第38話 正体
セリーヌ・ブラックホールの艦隊は壊滅した。
僕たちの宇宙船の技術と、仲間たちの連携が見事に機能し、敵の艦船を打ち破ることに成功した。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。
「カイ様、セリーヌの艦が崩壊していますが、彼女自身の行方がわかりません」
リンが冷静に警告を発し、僕たちは緊張を緩めることなく状況を見守っていた。セリーヌはただの海賊ではない。ここまでの戦いで、彼女が持つ力と狡猾さは十分に感じ取っていた。
「彼女が生きているなら、どこかで次の一手を狙っているはずだ。注意を怠るな」
僕は警戒心を強め、船内のセンサーに目を向けた。その時、突然、船内に警報が鳴り響いた。
「カイ様! 敵反応を確認しました! なんと、彼女はすでに私たちの宇宙船の内部に侵入しています!」
フェイの声が震える。僕はその報告に驚き、すぐに周囲を見渡した。
「どうやって…!?」
「カイ様、彼女は宇宙船の崩壊と同時に脱出し、私たちの船に接近していたようです。何か特殊な技術を使って、密かに船内に侵入したのでしょう」
リンが緊急分析を行い、セリーヌの行動を推測した。その瞬間、船内のモニターに、セリーヌの姿が映し出された。
「ごきげんよう、カイ王子。やっぱり、あなたの技術は素晴らしいわ」
セリーヌ・ブラックホールは冷たい笑みを浮かべ、堂々と僕たちの宇宙船のコントロールルームに現れた。黒い艶やかな衣装を身にまとい、その金色の瞳には計り知れない知恵と悪意が宿っている。
「セリーヌ…!どうやってここまで侵入したんだ!」
僕は驚愕しながらも、彼女に問いかけた。だが、彼女はその質問には答えず、ただ静かに微笑んでいた。
「あなたの宇宙船、そしてあなた自身…どちらも手に入れる価値があるわ。だから、私はあらゆる手段を使ってでも、この船にたどり着いたのよ」
彼女の言葉は、僕に強い不快感を抱かせた。彼女は僕たちの技術を奪うために、ここまでして来たのだ。
「お前がどんな野望を抱いているか知らないが、この宇宙船は絶対に渡さない。ましてや、僕たちの星もだ」
僕は毅然とした態度で彼女に言い放った。だが、セリーヌは少しも怯むことなく、艶やかに笑った。
「カイ王子、あなたはまだわかっていないわね。私はただ技術を奪おうとしているわけではないの。私の目的はもっと大きいのよ…」
「何…?」
彼女の瞳が鋭く輝いた瞬間、僕はその背後に隠された真実を感じ取った。彼女は単なる海賊ではない。もっと深い理由があって、僕たちを狙っている。
「実は、私の一族はかつて銀河の覇権を握っていたの。だが、権力争いに敗れ、私たちは隠れざるを得なかったのよ。私の家族は、もう一度銀河の支配者となるために、あなたの技術を手に入れようとしていたの」
セリーヌの言葉は重く響いた。彼女は、ただの海賊ではなく、かつての王族、そして銀河の覇権を狙う一族の生き残りだったのだ。
「そして、カイ王子。あなたの技術を手に入れれば、私は再び銀河を支配する力を得ることができる」
彼女は冷たく微笑みながら、僕に近づいてきた。その瞬間、船内が揺れ、僕たちは再び戦闘態勢に戻らざるを得なかった。
「全員、警戒を強めろ! セリーヌをここで止める!」
僕は仲間たちに指示を出し、セリーヌとの最終決戦に挑むことを決意した。彼女を止めなければ、僕たちの星だけでなく、銀河全体が危険に晒されるだろう。
戦闘が再び激しさを増す中、僕たちはセリーヌの動きを封じようとした。しかし、彼女は僕たちの予想を上回る速度で攻撃を仕掛けてきた。
「彼女は魔導技術を完全に操っている。彼女を止めるのは容易ではないわ」
リンが苦い表情で言った。セリーヌは魔導技術を駆使して、僕たちの攻撃を防ぎながら反撃してきた。
「だが、僕たちは必ず勝つ!」
僕は全力でセリーヌに立ち向かった。僕の仲間たちも、全力で彼女を止めようとしてくれている。エリスやライラ、フェイ、そしてリンたちの連携で、僕たちは少しずつセリーヌを追い詰めていった。
「諦めるんだ、セリーヌ! 僕たちの技術は、銀河を支配するためのものじゃない!」
僕は彼女に向かって叫んだ。だが、彼女は一瞬怯んだものの、まだ完全には折れていないようだった。
「…なるほど、あなたたちの力は本物ね。でも、私は負けない」
彼女は最後の力を振り絞り、僕たちに向かって強力な魔導攻撃を仕掛けてきた。
だが、その瞬間、リンが素早く反応し、彼女の攻撃を封じた。
「カイ様、今です! 彼女の動きを止めました!」
僕はその一瞬の隙を見逃さなかった。セリーヌの動きを封じたリンのサポートを受け、僕は彼女に向かって突進した。そして、彼女の手にしていた魔導武器を弾き飛ばし、彼女の力を奪った。
「これで終わりだ、セリーヌ…!」
僕は息を切らしながら彼女に告げた。彼女は静かに微笑みを浮かべ、ようやく僕たちの勝利を認めた。
「ふふ…あなたたちの勝ちね、カイ王子。でも、私はまだ諦めてはいないわ。いずれまた、あなたに挑むことになるでしょうね」
そう言い残し、セリーヌは脱出ポッドに乗り込んで姿を消した。僕たちはそのまま彼女を追うことなく、戦いが終わったことを確認した。
「カイ様、これで一応の決着がつきましたね」
リンが静かに僕に話しかける。僕は頷き、仲間たちと共に戦いの終結を喜んだ。だが、同時に感じていた。セリーヌが言ったように、これが完全な終わりではないと。
「次に会うときは、もっと大きな戦いになるだろう。でも今は、僕たちの勝利を喜ぼう」
僕は静かに、宇宙の広がる先を見つめた。
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