第4話 魔導ロボットと新たな出会い
図書室で歴史書を読んだ僕は、その内容にすっかり魅了されてしまった。
特に魔導ロボットの存在が気になり、どうしてもそれを実際に見たいという気持ちを抑えきれなかった。
もしかしたら、この城のどこかに魔導ロボットや宇宙船が保管されているのではないか。そう思い立った僕は、意を決して城の中を探検することにした。
広い廊下を進みながら、頭の中でさまざまな想像を巡らせた。
巨大なロボットが立ち並ぶ格納庫、先進的なデザインの宇宙船、整備士たちが忙しそうに働く様子…その全てがこの城の中に存在するかもしれないという期待が、僕の胸を高鳴らせた。
しばらく歩いていると、目の前に大きな扉が現れた。
他の部屋とは違い、重厚な金属製の扉で、明らかに特別な場所を守っているような雰囲気を醸し出している。
「ここに…あるのかもしれない」
僕は扉の前でしばらく躊躇したが、好奇心に負けてそっと扉を押してみた。
触れただけで自動で開いていくその扉の向こうには、広大な格納庫が広がっていた。驚くべき光景に僕は息を呑んだ。
格納庫の中には、いくつもの巨大な機体が整然と並んでいた。
天井は高く、壁にはさまざまな装置やケーブルが張り巡らされている。
すぐに目に入ったのは、何体もの魔導ロボットだった。
歴史書で読んだ通りの、いや、むしろそれ以上の存在感を放つ巨大な体躯を持ち、強力な武装を備えていた。
「これが…魔導ロボット…」
僕はその場に立ち尽くし、目の前の光景に圧倒されていた。
目の前にそびえ立つそれ――魔導ロボットは、僕の想像をはるかに超えた存在感を持っていた。
「すごい…これはまさに、僕が夢見ていたロボットだ…!」
全高はおそらく16メートル、いや、18メートル近いかもしれない。
「まず、頭部のデザインがすごい…!この流線型のフォルム、角度によって光を反射するシルバーの装甲が、どこか未来的でありながら、力強さを感じさせる…」
僕はその美しいラインに見惚れながら、頭部から足元にかけて視線を移していった。頭部には精密なセンサー類が組み込まれていて、敵を探知し、正確に照準を合わせることができるようになっているらしい。
これが実戦でどれだけ役立つか、想像するだけでワクワクが止まらない。
「この腕部も凄まじい…! 重装備なのに、動かしたときの軽快さを感じるこのバランスの良さ…これって、関節部の設計が相当緻密に計算されているんだろうな…」
僕はつい興奮して声に出してしまった。
それくらい、この機体の存在感が強烈なのだ。
「そして脚部…! これが18メートルを超える機体を支えるなんて信じられない。しかも、ただの支えじゃない…この脚部は地形に応じて柔軟に動けるように設計されている。関節部が強化されていて、耐久性と機動力を両立しているんだ…これは一体、どんな技術で作られているんだろう…?」
僕はその脚部の構造を見てさらに感動した。
まるで巨大な生き物がそこにいるかのように、足元に感じる圧倒的な重量感と力強さ。そしてそれを支える脚部の関節は、細かく動くように設計されている。
「うわぁ…これが僕の世界の技術と融合したら、一体どんなロボットが作れるんだろう…?」
僕の頭の中では、すでに様々な改良アイデアが浮かんでいた。
もっと軽量化してスピードを出せるようにしたり、魔力の流れを最適化してエネルギー効率を高めたりすることができれば、この機体はさらに強くなる。
もしかしたら、僕が手を加えたら、この機体は最強の魔導ロボットになるんじゃないか…?
思わず呟いた僕の声は、格納庫の静寂の中に小さく響いた。
目の前のロボットは、まさに夢に描いていたものそのものだった。滑らかな装甲に美しい装飾が施され、その姿には威厳と力強さが同居していた。
僕はその機体に魅了され、しばらくの間ただ見つめることしかできなかった。
「触ってみたい…」
機体に手を伸ばそうとしたその時、格納庫の奥から人の気配がした。
振り返ると、そこにはメカニックとして働いている作業服を着た女性が数人、そして、作業服ではないピッチりと体に張り付くような服を着た女の子が三人やってきた。
女性たちが僕に気づき、目を丸くしてこちらを凝視する。
「王子様!?」
一番初めに僕に気づいたのは、整備士らしき女性だった。彼女は短く切り揃えられた赤髪を持つ、背の高い女性だった。
彼女の目が僕に固定され、その瞬間、彼女の顔が真っ赤になった。
「え…えっと…男性である、王子様が…どうしてここに!?」
「えっ! えっとね。魔導ロボットが見たくて来たんだ」
「そっ、そうでありますか?! 私は整備師のリン・カーターであります!」
変な丁寧語で名乗りをあげてくれるリン・カーターさん。
名乗った彼女は、驚きと戸惑いを隠せない様子で口を開けたままだ。
その動きがぎこちなく、手に持っていた工具を落としそうになっていた。
歴史書にあった通り、男性である僕の存在に慌てているようだ。
リンさんは焦りまくっていた。なんだか見ていて申し訳なくなる。何よりも彼女の目が僕の顔から一瞬たりとも離れず、完全に動揺しているのが分かった。
「リンさん? よろしくね」
僕が名前を呼ぶと、リンさんは一層顔を赤くして目をそらした。
「興味が…? 王子様が…ロボットに…?」
リンの声は、困惑と戸惑いに満ちていた。
彼女の目が再び僕に向けられ、その中には信じられないという驚きが混じっていた。どうやらこの世界では、男性がロボットや機械に興味を持つことは珍しい、あるいは常識外れのことらしい。
その時、別の方向から快活な声が響いた。
「お、おい、あなた様が王子様って本当なのですか…?」
茶色のショートヘアを持つ少女が、驚いた顔で駆け寄ってきた。
「うん。そうだよ。君は?」
「わっ、私はパイロットの魔導ロボットの研究生で、名前はライラ・マルティネスだ!」
なんとか言葉を発しようとしているが、僕が男性であることに気づいて、明らかに動揺しているようだった。
「すごい、本当に王子様だ…初めて間近で見たけど、こんなに近くに男性が…綺麗……」
ライラさんはどこか緊張した様子で僕を見つめていた。
その目が僕の顔や体をじろじろと見て、どう対処していいのか分からないという表情を浮かべていた。
「ライラさん、よろしくね。僕もロボットにすごく興味があるんだ」
僕が笑顔で挨拶すると、ライラは一瞬固まった後、バッと顔を赤らめて視線をそらした。
「え…王子様がロボットに…興味が…? う、うん、でも…えっと…どうして? えぇえ」
ライラは耳まで真っ赤に染め、しどろもどろになりながらも必死に平静を保とうとしていたが、その努力がむしろ可愛らしい姿に見えた。
さらにもう一人、長い金髪を持つ美しい女性が、少し遅れて僕の方に歩み寄ってきた。
その立ち姿には落ち着いた威厳があり、普段は冷静沈着な人物であることが感じられた。
「王子様がこのようなむさくるしい場所に…よくぞいらっしゃいました。私はコノミ・ハスミと申します。格納庫の監督をしております」
コノミは一度視線を僕からそらし、深呼吸をしてから再び顔を向けた。
その表情は何とか冷静さを保とうとしていたが、微かに顔が赤くなっているのを僕は見逃さなかった。
「よろしくお願いします、コノミさん。ここでのこと、いろいろ教えてもらえますか?」
僕がそう頼むと、コノミは一瞬戸惑ったように見えたが、すぐに小さく頷いた。
「もちろんです、王子様。ですが、私たちも少し準備が必要かもしれません。あなたがいらっしゃることで、皆が少々…緊張してしまっていますので」
コノミの言葉に、他の女性たちが一斉に恥ずかしそうな表情を浮かべ、僕を見ていた。
普段は男性と接する機会が少ない彼女たちにとって、僕の存在は明らかに刺激が強すぎるようだった。
「そ、そうですよね。僕が急に来てしまってごめんなさい。ちゃんと予告してから来るべきだったかも」
僕が謝ると、彼女たちは一層顔を赤らめたが、どこかホッとしたような表情も浮かべていた。
リンさんはそっと工具を握り直し、ライラはぎこちなく笑顔を見せ、コノミは少し硬い笑顔を浮かべた。
「いえ、そんな…こちらこそ、驚かせてしまって申し訳ありません。私たちはいつでも王子様をお迎えする準備は整えております」
コノミがそう言うと、他の女性たちも頷いてみせた。
どうやら嫌われているわけではなさそうだ。
彼女たちの反応は新鮮で、少し照れくさいものもあったが、同時にこの世界での自分の立場を改めて実感させるものだった。
僕は彼女たちとの出会いを通じて、この世界でどんな関係を築いていくのか、少しずつ見えてきた気がした。
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