第14話寝惚けていた
「ほらっ、豊和君、起きて?」
そんな声が聞こえる。うっすら目を開けると…そこには神楽坂優花の姿。腰迄ある長いストレートのラベンダーピンクの髪。その髪が光のせいなのか、それとも艶があるせいなのか…とにかく輝いて見える。
んっ?俺は今…神楽坂優花のシナリオをプレイしてたんだっけ?駄目だ…なんだか思考が働かない…。
優花に向かって手をゆっくりと伸ばす…。
「なに?寝惚けてるの?」
すると、そう言いながら俺の手を掴んでくれる、優花。俺は咄嗟にそのまま優花を引き寄せ…
「―ちょっ!?」
―思わず抱き枕を抱えるみたいに抱き締めるとなんだか妙に温かく感じて心地いい…。
「…ふぇっ!?」
なんだか…素っ頓狂な声が聞こえた気がするが気の所為だろう…。俺の胸元辺りに優花の顔が添えられる形になり、鼻腔を擽る様に花の甘い香りが漂ってくる。
シャンプーの香りだろうか?最近のゲームは香り迄体験出来るだな…。
「すんすん…凄く…いい匂い…」
「ぴゃあっ!??そ、そんにゃに…か、嗅がにゃいでっ!?」
「…優花」
「…豊っ」
そのまま意識が遠くなり――
“―ガチャッ!”
「お兄ちゃ〜ん♪愛しの妹が起こしに…って、何やってんの、優花さんっ!?」
「ふぁっ!?
「お兄ちゃんから離れてよっ!優花さん!」
「私ぃ〜〜!?わ、私がしたくてしてるんじゃぁ…」
「お兄ちゃんはそんな事しないもん!」
「豊和君がっ!ね、寝惚けて―」
「とにかく離れてっ!」
「だから!私じゃなくて…」
何だっ!?物凄くうるさくて騒がしいんだがっ!?
「…何の…騒ぎ…?」
「あ、あんたはっ!と、とにかく離してぇっ!?」
♢
目が覚めるとビックリしたわ…。優花が抱きついているんだから…。
話を聞くとそれは俺が寝惚けていたみたいでそうなったらしい。まあ、優花がそんな事を俺にする訳ないしな…。昨日は高校入学一日目にして早くも早退して、色々としてたもんだから疲れが溜まってたのかも知れない。
とにかく起き上がり、顔を洗ってから食卓へ。家族みんなすでに勢揃いしている。今日は優花も居ていつもの席に着いている。俺は優花の隣の席に着いてから先程の事を謝る事に…。
「さっきは悪かったよ、寝惚けていたみたいで…」
「ほ、本当よっ!?ビックリしたんだからね?」
「―絶対に優花さんは役得だったと思ってるでしょっ?」
「しょ、しょんな事思わないわよっ!」
「…どうだか」
「芽依?優花はそんな事思わないぞ?」
芽依は優花に対してちょっと辛辣な所があるのが困ったものだ。困った事にちょっとだけブラコンの気があるんだよな…。まあ、世界一可愛い妹なので邪険にはしないんだけどな。
「芽依は優花ちゃんにおかしな事を言わない様にね?それとそろそろお兄ちゃんっ子から卒業しないとね?」
「えっ?しないけど?」
「そこはうんと言いなさいよ、全く…」
母さんが呆れながら芽依に言う。ずっとお兄ちゃんお兄ちゃん言って来てたからそれがなくなると思うと寂しく感じてしまうな。
「まあ、芽依は小さい頃からお兄ちゃんっ子だったからなぁ〜。急には無理なんじゃないか?」
「流石、お父さん!私を分かってるぅ〜〜」
「はぁ〜〜〜。優花ちゃん、芽依がごめんね?」
「い、いえ、気にしてないので…」
「じゃあ、時間もないし、とにかくみんな食事にしましょうか」
「「「「は〜い」」」」
今日はどうやらスクランブルエッグの様だ。それにベーコンにトースト、サラダが朝ご飯。
「うん。今日も美味しいよ、母さん」
俺はいつも料理の感想を伝える様にしている。作ってくれた人は言ってもらう方が嬉しいと思うんだよな。毎日料理作るのって大変だしな。
「ふふふ…そうっかぁ。美味しいってよ?優花ちゃん♪」
「えっ?優花が作ったの?」
「う、うん…ホントに…美味しい?」
そんな恐る恐る聞かなくても嘘は言わないぞ?
「うん。俺好みの味」
「っ!! そ、そっかぁ♪」
「良かったわね、優花ちゃん!」
「は、はい!」
「お母さんっ!?私にも料理教えてっ!!」
「あんた…今まで教えようとしても習わなかったじゃない」
「気が変わったの!」
まあ、頑張るのはいいことだと思いながら食事に舌鼓をうつ俺と父さんだった。
***
あとがき
芽依「私の出番が来たーっ!」
優花「はいはい、良かったわね」
芽依「私が真のヒロインよ!」
凛「芽依ちゃんは妹だよね!?」
芽依「ふふふ…妹こそ至宝なのですよ、凛ちゃん」
日和「私の出番はいつなんだっ!?」
芽依「えっ、誰、この人?」
優花「そっかぁ、芽依ちゃんは知らないんだよね」
凛「だね」
日和「おい、筆者!アタシの出番増やせっ!」
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