第21話歌羽天音④
「アタシは初夏日和、宜しくっ!名前は好きに呼んでちょっ!」
転校して自己紹介を終えた後、私は豊和君と同じクラスだったのが分かって、それを嬉しく思いながら先生に言われた席へと着く事に。すると席に着くと同時に隣の席の初夏さんという女の子が声を掛けてくれた。
「うん。宜しくね、初夏さん♪私の事も好きに呼んでいいからね?」
「じゃあ…歌羽っちで☆」
「じゃあ…授業始めんぞ~。歌羽は今日は初夏から教科書を見せてもらってくれ。教科書5ページ目から──」
先生が言うと同時にどうぞ~と、言いながら初夏さんが机を寄せ、教科書を見せてくれた。私はお礼を言って授業に集中する。
♢
授業が終わり休み時間になると沢山の人が私を一目見ようと…まあ、主に集まっているのは男の子達なんだけどね…
「うほーっ!モノホンのアイドルだ」
「転校してきたって本当だったんだな?」
「うはぁ~~~ 超可愛いじゃん♪」
「本当に同じ人間かよ!?」
「一発アイドルとやりてぇ~よなぁ~」
「マジでそれな!」
「俺のテクニックで骨抜きにしてやんのに」 「お前にそんなテクニックねぇだろ?」
「「「「「ぎゃははははっ!!!」」」」」
──と、いった感じで、教室前の廊下が騒がしくなっていた。お花摘みに初夏さんと行こうとしてたんだけど…行けないよね…?そんな事を思っていると廊下に野太い男性の声が響いた…。
「ほらほら!散れっ!気持ちは分からんでもないが、歌羽は見世物じゃないんだぞっ?さあ、早く各自教室へ戻らんかっ!」
「うげっ…」
「
「はぁ~ 仕方ねぇか…」
「もう少し目の保養をしたかったのに…」
「俺…あいつ苦手…」
「…やな奴が来ちまったな…」
「おい?二度は言わんぞっ!!」
「「「「「へ~~~い」」」」」
ジャージを着た体格がガッチリとした大人の男性が注意してくれたお陰で廊下に集まった生徒は不満をあげながらも自分達の教室へと戻って行く。 初夏さんに聞くとジャージを着た大人の男性は体育担当の立物先生との事。ちなみに初夏さんはマッスルと呼んでいる。
確かに…と、私も思ってしまった。 そんな立物先生と偶然にも視線が合ったのでありがとうございましたの意味を込めて頭を下げる。立物先生は気にするなと言わんばかりに手を挙げ立ち去って行った。
今度話す機会があれば直接お礼を言わないとね…。 ──って…そんな場合じゃなかった!?次の授業が始まっちゃう!?
「う、歌羽っち!今のうちにお花摘み行くよっ!」
「うん。ごめんね?私のせいで…」
「気にしない気にしない!歌羽っちのせいじゃないんだから!」
私は初夏さんとともに慌ててお花摘みに向かい、用を済ませてから教室へと戻った。
♢
一限目が終わった後、騒がしくなった時はどうなるかと思ったものの、それ以降は大きな問題はなく一日目の授業は無事に全て終える事が出来た。ただ…気になるのは昼休みの事だ。初夏さんが豊和君を連れてどっかに消えちゃったんだよね…。もしかして付き合って…たりするのかな?
「歌羽っち!また明日ね!」
「あ、うん、また明日ね!」
聞きたかったんだけど聞けなかった。帰りの支度を終え、初夏さんと少しだけ話をしてから別れの挨拶。初夏さんとは今日一日でだいぶ仲良くなれたとは思う。私のこの高校での初めてのお友達…。帰る方向が違うので今日はこのままお別れ。今度遊びに行こうとも約束している。だけど…豊和君と付き合ってたらどうしようとか考えてしまう自分がいる。
そして…ふと豊和君の方に視線を向けてみるけど…すでにその姿はなく、残念に思ってしまう。
(…少し位お話してみたかったな…でも、同じクラスなんだし…これから話す機会はいくらでもあるよね?もしかして…初夏さんと帰ったんじゃあ…)
そんな事を思いながら教室を出ると、
「おっ!良かった~~ぁ!まだ帰って居なかったか!歌羽」
「あっ…えっと…立物先生ですよね?」
「ああ、あってるぞ。担当は体育だ。これから宜しくな?」
「はい、宜しくお願いします。それと、改めて朝はありがとうございました」
「ああ。そんな事は気にしなくていい。あれは先生として当然の事だ。そうだっ!そんな事よりもこの学校のジャージはどうした?体操服等はもう買ったか?」
「いえ、まだですけど…。元々通う所だった高校の物が使えると聞いていたのでそのまま使おうかと思っています」
「ああ、それでもいいんだが…とりあえず時間はあるか?それともこの後仕事だったりするか?」
「いえ、今日はオフなので」
「じゃあ、先生に付いて来てくれないか?歌羽を待ってる先生が居るんだよ。待ってるのは女性の先生だ」
「えっと…はい、分かりました」
先生に従い、先生の後ろに付いて行く…。階段を登り、四階にある視聴覚室の前で立物先生が足を止める。視聴覚室に何の用事があるのだろうと内心思っていると…
「この視聴覚室の中で女性の体育の先生が歌羽を待っているんだよ。なんでもこの学校を卒業して行った先輩達の新品のジャージとかがあるらしくてな…?で、それを試着させたいそうだ。流石に俺が入る訳にはいかんからな。後は中の先生の指示に従ってくれるか?」
「あ、はい」
先生がドアを開いてくれたので私は女性の先生を待たせてはいけないと思い…何の疑いもなく視聴覚室へと足を踏み入れた。
「失礼します。歌羽で…きゃあっ!?」
視聴覚室に足を踏み入れた途端、背中にドン!っと、衝撃を受けた私は視聴覚室の床へと勢よく倒れ込んでしまった。
何が起きたのか分からないけど、それを確かめる為に慌てて体を起こそうして──
“カチャッ──”
鍵が閉まる様なそんな音を耳にするとともに何故だかイヤな予感を感じたの…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます