第19話 女性ばかりの大運動会 4

 第四競技:射撃訓練


 第三競技が終わり、候補生たちは次の競技に備えて再び姿を変えた。


 今度は、彼女たちが着用するのはピッチリとしたパイロットスーツだ。

 このスーツは、体のラインがはっきりと出るデザインで、パイロットとしての動きやすさを最大限に考慮されたものだ。


 普段、三人がパイロットをする際に、着用しているものと同じ物を用意してもらった。これは僕が軽量化と、魔力伝達力を高めることを念頭に置いてリンに注文したものでもある。


 僕は次の競技が行われる場所に向かい、候補生たちの準備を見守っていた。


 そこには、すでにパイロットスーツに身を包んだ候補生たちが集まっていたが、その中で一際目を引く人物がいた。


「彼女は…」


 その人物は、金髪の縦巻きロールを持つ美女だった。


 彼女は第三競技の水上で四位の成績を残した。


 突然現れ、他の候補生たちを圧倒する実力を見せつけた。今、彼女は冷ややかな笑みを浮かべながら、他の候補生たちを見下ろしている。


「この競技でも、あの金髪美女がまた何かをやってのけるのかな…ちょっと面白いかも」


 僕はそんな考えを胸に、競技の準備が整うのを待っていた。


「次の種目は、射撃訓練です。この競技では、皆さんの集中力、精度、そして瞬発力が試されます」


 僕が説明を始めると、候補生たちはそれぞれに緊張を高めた様子だった。

 

 射撃訓練はパイロットにとっては必須であり、自信のある競技として意気込みも高いようだ。


 動くターゲットに正確に命中させることが求められる。ターゲットはランダムな速度で移動し、難易度も徐々に上がっていく。


「この競技は特に、フェイにとって有利かもしれないな…」


 僕はフェイの姿を見ながら考えた。


 彼女は射撃が得意で、その集中力と正確さは周囲からも高く評価している。


 フェイはスタートラインに立ち、すでにライフルを手にしていた。


 この競技用に、魔力で球を作り出すライフルを作った。


 それに一番興味を持ったのもフェイだ。


 彼女の瞳は鋭く、集中しているのが一目で分かった。金髪美女もまた、冷静な表情で準備を整え、余裕を感じさせる雰囲気を漂わせていた。


「それでは、競技を開始します。よーい、スタート!」


 僕の合図とともに、競技が始まった。まずはターゲットがゆっくりと移動し始める。フェイは狙いを定め、最初のターゲットに正確に弾を命中させた。


「よし、フェイ、いいぞ!」


 一方、金髪美女もまた一発でターゲットを射抜いた。

 

 その動作は冷静で、まったくブレがなかった。


「さすがだな…あの冷静さ、ただ者じゃない」


 競技が進むにつれて、ターゲットの速度は徐々に速くなり、難易度も上がっていった。


 ライラとエリスも健闘しているが、この競技ではフェイが抜きんでている。

 さらに、金髪縦巻きロールの美女が次点だ。


 フェイはその集中力をさらに高め、次々とターゲットを射抜いていく。

 彼女の動作には一切の迷いがなく、まさに一心不乱という言葉がぴったりだった。


「フェイ、すごい集中力だ…!」


 しかし、金髪美女もまたそれに負けじと、ターゲットを次々と命中させていく。

 彼女の冷静さと正確さは、フェイと互角だった。


 二人はまるで競り合うように、ターゲットを次々と撃ち抜いていく。


「この二人、完全にレベルが違うね…」


 競技が終盤に差し掛かり、最後のターゲットが出現した。


 それは最も速く、かつ最も難しい位置に配置されていた。フェイは一瞬息を呑んだが、すぐに冷静さを取り戻し、最後のターゲットに照準を合わせた。


「絶対に…カイ様に優勝する姿を見せるんだから…!」


 フェイの叫び声が聞こえてきた。

 彼女の強い決意が、トリガーを引いた。


 その瞬間、弾は見事にターゲットに命中した。しかし、同時に金髪美女もまた最後のターゲットを撃ち抜いていた。


「えっ…同時に…?」


 僕はその瞬間を目の当たりにして、二人の結果がどうなるのか息を呑んで見守った。競技が終了し、スクリーンにスコアが表示される。


「同点…!?」


 スコアはぴったりと同じで、フェイと金髪美女は完全に同点だった。

 僕はその結果に驚きながらも、二人の実力に改めて感心した。


「フェイ…よく頑張ったな」


 フェイはスコアを見て、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに満足げに微笑んだ。

 彼女にとって、同点であったことが誇らしかったのだろう。


 一方、金髪美女は微かに笑みを浮かべながら、フェイに近づいた。


「あなた、なかなかやるじゃない。少し見直しましたわ」


 その言葉に、フェイは驚きつつも、少し照れた様子で頷いた。


「ありがとうございます…でも、まだまだこれからです」


 二人は軽く頷き合い、再びライバルとして競り合うことを誓ったようだった。


 なんだか、ライバル関係のように見えていいな。

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