第19話歌羽天音④

「アタシは初夏日和、宜しくっ!名前は好きに呼んでちょっ」


 自己紹介を終えた後、何だか分からない感情を内に秘めたまま、私は先生に言われた席へと着く事に。すると隣の席の初夏さんという女の子が声を掛けてくれた。


「うん。宜しくね、初夏さん♪私の事も好きに呼んでいいからね?」


「じゃあ…歌羽っちで☆」


「じゃあ…授業始めんぞ〜。歌羽は今日は初夏から教科書は見せてもらってくれ。教科書5ページ目から――」


 先生が言うと同時にどうぞ〜と、言いながら初夏さんが机を寄せ、教科書を見せてくれた。私はお礼を言って授業に集中する。






 ――授業が終わり休み時間になると沢山の人が私を一目見ようと…まあ、主に集まっているのは男の子達なんだけど…



「うほーっ!モノホンのアイドルだ」

「転校してきたって本当だったんだな」

「うはぁ〜〜〜 超可愛いじゃん」

「本当に同じ人間かよ!?」

「一発アイドルとやりてぇ〜よなぁ〜」

「マジでそれな!」

「俺のテクニックで骨抜きにしてやんのに」

「お前にそんなテクニックねぇだろ?」


「「「「「ぎゃははははっ!!!」」」」」



 ―と、いった感じで、教室前の廊下が騒がしくなっていた。お花摘みに初夏さんと行こうとしてたんだけど…行けないよね…。そんな事を思っていると廊下に響く声…。


「ほらほら!散れっ!気持ちは分からんでもないが、歌羽は見世物じゃないんだぞっ!さあ、早く各自教室へ戻らんかっ!」

 

「うげっ…」

立物たつものかよっ」

「はぁ〜 仕方ねぇか…」

「もう少し目の保養を…」

「…やな奴が来ちまったな…」


「二度は言わんぞっ!!」 


「「「「「へ〜〜〜い…」」」」」


 ジャージを着た体格がガッチリとした大人の男性が注意してくれたお陰で廊下に集まった生徒が不満をあげながらも自分達の教室へと戻って行く。


 初夏さんに聞くとジャージを着た大人の男性は体育担当の立物先生との事。ちなみに初夏さんはマッスルと呼んでいる。確かにと、私も思ってしまった。


 そんな立物先生と偶然にも視線が合ったのでありがとうございましたの意味を込めて頭を下げる。立物先生は気にするなと言わんばかりに手を挙げ立ち去って行った。今度話す機会があれば直接お礼を言わないとね…。


 ―って…そんな場合じゃなかった!?次の授業が始まっちゃう!?


「歌羽っち!今のうちにお花摘み行くよっ!」  


「うん。ごめんね、私のせいで」


「気にしない気にしない!歌羽っちのせいじゃないから!」


 私は初夏さんとともに慌ててお花摘みに向かい、用を済ませてから教室へと戻った。






 一限目が終わった後、騒がしくなった時はどうなるかと思ったものの、それ以降は大きな問題はなく一日目の授業を無事全て終える事が出来た。


「歌羽っち!また明日ね!」


「うん、また明日ね!」


 帰りの支度を終え、初夏さんと少し話をしてから別れの挨拶。初夏さんとは今日一日でだいぶ仲良くなれたと思う。私のこの高校での初めてのお友達…。帰る方向が違うので今日はこのままお別れ。今度遊びに行く約束もしている。


 そして…ふと…チラっと社長の方に視線を向けると…すでにその姿はなく…少し残念に思ってしまう。


(…少し位お話してみたかったな…でも、同じクラスなんだし…これから話す機会はいくらでもあるよね?)


 そんな事を思いながら教室を出ると、


「おっ!良かった〜〜ぁ!まだ帰って居なかったか、歌羽」


「あっ…えっと…立物先生ですよね?」


「ああ、あってる。担当は体育だ。これから宜しくな」


「はい、宜しくお願いします。それと、改めて朝はありがとうございました」


「ああ。そんな事は気にしなくていい。あれは先生として当然の事だ。そうだっ!そんな事よりもこの学校のジャージはどうした?体操服等はもう買ったか?」

 

「いえ、まだです。元々通う所だった高校の物が使えると聞いていたので」


「ああ、それもいいんだが…とりあえず時間はあるか?それともこの後仕事か?」


「いえ、今日はオフなので」


「じゃあ、先生に付いて来てくれ!歌羽を待ってる先生が居るんだ」


「えっと…はい、分かりました」



 先生に従い、先生の後ろに付いて行く…。階段を登り、四階にある視聴覚室の前で立物先生が足を止める。視聴覚室に何の用事があるのだろうと内心思っていると…


「この視聴覚室の中で女性の体育の先生が歌羽を待っているんだよ。なんでもこの学校を卒業して行った先輩達の新品のそれらがあるらしくてな…。で、それを試着させたいそうだ。流石に俺が入る訳にはいかんからな。後は中の先生の指示に従ってくれ」


「あ、はい」


 先生がドアを開いてくれたので私は女性の先生を待たせてはいけないと思い…何の疑いもなく視聴覚室へと足を踏み入れた。


「失礼します。歌羽で…きゃあっ!」


 視聴覚室に足を踏み入れた途端、背中にドン!っと、衝撃を受け…私は視聴覚室の床へと倒れ込んでしまった。何が起きたのか分からないけど、それを確かめる為に慌てて体を起こそうして――



“カチャッ――”



 鍵が閉まる様な…そんな音を耳にした…。







***

あとがき


優花「ちょっ!?不穏な所で…一番いいところで終わってるじゃないのっ!?」


凛「これ…背中押したのってやっぱり…」


日和「マッスルしか居ないっしょっ…それにしても…」


優花「?」


日和「ようやくアタシの出番が来たーーっ」


芽依「出番が来たって言ってるけど…来てなくない?」


愛「流石ですね、芽依ちゃん☆いいツッコミですね」


優花「それは…私も思ったけど…」


日和「みんな辛辣過ぎでしょっ!?」


凛「そんな事より天音ちゃんの身が…」



 そんな訳で、いつものお願いになりますが評価や応援何卒宜しくお願いします🙇私にとって物凄く重大な事なんですよね!モチベーションもそうですし、励みになりますので!

どうかまだの方は宜しくお願いしますね!

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