第10話神楽坂優花③
「確か…設定では明日だった筈…」
このエロゲーの世界に転生して早くも五年が経過した。ゲーム本編のイベントはヒロイン達が高校生になってから始まるんだけど、一人だけ物語が始まる前の設定を変えたいヒロインがいるんだ。
「…神楽坂優花」
ヒロイン達はみんな処女の設定だ。当然の様にそれは散らされていく。でもヒロイン達の中に…一人だけ…一人だけ非処女のヒロインがいるんだ。神楽坂優花だ。
それは何故なのか?
全てはイベントで明らかになったんだ…。
♢
彼女の初めてのイベントは高校に入って暫くしてからの事。上級生の男子に呼び出されるんだ。男子の一人が彼女に告白。彼女は告白を断る。男子は告白を断られるとは思っていなかった。
手に入らないなら無理矢理に関係を持とうとその男子は思う。
「……おい? みんな出てこいよっ!今からコイツをヤる!その後はみんなで輪姦すぞ!」
断られた男子は友達を数名連れて来ていたんだ。物陰に潜ませていたってわけ…。当然逃げようとした神楽坂優花。
エロゲーなので逃げられる訳もなく、助けも来ない…。彼女は懇願する様に言う…。
「わ、私…初めてなの…だから…お願い…こんな事止めてっ!?こんな事しないでっ!」
男はその言葉を聞き、余計に興奮。俺が神楽坂優花の初めてをもらってやる!と、息巻いて行為に及ぶんだ。
だけど…
「チッ…こいつ…処女じゃねぇーぞ?」
そこで回想シーンが流れる。彼女は幼い頃に遊園地でパレードの最中に連れ去られている事。その後、親や警察が必死に捜索して彼女を保護する事が出来たんだけど…。これ以上は言わなくても分かるだろ?
とにかく…彼女は酷い事をされて、心が壊れてしまっていた。そこで彼女を見かねた両親が催眠術師に依頼を出したんだ。依頼を受けた催眠術師は彼女の記憶を催眠術で封印した事が明らかになる…。
そして…回想は終わり…レイプされているうちに彼女は全てを思い出した…
そして彼女は…
♢
それが神楽坂優花のイベントだった。胸糞悪い話だ。そんなエロゲをプレイした俺が言うなと思われるだろうけどな…。
でも…今はこの世界が俺の現実。だからこそそれを変えられるのなら変えてあげたいと心から思っている。誰だってバッドエンドはイヤだしな。
♢
そして…翌朝早く俺は電車に乗り込み、ゲームの記憶を頼りに神楽坂優花の家へと向かった。神楽坂優花の家は俺が住んでいる街がある県から隣の隣の県。結構な距離があるし、乗り継ぎもしなければならなかった…。
時間が思った以上に掛かり過ぎてしまった、急がないと…。
「たぶん…この辺りの筈なんだけど…」
神楽坂優花の家の近く迄は間違いなく来ている筈なんだ…。
本来なら前もって場所を把握する為に来ておきたかったんだけど、今の俺は5歳の子供。勿論携帯は持たされてない。まあ、早い話、自由に動きまわる事も、色々調べたりする事もままならないわけだ。貯めてた小遣いは殆ど無くなってしまったしな。
それに書き置きを部屋に残して家族には黙って家を出てきた。家族に心配掛けてしまうのも勿論分かっている。
…帰ったら謝るけど…大目玉は確定だ。でも仕方ないよな?
そんな事を思いながら歩いていると、前方に大きな屋敷が見えてきた。
「アレかっ!」
俺は急ぎ門の所へ駆け出した。門に到着すると同時に門構えを見てみるが表札は…ない。ここだと思うんだけど…インターホンを鳴らすしかないかと思い…そこに手を伸ばしていると男性の声が…
「どうかしたのかい?」
声を掛けてくれたのは俺が知っている顔だった。何故知っているのかというとゲームに登場したからだ。
門の中から声を掛けてくれたのは神楽坂優花の父親だったのだ。
***
あとがき
優花「豊和君キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
日和「お前…それよりもまず言う事あるだろ?」
凛「ま、まずは優花ちゃんのイベントに触れようよ?」
優花「そんなの触れたくないに決まってるでしょっ!」
日和「いや、まあ、気持ちは分かるけどよぅ…」
凛「…だ、だよね」
優花「とにかくお父さんとどんな話をしたのか気になるわね!ワクワク」
凛「…そうだね」
日和「口でワクワクなんて言ってる奴…初めて見たよ、アタシ…」
優花「うるさいわよ、日和!」
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