第29話 オリヴィアを受け入れた決断
僕はオリヴィアの目を見つめ、決断を下した。
彼女は敵として戦争を仕掛け、アラタ王国に多くの犠牲を強いた。
だが、それと同時に彼女はその才覚と誇りをもって、自分を勝利者として示した。
降伏の際には賠償金を含めたすべての条件を満たし、戦術的にも被害を最小限に抑えた彼女の能力を僕は無視することはできなかった。
「オリヴィア、君の才能は認めざるを得ない。だから、君を受け入れることにしたよ」
その言葉に、オリヴィアは微かに笑みを浮かべた。
彼女の表情には、勝者としての誇りと余裕が滲んでいた。
「ありがとうございます、カイ王子。私を受け入れてくださって。あなたの選択が、正しかったと証明してみせますわ」
僕は一瞬、彼女を嫁として迎えるべきか迷ったが、今は彼女の能力を必要としていることは間違いない。
オリヴィアを受け入れらたもう一つは、アラタの医療技術によるところが大きい。
戦場で爆散してしまった以外の四肢欠損や、意識不明の重体者も全てアラタの医療で修復し、治療することができたために、民衆から集まる非難の目が少なかった。
また女性だけの社会で、序列のような関係性があるのだとミカが教えてくれた。
僕にはわからない考え方だが、民衆が受け入れてくれるなら僕はオリヴィアを欲しいと思った。
オリヴィアは、確かにただの捕虜ではなく、戦略的にもアラタ王国の未来に貢献する力を持っている。
彼女が自らの力を発揮する場を与えなければならないと、僕は確信していた。
しかし、その決断が、これまで僕を支えてくれた女性たちの心に火をつけることになるとは、この時まだ僕は気づいていなかった。
♢
オリヴィアが僕の元に正式に加わったと知れ渡ると、パイロットであるライラ、エリス、フェイの三人の表情が明らかに変わった。
彼女たちはこれまで僕を支えてきたが、オリヴィアの登場に対して複雑な感情を抱いているようだった。
「カイ様があのオリヴィアを受け入れた…だと?!」
ライラは、信じられないという顔で僕を見た。
彼女はどちらかと言えば行動的で、僕に対してストレートに感情を示してくれるが、今回ばかりはその感情が抑えきれないようだった。
「彼女は敵だったんだぞ! カイ様…。私たちの仲間を傷つけた。なのに、どうして…」
エリスも冷静な態度ではあったが、その声には少しだけ不安が滲んでいた。彼女もまた、僕を信じてついてきたが、今回の判断には疑念を抱いている。
「そ、そうですよ…カイ様、私たちがもっと頑張れば…オリヴィアなんかいなくても…」
フェイは無言で僕を見つめていた。
彼女はオリヴィアの強さに圧倒されつつも、僕にもっと頑張りたいという気持ちを伝えていた。
♢
その一方で、僕の側近であるリンとミカもまた、オリヴィアの存在に強く反応していた。
特にリンは、オリヴィアの才能を評価しつつも、僕に対して強いライバル心を抱くようになった。
「オリヴィアの能力は確かに素晴らしいです。でも、カイ様…私は彼女に負けたくない。私はずっとあなたの研究を支えてきたのですから。だから、今さら彼女に追い抜かれるわけにはいかない」
リンの声には決意が込められていた。
彼女はいつも僕の研究に協力してくれていたが、オリヴィアの存在によってその立場が揺らぐことを感じているようだった。
ミカもまた、僕のそばにいつもいてくれたが、オリヴィアが僕の目を引くことで、彼女の中に不安が芽生え始めていた。
「カイ様…オリヴィアをいきなり嫁にするのはダメですよ。私はカイ様のために、もっと頑張ります。私が、あなたをお守りしますから…」
ミカの声にはいつもの優しさと共に、強い決意が感じられた。
彼女もまた、僕に対する忠誠心と感情が揺らぎ始めていたのだ。
♢
艦長シオン・ツクヨミと副艦長クレア・カンザキも、この状況に無関心ではいられなかった。
シオンは冷静な指揮官だが、オリヴィアの才能を評価する一方で、僕の決断に複雑な感情を抱いているようだった。
「カイ様、あなたの決断を信じています。でも…オリヴィアは簡単に扱える相手ではありません。彼女の力を利用するつもりなら、もっと注意を払うべきです」
シオンの言葉は冷静だが、その目には警戒心が滲んでいた。
彼女は指揮官として、オリヴィアが今後どのようにアラタに影響を与えるのかを慎重に見極めているようだった。
一方、クレアはいつもの明るい笑顔を少し曇らせていた。彼女はムードメーカーでありながらも、僕への感情が揺れ動いていることを隠せなかった。
「カイ様、あなたがオリヴィアを選んだこと、ちょっと意外だったわ。だけど、私はまだ諦めないからね。いつでも、あなたの力になれる存在でありたいから…」
クレアはお姉さんのような存在でありながらも、僕に対する特別な感情を抱いていることを感じさせた。
♢
オリヴィアを受け入れたことで、僕を取り巻く女性たちの心が大きく動き始めた。彼女たちはそれぞれに僕への思いを抱きながらも、オリヴィアの存在によってその感情が揺れ動いている。
これまで僕を支えてくれていた女性たちは、それぞれの立場で僕に尽くし、僕を守ろうとしてきた。だが、オリヴィアがその輪に加わったことで、彼女たちの心に火がついたのは明らかだった。
僕はこの先、彼女たちとの関係をどのように築いていくべきなのか、そしてオリヴィアをどのように扱うべきなのかを真剣に考え始めた。
彼女たち一人ひとりが抱く感情に、どう応えていくべきか…それは、僕自身の成長と共に決めていかなければならない問題だった。
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