第11話神楽坂優花④

「どうかしたのかい?」


「ここは優花ちゃんの家ですよね!?優花ちゃんは居ますかっ!?」


「そうだけど…優花なら出掛けているよ。約束でもしてたのかい?」


「いえ、約束は…」


 マズイ!?遅かったか…。早めに出てきた筈なのに…くそっ…!


 でも、話し掛けて来てくれたのが神楽坂優花の父親だったのは運が良いと俺は思った。うまく話をすれば車やらを出して貰えるよな?だが、同時に何と言えばいい?…とも思った。あなたの娘がこれから悲惨な目にあうから車を出してくれとでも言うつもりか!


 そんな話をいきなりして、信じてもらえる筈ないだろう!?それにあの周りの連中の中にも確か…。


 考えろ、考えるんだ!


 思考を巡らせているうちに周りの連中の一人が俺より先に口を開いた。


「後は私の方で話をしておきますので」


「…あ、ああ」


 マズイ!神楽坂優花の父親が行ってしまう。


「待って、優花ちゃんのお父さん!俺はあなたに優花ちゃんの事で二人っきりでしたいお話があるんです!」


 歩き出した父親が足を止めてくれた。周りの連中は神楽坂優花の父親を屋敷の中へ入る様に促していたのだが、周りの連中を制し、一人でコチラへ向かって来てくれた。


「…君は優花の…友達ではないよね?君を先程から見てたんだけど…優花と同じ位の歳のようだが、優花の通う学校で君の顔は見た事ないしね…私が知らないだけかも知れないが…」


「俺は…優花ちゃんとは同じ学校ではありません。会った事もないですし、優花ちゃんも当然俺の事は知らないでしょう…」


 俺は正直にそう言った。神楽坂優花の父親の俺を見る目を見て、嘘は通じないと思ったからだ。 


「…じゃあ、何故優花を知っているんだい?君は誰だい?それに優花の事とは?」


「…視えたからです!」 


「…何っ?」


「優花ちゃんが連れ去られる所が視えたからからです!連れ去る計画を立てたのはあなたのライバルの党の一人、金喰かねくいという名の議員。連れ去る場所は優花ちゃんが向かった遊園地。それを実行するのはあなたが雇った侍女です。その証拠にすでに優花ちゃん達に連絡がつかない筈です!警察にはまだ言う訳にはいかないんです!理由は金喰の息がかかっている者も居るからです!こうして二人っきりで話しているのもあなたの後ろの連中の中にも金喰の息がかかっている者が居るからです!」


 俺は真っ直ぐに神楽坂優花の父親の目を見ながら片時も逸らさずに言葉を伝えていく。そしてそんな俺の言葉にずっと耳を傾けてくれている…。


「どうか俺の言葉を信じて今すぐ俺も一緒に乗せて車を出してもらえませんかっ!いや、バイクがあるならそっちの方が早いのでバイクを出して下さい!こうして話してる時間も惜しいんです!お願いしますっ!お願いしますっ!」


 俺は最後に頭を下げる。信じてもらえないのなら走ってでも、ヒッチハイクでも何でもして遊園地に――


「…分かった。車、いやバイクを出そう」


「ホントですか!?」


「何事もなければただの笑い話で済む事だ。少し待っていてくれ。バイクを取ってくる。後ろの連中には君を送ってくると伝えておこう」


「はい!」







 バイクをかっ飛ばし遊園地に着いた俺と神楽坂優花の父親。バイクを降りてすぐに遊園地の入園口へ向かった。入園料は立て替えてもらい、パレードの事を受付のお兄さんに尋ねる。


「パレードはもう始まってる?」


「ええ。先程始まりましたよ」


 くそ、始まってたか!?


「場所はっ!?パレードが始まった場所は!?」


 入園時に貰った遊園地の地図を受付のお兄さんに広げ、場所を確認。


「ここですね!ここからパレードが始まってますので今は…っと、ここですね!」


 お兄さんが指差した場所は園内の中央に当たる場所の手前。そのままパレードが進むと園内中央に差し掛かってしまう。そしてその近くにはトイレのマークもある。


 ゲームでも攫われたのは園内中央と言っていたし、ここだ!間違いなくここのトイレが神楽坂優花の母親が優花と離れしまったトイレだ。俺は急ぎ伝える!


「ここです!時間がありません!」 


「分かった!先に行くっ!」


 そう言って駆け出す神楽坂さん。俺も後を追う。



 母親がトイレに行く前に父親が間にあってくれれば良いけど…間に合わなければ?連れ去ろうとしている犯人はどうした?優花を抱きかかえてパレードが向かう方向とは逆方向に向かったんだよな…?



 そこからはどうやって遊園地から姿を消したのかは語られていなかった。でも…その前に見つける事が出来れば――




 俺は走る方向を変えて、パレードが始まった場所から園の中央に向かう事にしたんだ。






 それが功を奏したのか、パレードを見ようと集まっている人達の中に何かを抱えている様な動きでパレードとは逆方向に向かっている女性を見つける事が出来たんだ。

 

 そして、その女性が優花を抱えているのが視界に入った瞬間――



「優花っ!!!」



 俺は女性に飛び掛かり優花を抱きかかえてる腕に噛み付いた…。





***

あとがき


優花「惚れたっ!もう惚れまくってるわ!一緒になれないなら私死んじゃうからね?」


日和「重いよ…気持ちが重いよ…」


凛「ヤンデレの気質もあるのかな?」


優花「知らないの?女は多少ヤンデレ気質の方が男性は喜ぶものなのよ?」


凛&日和「「初耳なんですけどっ!?」」


優花「雑誌に書いてあったもん」


日和「マジか…」


凛「男性によるんじゃ…」


優花「とにかく…私は豊和君が好き…きゃぁぁ〜〜〜言っちゃったぁ〜〜〜」


筆者「本人に言えよ」


優花「言える訳ないでしょっ!?」


 

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