第22話歌羽天音⑤

“カチャッ──”


 鍵が閉まる様な…そんな音を耳にした…。 うつ伏せ状態に倒れていた私は手をつき、上体を起こして立ち上がり──


「痛っ…」


 ──ろうとして…痛みが走った。どうやら倒れる際に右足首を捻ってしまったんだと思う…。立ち上がる事が出来なかった為に体を反転させ、お尻を地面につけ座り込んだ様な状態で、私は視聴覚室の入口に視線を向けた…。


「お前は馬鹿だなぁ…こんなに簡単に先生のモノになってくれるなんてなぁ…なあ、歌羽?」


 視線を向けた先にはニヤニヤとイヤな笑みを浮かべながら…私を見下ろしてそんな事を言ってくる立物先生の姿が…。



「せ、せんせっ…?」


「くくっ…まだ分からないのか?お前は先生に騙されたんだぞ?」


「…えっ?」


「ここで女性の体育の先生が歌羽を待っていると言ったが嘘に決まってるだろ?ましてや卒業して行ったこの学校の先輩達の新品の服なんて常識的に考えてある訳ないだろう?ホント…先生が思った通りだったよ。お前は素直で世間知らずな馬鹿な子供だとな」


「な、何で…そんな嘘をっ…!?」


「はぁ~!?まだ分かんないのか、歌羽は?」


「…わ、分かるわけありません…」


「こんな状況になっているというのにどんだけ頭の中がお花畑なんだお前は?まあ、いいか。そういうところも清純派アイドルと言われる由縁か…?いいか、歌羽ぇ?子供の作り方は流石に分かるよな?保健体育でも習っただろ?」


「っ…!?そ、そんなの……せ、先生…まさか…」


「おっ?流石にそこまで言えば分かるか?お前が思っている通りだぞ?お前は今から俺と子供を作る行為をするんだぞ?セックスだセックス!さっきはお前の事を子供と言ったが体はもう大人と大差ないだろうからな」


「そ、そんな事っ…そういう事は…心から愛する人と…」


「…先生はそういう愛とかはいらないぞ?体だけで十分だろう?」


「ど、どうしてっ…」


「どうしてって…そんなの決まってるだろ?アイドルとヤれるチャンスなんてないからに決まってるだろーが!お前がこの学校に転校してくると聞いた時から俺は計画してたんだ!そんなに愛する人とセックスしたいと言うのなら先生といっぱいセックスして、歌羽が先生の子供を授かればいいだけだろう?まあ、認知はしないがな?ハッハッハッ…」


 先生が高らかに笑いながらジャージの上を脱ぎ捨てた。流れる様な仕草でガバッっとシャツをも脱ぎ捨てていく…。 そのまま先生は上半身裸になるとゆっくりとこちらへと近付いて来る。


 私は視聴覚室に並ぶ机と机の間を左足と両手を使い、這いずりながら必死に後退して先生との距離をとる…


 …とろうとする。


「こ、来ないで下さいっ!誰かぁーっ!誰か助けてぇーっ!!!」


「無駄だぞ?歌羽。ここがどこだか分かってんのか?視聴覚室だぞ?この学校のここは特に防音設備が整っているんだぞ?知らなかったのか?まあ、知らないわな。だからどんなに叫んでも誰にも聞こえないぞ?」


「…せ…んせっ…お、お願いですから…来ないで…来ないで下さい…」




“トン”。



 ──と、背中に硬い感触が当たる…。か、壁っ!?そんなぁっ… 絶望が私を静かに包み込んでいく…。



「そこまでかな?さあ、もういいだろ?な~に 大丈夫だぞ、歌羽。初めてなんだろ?初めての男の味は痛いだろーが…な~にすぐに慣れるからな?先生と何回もしているうちに先生無しでは生きられない身体に仕込んでやるさ?なっ、あ・ま・ねっ?」


 先生がジャージの下を脱ぎ下ろそうとしていたので私は何も見たくなくて目をギュッと瞑り、心の底からの嫌悪を吐き出した…。


「いやぁ──────────っ!!誰かっ誰かぁぁあぁぁ────────!!」


 先生はそんな私の反応を見て…私の声を聞いて…それを楽しむかの様に笑い声をあげる…


 どんどんその息遣いが…気配が…私に近付いて来るのが目を瞑っていても分かる…分かってしまう…


 誰かっ………助けて…… そんな願いも虚しく…



 私は床へと押し倒されて……何とか逃れようとして必死に手で先生を押し返しながら抵抗する……。


「大人しくしろっ!嗚呼、くそっ!いい加減諦めろ!無駄な抵抗すんなって!?素直に先生を受け入れた方がお前の為だぞっ!!ほら、キス、キスしよう!先生とキスしよう!」


「…いやぁ……嫌ですっ…止めてっ…」


「嗚呼、くそっ!なら、いいか。優しく前戯からしてやろうと思ったが…仕方ないよな?」


 スカートをまくしあげられ…


「うほっ~!純白のパンティかっ!?うおっ!暴れるなって言ってんだろうがっ!いい加減にしないと殴るぞっ!」


 その言葉に恐怖を感じた私は…涙が溢れ出した。次から次に涙があふれて…


 涙を拭いながら懇願するも…


 先生は辞めてくれそうにない…それを悟った瞬間もう無理だと私は諦めてしまった…


「ぐすっ…ぅっ…ぐすっ…ぐすっ…」


「そうだ。それでいい。少しだけ大人しくしていろ?すぐに終わらせてやるからな?」




 そして……とうとう…私のショーツへと先生の手が伸びていき………





 ショーツに先生の手がかかってしまった…。




『…豊和…君…』



 

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