第18話歌羽天音①
私は小さい頃からアイドルになるのが夢だった。テレビ等で歌って踊って輝いているアイドルの人達を観る度に私もああいう風になりたいと心からそう思っていた。 幼い頃からピアノに踊りに歌のレッスン。勿論勉学も疎かにはせずに上位をキープした。
自分磨きも勿論忘れない。美容に良いことや食べる物にまで気を遣った。その甲斐あってか小学生高学年の時にオーディションを受けて見事合格。大手の芸能事務所に所属する事が出来た。
どんなに小さな仕事でも喜んで楽しみながら確実に堅実に一つずつこなしていく。そのうちにドラマへの出演の話が私の元へやってくる。しかも主演だというお話。より飛躍する大きなチャンスだと思えた。
毎日台本を読みながら演技の練習──
でも…私が小学校六年生の時に所属する芸能事務所の不祥事が発覚した。所属するアイドルを議員に献上していた事が公になった…。当然それは世間を賑わせる事になって、ドラマの話は一度流れる事になったの。
事務所が無くなりどうしようと途方に暮れそうになってたんだけど、また一から…オーディションからやり直そうと思いなおした。だってアイドルになる事はずっと夢だったし、まだ夢の途中だからこんなところで立ち止まれない。
とにかく習えることできることを頑張ってやっている時に…そんな矢先に今の芸能事務所から声を頂いたんだよね。それが中学生になってしばらくしてからの出来事だ。
「はじめまして、歌羽さん。私はホロホロプロダクションの
「ホロホロプロダクション?」
聞いた事がない芸能事務所の名前だ…。
「うちはまだ設立されたばかりなので聞いた事ないですよね?私はそこでスカウトする職に就かせてもらってます。単刀直入に言わせて下さい。歌羽さんに是非うちの事務所に所属してもらいたいのです」
「そうなんですね。私を…」
「はい。私達の事務所は設立されたばかりですし、大手の芸能事務所であんな不祥事もあったばかりですし、その事務所に所属なされていたので、おいそれとは返答をいただけないのは重々承知しております」
設立されたばかりの事務所…。そこが少し気になったのを覚えてる。失礼だけど設立されたばかりって大丈夫なんだろうかと気になってしまったんだよね。
「ただ…」
「…ただ?」
「うちに所属して頂けるのなら、もう仕事は決まっておりまして…」
「えっ?もう決まってる?」
「はい、そうです!一番最初の仕事の依頼としてドラマに出演してもらう事になっております。しかも主演です」
「ドラマにっ!?しかも…主演…!?」
急にそんな話をされてちょっとばかり…内心詐欺なんじゃあないかと疑ったのも仕方ないよね?
「その主演してもらう予定のドラマは元々歌羽さんが出演予定だったあのドラマになります」
「はっ?えっ?ほ、ホントにっ!?」
「ええ。しっかりと契約書もありますし、ドラマと同時に歌手デビューもお約束します。このデモテープを聴いてみてください。これがあなたのデビュー曲になる予定の曲になります」
私は渡された音楽再生機器を手に取り、イヤホンを耳にあてる。スイッチを押して再生すると音楽が流れ始め──
「っ!?」
それは今まで聴いた事がない音楽。歌っているのは誰だか分からない。歌声は合成されていていわゆるボカロみたいな感じ…。
でも…
こ、こんな素晴らしい歌を本当に私が歌えるのっ!?
「こ、この歌というか曲は…誰が作ったの?あっ、すいません!失礼しました!こ、この歌は誰が作ったんでしょうか?」
「ああ、作ったのはうちの社長ですね。それは差し上げるように言われておりますので、帰ってからでもまた聞いていただいて、返事が決まりましたら─」
「ま、待って下さい!返事は今させて下さいっ!今します!どうかっ、私をそちらの事務所に入れて下さい!」
「えっ…と…あの…私が言うのもなんですけど…よ、宜しいのですか?返事は今すぐではなくても私どもは歌羽さんをお待ちしていますよ?」
「いえ、お願いします!私はもう決めました。逆に今決めなかったら後悔してしまいます!」
「…分かりました。ありがとうございます!決して後悔はさせません」
「はい!」
そうして今の事務所に入った私の初の仕事は一度流れてしまったあのドラマへの出演と歌手活動だった。お話でもあった通り本当に主演で、しかもドラマは人気の月九の枠だった。月九といえば人気のドラマが数多くあり、視聴者に観てもらえる時間帯でも有名なんだよね。
そんな大事な時間のドラマを任されたの。
私は演技指導を受けながら、役を熱演。ドラマは高視聴率を叩き出し、ドラマのアカデミー賞の主演女優賞を頂き、一躍時の人になる事になった。
「同情するなら愛をくれっ!」
ドラマで私が言ったこの台詞は流行語大賞にも選ばれた。そして、ドラマの主題歌を歌うのも私。勿論曲はあの素晴らしい歌。私のデビュー曲でもあるその歌はトリプルミリオンを達成。
私はナンバーワンアイドルと呼ばれる様になった…。
自分ではまだまだだと思っているんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます