第31話 女子より研究

 艦長のシオンと副艦長のクレアも、オリヴィアが現れたことで少しずつ僕に対する態度が変わり始めていた。


 シオンは冷静な指揮官だが、彼女もまた僕に対する感情を隠していなかった。


「カイ様、オリヴィアは確かに強いですが、私はあなたを信頼しています。だから、これからもあなたを守り抜きます」


 シオンの言葉には強い責任感が込められていた。


 彼女は僕を守ることを最優先にしていたが、そこには明らかに僕に対する特別な感情が含まれていた。


 クレアは明るく、いつも笑顔で僕をサポートしてくれていたが、彼女もまた僕に対する感情を隠そうとしていなかった。


「カイ様、これからも私があなたを支えますからね。いつでも頼ってください」


 クレアは僕にお姉さん風を吹かせながらも、どこか競争心を持って僕に接してくるようになっていた。


 僕を取り巻く女性たちはそれぞれの方法で僕にアピールを始めた。


 オリヴィアの存在が彼女たちの心に火をつけ、僕に対する恋愛模様が動き出していた。


 誰もが僕を支えたいと願い、僕の注目を集めようとしていた。


 僕はその中で、彼女たちの思いにどう応えるべきか、まだ迷っていたが、これからの選択が僕の未来を大きく左右することを感じずにはいられなかった。



 オリヴィアとの戦争が終わり、アラタ王国は一時的な平和を取り戻した。


 しかし、僕の中では新たな熱が燃え上がっていた。


 魔導ロボットの開発を通じて異世界の技術に触れた僕は、次なる挑戦として、宇宙船の開発に興味を抱くようになっていた。


 魔導ロボットは戦場でのパイロットたちの強力な武器となった。


 しかし、戦争が終わり、冷静に状況を振り返ってみると、戦艦同士の戦いにおける宇宙船の重要性がますます鮮明に浮かび上がった。


 宇宙の広大な海で繰り広げられる戦争において、宇宙船の力は決定的だったのだ。


「次は宇宙船だ…」


 僕はそう自分に言い聞かせた。魔導ロボットの技術は確かに画期的であり、戦局を大きく左右した。


 しかし、それだけでは足りない。


 宇宙船の開発によって、アラタ王国の防衛力をさらに強化し、次の脅威に備えることができるはずだ。


 僕は、かつて魔導ロボットの開発に熱中していたように、今度は宇宙船の技術に没頭し始めた。


 宇宙船を作り上げることは、魔導ロボットとは異なるスケールでの挑戦だったが、僕はそれに魅了されていた。


「宇宙船があれば、ただの防衛だけでなく、他の星々との貿易や外交にも積極的に関わることができる。アラタ王国を宇宙の中心にするんだ」


 僕は心の中でそう誓った。


 アラタがこれまで他国に負けない技術力を誇ってきたように、次は宇宙船の開発によってその名をさらに広めたいと考えた。


 まずは、魔導ロボットで培った技術を応用して、宇宙船に搭載できる魔導エンジンの研究に取り掛かった。


 これまでは、パイロットの魔力を利用して魔導ロボットを動かしていたが、宇宙船にはもっと安定した持続可能なエネルギー源が必要になる。


 宇宙船の開発に向けて、僕は再び仲間たちと協力することにした。


 まずはやっぱりリンに協力してもらいたい。


 彼女は僕と同じように技術に興味を持っており、魔導ロボットの研究を手伝ってくれたパートナーでもある。


「リン、僕は、次に宇宙船を作ろうと思うんだ!」

「カイ様、宇宙船の開発に興味を持たれたんですね。魔導エンジンを改良して宇宙船に応用できる可能性はありますよ。でも、それにはもっと多くのデータが必要です」


 リンはすぐに僕の考えに賛同し、共に研究を進めることを決意してくれた。


 彼女は魔導ロボットの開発でも中心的な役割を果たしてくれたが、今回は宇宙船のエンジン設計を担当してくれることになった。


 さらに、僕のメイドであり忠実な助手であるミカも、研究のサポートを申し出てくれた。


「カイ様が次に目指すのは宇宙船なんですね。私も全力でサポートします。カイ様の夢を実現させるために、何でもお手伝いします!」


 ミカは技術に対してそれほど詳しくないが、彼女の献身的なサポートは僕にとって大きな力だった。


 研究の進行を円滑にするための雑務や情報整理など、彼女はすべてを引き受けてくれた。


 僕たちはまず、既存のアラタ王国の宇宙船技術を見直すことから始めた。


 これまでの宇宙船は主に輸送や防衛に使われていたが、今後はより戦術的で、攻撃にも耐えられる設計が必要だ。


「もっと軽量化し、機動性を高める必要がある。さらに、防御シールドを強化し、敵の攻撃を回避できる新しい技術が必要だ」


 僕は設計図を広げながら、いくつかのアイデアを口にした。


 リンはそれを受けて、魔導エンジンの設計に改良を加えるためのアイデアを出してくれた。


「カイ様、もしエネルギー効率を高めるなら、この部分をもっと細かく調整してみてはどうでしょうか。魔導エンジンの出力をさらに安定させるための新しい回路を考えてみました」


 彼女が示してくれた回路図を見て、僕は彼女の技術的な知識に改めて感心した。


「さすがだね、リン。これなら効率が格段に上がるはずだ」


 僕たちは何度も試行錯誤を重ねながら、ついに魔導エンジンの改良版を完成させた。このエンジンは従来のものよりも出力が高く、しかも燃費が良い。これならば、宇宙船の航行距離も飛躍的に向上するだろう。


 宇宙船開発はまだ始まったばかりだが、僕の心は既に次のステップに向かっていた。魔導ロボットで得た知識と技術を応用し、さらに新しい宇宙船の時代を切り開くことができると確信していた。


「次は宇宙船でアラタ王国を守るだけでなく、新たな星々とのつながりを作るんだ。アラタを宇宙の中心にするために…」


 僕は強い決意を胸に抱き、仲間たちと共に宇宙船開発の道を歩み始めた。

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