第28話 オリヴィアの処遇
静けさが広がる王宮の会議室に、僕は一人で座っていた。
つい先ほど、女王である母上から通信があり、ヴァンガードのオリヴィア・セリーヌ・ヴァンガードの処遇について、僕に一任するという連絡を受けた。
彼女は戦争を仕掛けてきた張本人であり、多くの兵士が犠牲になったという事実は重くのしかかる。それでも、オリヴィアの行動はすべて計算されたものだった。
「カイ、オリヴィアの処遇はあなたに任せるわ。彼女はただの捕虜ではない。戦争で失ったものに対する賠償を、既に戦艦に積み込んでいるそうよ」
母の言葉は冷静だった。星間戦争の取り決めに基づく賠償金に相当する額が、オリヴィアの降伏と同時に提供されているというのだ。
「賠償と降伏を同時に行い、しかも自らを捕虜として差し出すなんて…。彼女の計算高さは尋常じゃない」
僕はその事実を受け止めながら、オリヴィアの行動に驚かざるを得なかった。彼女は、単に敗北を受け入れたわけではない。
むしろ、戦争の中で自らの価値を示し、賠償まで計画に組み込んでいたのだ。
「彼女は確かにジャジャ馬だわ。簡単に乗りこなせるような相手ではない。けれども、その能力の高さは認めざるを得ない」
母はそう言った。オリヴィアの能力は確かに突出している。パイロットとして、そして艦長としての技術を戦場で存分に発揮した。
それでも、彼女は敵として多くの命を奪い、国を脅かした存在だ。
「生かすも殺すも、すべてあなた次第よ」
その言葉が僕の胸に重く響く。僕は、自分の手で彼女の未来を決めなければならないのだ。彼女は王族としての立場を失い、戦犯として見捨てられた。
しかし、今はアラタの捕虜として、僕の判断にすべてが委ねられている。
「オリヴィアの本当の目的は、嫁入りだと私は思う。彼女は負けた後も、ただ敗者では終わらせなかった。自分を差し出すことで、あなたに近づこうとしているのよ」
母の言葉に僕は黙り込んだ。オリヴィアの行動すべてが計算されていたことは分かる。彼女が僕の力を求め、僕を手に入れようとしたのも間違いない。
だが、それ以上に彼女の真の目的は、アラタの王家に嫁ぐことだったのだろう。
「もし、あなたが彼女を受け入れるなら、それもいいでしょう。ただし、ジャジャ馬の彼女を乗りこなせるかは、あなたの腕次第ね」
僕は無言でその言葉を受け止めた。母は僕を信頼しているのだ。オリヴィアをどのように扱うか、その決定権はすべて僕に託されている。
「そして、オリヴィアもそれを望んでいるはずよ。彼女は、自分をどう扱うか、すべてあなたに委ねている。嫁として迎え入れてもいいし、性の奴隷として扱うことも、すべてあなたの思いのままに」
母はその言葉を淡々と語った。オリヴィア自身がそれを望んでいるという事実に、僕は改めてその重さを感じた。彼女はただの捕虜としてではなく、自らを差し出すことで新たな立場を得ようとしている。
僕は深呼吸をしてから、オリヴィアの待つ部屋へと向かった。
彼女は戦争の後、アラタの宮殿内にある客室で監視下に置かれていた。部屋の扉を開けると、彼女は窓辺に立ち、外の景色を見つめていた。
「来てくれたのですね、カイ王子」
オリヴィアは振り返り、微笑を浮かべた。その顔にはどこか余裕があり、まるですべてを予測していたかのような自信が漂っていた。
「オリヴィア、君は一体何を考えているんだ? 戦争を仕掛けてきたのに、どうしてこんなに簡単に降伏した?」
僕は彼女に直接問いかけた。彼女が何を求め、何を計算しているのか、確かめたかった。
「あなたが気に入ったからよ、カイ王子。それがすべて」
彼女はそう言い切った。その言葉には一片の迷いもなかった。
「でも、それだけじゃないわ。私はこの戦争で自分の力を示したかったの。そして、もし敗れたとしても、アラタ王国にとって価値ある存在であることを証明したかった。私をどう扱うかは、あなたに委ねるわ」
彼女は少し笑みを浮かべながら、近づいてきた。その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
「私を嫁として迎えるもよし、奴隷として扱うもよし。それはすべて、あなたの望むまま。私は、あなたの決断に従うわ」
その言葉を聞いて、僕は迷った。彼女をどう扱うべきなのか。彼女は敵でありながらも、僕にすべてを託している。彼女をただの捕虜として扱うには、その能力も誇りも高すぎる。
「オリヴィア…」
僕は彼女の目を見つめた。その先には、僕にすべてを委ねた覚悟が見え隠れしていた。
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