう技術を開発するために生涯を捧げてきた。


 しかし、どれほど努力しても、ブラックホールの進行を止めることはできなかった。


 そして今、俺の住む星もまた、ブラックホールに飲み込まれようとしている。


 ♢


 宇宙の静寂を切り裂くように、巨大なブラックホールが徐々にその姿を現し始めていた。


 星々を飲み込み、時空さえも歪めるその圧倒的な力は、全てを無に帰す無慈悲な存在。俺は研究室の窓からその光景を見つめていた。


「ついに来たか…」


 冷静さを保ちながらも、その瞳の奥には確かな絶望が宿っていた。


 何年も前から予測されていたこの日が、ついに訪れたのだ。


 俺は科学者として、エンジニアとして、ブラックホールの脅威に立ち向かうためにできる限りのことをしてきた。


 しかし、俺の努力はついに報われることはなかった。


 その原因は、エネルギー不足だった。


 ブラックホールの引力を抑え込むための特殊装置は、理論的には完璧だった。


 だが、それを実行するためには、膨大なエネルギーが必要だった。


 星々の規模でエネルギーを集める計画が進められていたが、度重なるエネルギー供給の失敗や、必要な量を確保するためのインフラが整わなかったことで、計画は頓挫してしまった。


「これが、終わりか…」


 俺は机の上に広げられた設計図を見つめた。


 そこには俺が生涯を捧げた技術の集大成が描かれていた。


 最新の宇宙船、巨大な防衛システム、そしてブラックホールの引力を抑え込むための装置。どれもが優れた技術ではあったが、エネルギー供給の問題が全てを無に帰してしまった。


「少なくとも、全力を尽くせた…」


 俺は深いため息をつき、背後のモニターを確認した。


 もう一度、データを解析し、残された時間を計算する。


 予測通り、あと数時間もすれば、ブラックホールは俺の故郷を飲み込んでしまう。


 逃げる術はない。すでに惑星間の交通は全て遮断され、遠距離宇宙船は旅立っていった。俺がいる研究施設は最終防衛ラインとして孤立状態だった。


「みんな、どうしているだろうか…」


 ふと、家族や友人たちの顔が脳裏に浮かんだ。


 俺は一瞬、研究を中断して家族の記憶が残る家に戻るべきかと考えた。


 しかし、すぐにその考えを打ち消した。


 今さら戻ったところで何ができるわけでもない。俺は科学者としての責任を全うし、最後まで研究に身を捧げると決めたのだ。


「ここで、最後まで戦おう」


 俺は決意を新たにし、データの確認を続けた。


 俺の頭脳はフル回転し、あらゆる可能性を探り続けた。


 もし、あと少しでも有効な手段が見つかれば、家族や友人たちを救えるかもしれない。だが、すべての計算は無情にも俺の努力を否定し続けた。


「これが、運命か…」


 俺は自分に言い聞かせるように呟いた。


 再び窓の外を見つめる。ブラックホールはますます大きくなり、夜空を覆い尽くすほどに広がっていた。その姿は、まるで全てを飲み込む漆黒の悪魔のようだった。


「この技術が…次の世代に受け継がれることを祈る」


 俺は最後の作業を終え、設計図を保管するシステムに入力した。


 このデータが未来に伝わり、誰かが再びこの技術を手に取ってくれることを願いながら。俺は目を閉じ、ゆっくりと椅子に座り込んだ。


「これで、全てが終わる…」


 その瞬間、俺の体を強烈な引力が包み込んだ。


 ブラックホールの接近が限界を超えたのだ。全てが歪み、俺の意識は遠のいていった。


 ♢


 暗闇の中、俺はただ無の中を漂っていた。


 時間の感覚も、空間の感覚もない。ただ無限の闇が広がっているだけだった。


 何も考えることができず、ただその闇に身を委ねるしかなかった。


 しかし、次第に俺の意識に微かな光が差し込んできた。


 それは、まるで命の源のような暖かな光だった。


 俺はその光に引き寄せられるように、意識を取り戻し始めた。


「ここは…」


 ゆっくりと目を開けた。


 そこには、眩しいほどの光が広がっていた。温かく、柔らかな感触が全身を包んでいる。自分がどこにいるのか理解できなかったが、不思議と恐怖は感じなかった。


 次第に、その光の中から何かが聞こえてきた。


 それは、穏やかで優しい声だった。俺はその声に耳を傾けようとしたが、言葉ははっきりと聞き取れなかった。


 だが、確かにその声は俺に何かを伝えようとしていた。


「……」


 その言葉が頭の中に響いた瞬間、俺の意識は再び深い眠りへと誘われた。


 そして、気がついた時、俺は全く新しい世界にいた。


「…ここは?」


 僕はゆっくりと目を開けた。僕の目に飛び込んできたのは、見知らぬ天井だった。


 周囲を見回すと、そこには柔らかなベッドと、木製の家具が並ぶ小さな部屋があった。僕は体を起こそうとしたが、何故か自分の体が思うように動かない。


 凄くダルくて辛い。


「なんだ…この感覚は…」


 ベッドの近くに大きな鏡があり、そこには10歳くらいの少年の姿が映し出されていた。


 僕は驚きのあまり声を失ったが、すぐにある事実に気がついた。


 生まれ変わったのか?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 今回は星間戦争を題材にした、SF要素を入れた異世界ファンタジーです。


 ジャンル的にはSFにしようかと思ったのですが、異世界ファンタジー要素の方が強かったので、こちらを選びました。


 今回も頑張って書いていきますので、読んでいただけると嬉しく思います。




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