第43話彼女は…

 水前寺水樹すいぜんじみずき。彼女はこのゲームのメインヒロインの一人だ。そして彼女の幼馴染こと本能寺幸ほんのうじこう。彼こそが俺が入学式で探していた人物──



「はぁっ!?女子っ!?嘘だろ!?」



 ──だったのだが入学式で見た彼の姿は女子。えっ…?彼じゃなく彼女!?どういう事っ!?女装癖でもある…?いやいや…そんなわけないよな…!?


「どうかしましたか、豊和様?」


「愛に大至急調べてもらいたい事があるんだけど…」


 困った時に非常に頼りになるのが愛だ。諜報活動やらなんやらもいつの間にかほとんどの事ができるようになっていたしな。使うようで申し訳ないんだがここは頼りにさせてもらいたい。


「なんでしょう?」


「三組の本能寺幸…さんについて調べてもらいたいんだ」


「承知しました。本能寺幸様ですね?しばしお待ちを」


「ちょっ!?待っ!?彼女の何を調べるか言ってない気がするんだが…」





 そして数分後──



「──調べてきました☆」


「早っ!?」


「早いのはレディの嗜みですので」


「どんな嗜みなんだよ…それ…」


「それで知りたかったのは彼女のスリーサイズでしょうか?上から申しますと70、6──」

「──いやちげぇよ!誰がそんな事調べて欲しいと言ったんだよ!?しかもどうやってそれを調べたんだよ!?」


「それは…」


「それは?」


「秘密です☆」


 ウインクするのは可愛いが明らかにそんな事するタイミングじゃないよね…?ま、まあ…いいけど…


「本能寺幸は女性か…?」


「何を当たり前の事を言ってるんです?」


「女装してたりとか…ない…?」


「ええ。ありませんよ。完全に女性ですけど。まさか私の諜報能力を疑ってます?」


「いや…愛を疑うわけじゃないんだけど…」


 本能寺幸の性別に目を疑ってしまったのはゲームをしていた者からすればあり得ない事だったからだ…。ゲームでは彼は男だったのだから。しかも幼馴染だけじゃなく、他のヒロインにも手を出すクズな男だったんだぜ…?



「じゃあ…彼女は…水前寺水樹…さんの幼馴染かどうか分かる?」


「分かりますよ。本能寺様と水前寺様は幼馴染です。後もう一方ひとかた風鳴風花かざなりふうか様という方もお二人の幼馴染のようですよ?」


 風鳴…風花…?ゲームには登場しなかった…よな?


「他に知りたい事はありますか?」


「い、いや…今は…ないかな」


「そうですか。もし彼女達に手を出されるのなら、まずはお姉ちゃんか私に手を出してからお願いします」


「出さねぇーわっ!?」




 

 そういった事があって…色々考えたりもした。本能寺幸って同姓同名が他に居るんじゃないか?とか俺が知らないコンテンツが俺が死んだ後に追加されたりしたのか?とか…それはもう色々と…。

 



 結局答えは出なかった…。



 





♢♢♢



 本来であれば今日、イベントが起こる。変なイチャモンをつける男達に水前寺水樹が学校の帰り道に絡まれるイベント。そこに偶然通り掛かる彼女の幼馴染の本能寺幸。ゲームではその時選択肢が当然表示される。そしてその時の選択肢によって水前寺水樹が誰に襲われるのかが決まわけだ。


 その際の選択肢は二つ。

【助ける】

【見捨てる】


 助けるを選んだ場合は好きだから助けたと本能寺幸が水前寺水樹に告げるんだ。でも水前寺水樹は本能寺幸をただの幼馴染としか見れない。それに好きな人がいるからと告げる。んで、それを認められない本能寺幸が逆上とでも言うのだろうか?とにかく水前寺水樹を力尽くで犯す展開。


 見捨てるを選んだ場合は男達に次々に休む間もなく犯され…といった展開になる。


 どっちの展開を選んでもエロシーン突入というわけだな…。

 



 とにかくだ。そういった展開を阻止する為…本能寺が女の時点でどうなるのかは分からないが学校が終わると同時に俺は彼女達のクラスへと急ぎ足を運び──



「──はぁっ!?帰った!?」


「うん。うちのクラス何でか早く終わったしね」


 水前寺さんと風鳴さんはすでに帰った後。


「じゃ、じゃあ本能寺さんは…?」


「本能寺さん?彼女は…」

「幸?幸も荷物ないから帰ったんじゃない…?」


 その子とは別のクラスメイトがそう教えてくれた。俺は教えてくれた礼を言って、急ぎ彼女達を追う事に…。





♢♢♢




 ──そして…水前寺達の元へ駆けつけた時…




 視界に捉えたのは…



「早く立てや!また殴っ──へぶっ!?」



 

 お腹を押さえうずくまっている女子生徒の腕を掴み、無理矢理立たせようとしていたイカツイ男…。


 それにイカツイ男達に囲まれている水前寺さんと女子生徒。


 一目瞭然でどういった状況なのかは分かる。



 そこまで認識した俺は、考えるのは後回しとばかりにイカツイ男達を地面に沈めていく。イカツイだけで手応えはなかった。まあ、影から愛がゴム弾で狙撃していたから楽なものだ…。


 それにしても愛はいつの間にそんなものまで用意していたんだろうな…。ま、まあ、愛だからで今回も済まわせてもらおうかな…。そんな事を考えながら男達を縛り付け、愛に合図を送る。すぐに悠介さんの関係者が来てくれる事だろう。


 そして…うずくまる女子生徒は本能寺幸…さんだとすぐに分かった。そんな本能寺さんを心配そうに寄り添っている水前寺さん達。


 そんな三人の様子を見ると仲はいいんだろうと思える。ゲームでの本能寺幸とは別人なんだろう…。



 とにかくそんな三人に「大丈夫?」と、声を掛け──


 

「──って、キュンやない!?惚れてまうやろが!?って、俺はだぞ!?ないないない!ふざけんなっ!いっつぅ~…」



 本能寺さんが意味が分からない事を唐突に叫んだ。これには戸惑うしかない。


「幸は何言ってんの?」


 彼女は風鳴さんだったかな?俺も風鳴さんの言う通りだと思った。


「幸…もしかして頭も殴られた…?」


 水前寺さんの言う通りそれもそう思う。でもどうやら頭は殴られていないようだ。



「じゃあなんで…また自分の事男とか言ってんのよ…。まさかまたが発症したの…?」

「だからウチはゲームほどほどにした方がいいって…」

「お前等好き勝手言い過ぎ!」



 待て…風鳴さんは何と言った…?自分の事を男とか言っている…?


 普通なら厨二病とかそういう言葉で済ませられるかも知れない。性同一性障害とかもあるかも知れない…。ただなんとなくなんとも言いようがない気持ちが俺の中に生まれた。



 それはある一つの仮定へと繋がり…




 もしかして本能寺さんは…俺と同じ転生者なのか…?





 そう思えたんだ。






 ただ…今は…



 



「えっ…と…。とりあえず三人とも大丈夫…?あの男達は気にしないで大丈夫だから。もうすぐ警察の人達が来るからさあ」




 まずは本能寺さんを病院に連れて行かないとな。






 



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