第13話神楽坂優花⑥

 男の子が倒れた後、額から血を流し倒れている子供は居るわ誘拐未遂は起きるわで、園内は一時騒然となったっと聞いた…。


 勿論大勢の警察官の人達に救急の人達もすぐにやって来たらしい。お父さんは警察の人達に事のなりまし等を説明していたみたい。男の子はすぐに担架で運ばれ、救急車に乗せられ病院へ。私とお母さんも一緒に向かった…。



 詳しい事はあまり覚えていない。覚えているのは男の子の手術が終わり目覚める迄に2日掛かった事…。そして男の子が倒れてから…目覚める迄の間傍に居られる時は傍に居続けた事位。



 ううん…。違うわね。もう一つしっかりと覚えている事がある。それは私にとって絶対に忘れられない事…


 だって…


「―優花っ!!?」


 あなたが目覚めて一番最初に口にした言葉は私の名前だったのだから……。




「わ、私はここだよ、君」


 私は豊和君に名前を呼ばれただけで顔が熱くなるのを感じた。どうして名前を知っているのかというと、豊和君の家族から色々聞いたから…。


「…んっ?あれ…?何で俺は…それに…神楽坂…優花が……何で???」


「―やあ、無事に目が覚めた様でなによりだ」 


「神楽坂優花の…お父さん…」


「今更だがお互い名前すら名乗って居なかったね?改めて…私は神楽坂悠介。知っているとは思うが優花の父親だ。私の事は優花パパでもおじさんでも、君の好きな呼び方で読んでくれ」


「では…悠介さんでいいですか?」


「ああ。構わないよ。そしてこっちが妻の麻美あさみ。まずは――」


「?」


「君が居なかったら優花がどうなっていたのか分からない…本当にありがとう」

「本当にありがとう豊和君。あなたのお陰で…娘が無事でした…」

「あ、ありがとう…豊和君」


 お父さんとお母さん、それに私は豊和君に対して頭を下げた。順々にお礼も述べる。豊和君は慌てて頭を上げる様に言ってる。


「と、とにかく頭をあげて下さい!お礼なんて…本当にいいんですよ。俺が優花さんを助けたかっただけなんで…それに…悠介さんが信じてくれなければそもそもの話、助けられなかったんで…」


「…礼はいくら言っても言い足りない位なのだが…恩人を困らせたくはないから…これ位にしておくとしよう…」


「そうして頂けると俺も楽です」


「…恩人に対して失礼な事を言うが、本当に5歳児かい?話し方といい、考え方といい…大人と喋っている気がするよ」


「あなた!?豊和君に対して失礼よ!?考え方等が大人っぽいだけですよ!」


「自分で言うのはなんですが、中身は大人、見た目は子供って感じかも…」


「私、そのアニメ知ってるよ!今、大人気だもんね!私が好きなキャラは―」


「優花。待ちなさい。豊和君と話したいのは分かっているがもう少しだけパパが時間を貰うよ?この後も色々とやらねばならん事があるからね」


「…ぶぅ〜〜〜」


「ほら、優花?この後、豊和君の体調が大丈夫なら話せばいいじゃない?」


「…うん」


「―さて…君には話しておいた方がいいと思うので伝えておくとしよう。優花を連れ去ろうとした輩、それを計画した者達は残らず捕まえたよ。君の言った通りだったよ」


「それは良かったです」


「まさか連中が選挙の最中にこんな事をしでかすとは流石に予想出来なかったよ」


「ですよね」


「そんな連中の魔の手から君は娘を…いや、私達家族を助けてくれたんだ。私に出来る事は何でもすると約束しよう。何でも言ってくれて構わない」


「…では…一つだけ良いですか?」


「何だい?」


「優花ちゃんの転校は可能でしょうか?」


「っ!? それは…いや…君にはまだ色々と視えていると捉えていいのかい?」


「はい。その方が俺も力になれると思うので…。でも、転校となると優花ちゃんの意思が「する!パパっ!私、転校するから!」…」


「では…家から捜すとしよう。麻美も構わないか?」


「勿論ですよ、あなた。優花もそれを望んでいますしね」


「ではすぐに手配しよう」


「あっ、すいません悠介さん。図々しいですがもう一つ良いですか!?」


「勿論構わないよ?転校の事は優花の事を思っての事だからね」


「悠介さんにいつでも連絡出来る手段が欲しいです」


「それもすぐに手配する。携帯を用意しよう。君のご両親には私がらうまく言っておくとしよう」


「ありがとうございます」


「いや、礼を言うのはコチラなんだがね…」


「パパっ!まだ!?」


「もう、優花は…」


「…それではそろそろ私は行くとしよう。携帯は今日にでも届けさせる。何かあったらすぐに連絡してくれ」


「ありがとうございます、悠介さん」


「豊和君!パパはいいから私とお話しよっ♪」



「はい」


 そしてお父さんは病室を後にした。私はこの後、いっぱい豊和君とお話して…それが楽しくて…。豊和君が眠っている時なんかは起こさないようにしながら静かに寝顔を見てたんだっけ…。







「あの時から…ううん…助けて貰ったあの瞬間から…私は…豊和君が大好きだよ」


 豊和君が眠っている時ならこんな風に素直に言えるんだけどな…。


「もう少し…見ていたいけど…そろそろ起こさないと…いけないわよね…」


 時間を見ると、学校に行く準備を始める時間になっている。


「ほらっ、豊和君、起きて?」 


 とりあえず寝顔を堪能出来たし、今日も1日頑張ろうとっ♪





***

あとがき


優花「自分で言うのはなんだけど乙女ってない!?」


凛「幼馴染の私の役目じゃないのっ!?」


優花「私だって幼馴染と言えるもん♪」


日和「まあ…そうだよな…」


凛「どっちの味方なの!?」


日和「どっちの味方でもないがっ!?」


凛「しょんなぁ〜〜〜」

 






 

 

 

 


  

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