第2話初夏日和①

 一言で言うと私は寂しかったんだと思う。


  両親にもっと…私を見て欲しかったんだと思う。   


 私にもっと構ってほしかった…。





 両親は仕事で忙しく、家にもあまり帰って来ない。 だから…まずは見た目を変えてみた…。 見た目を変えたその夜、久し振りに両親が家に帰って来た。久し振りにこうして顔を合わせたというのに、私のその姿を目にしても特に何も言われなかった。それどころか会話すら殆どなかった。


 こちらから話し掛けてみても…


「今は忙しいから──」


「──また後で聞いてあげるから…ねっ?」

 

「電話だ。静かにしていてくれ──」


 まるで意味がない…。パパもママも私には興味がないのだろう。


「なんで私を生んだの?」


 そんな疑問がよぎる。そのうち私から話し掛ける事も少なくなっていった…。私はそんな寂しさやイライラする事が多くなり、悪い友達とツルんでいるようになった。その影響で変わったのは見た目だけじゃない。口調もだ。口調もどんどん荒く変わっていったんだ…。


「…うちのクソッタレの両親は入学式にも来てくれてねぇーしよぉっ」


 金さえ払って置けばいいと思っているのだろうな。高校に娘が入学するっていうのにその晴れ姿も見に来やしねぇ……。


「そういやぁ…中学の時の授業参観も卒業式も来なかったっけっ……クソがっ…」


 中学の卒業式にさえ来なかった両親が高校の入学式に来るわけなんてないよな?中学の時に弁当がいる時もアタシは一人だけコンビニ飯だったしっ…


 分かっていた事だろ?分かっていた事を今更期待するなんて…   



「けっ…アタシもどうかしてるな…」




 入学式を終えた後はコンビニへと足を運ぶ…。本でも立ち読みして暇な時間を潰そうとして──


「チッ!クソッタレがっ…面白そうな雑誌は全てテープしてやがるときたもんだ…」



 テープしてない本を手に取って読んでみるが…


「…おもんなっ!?だからテープしてないのかっ!?クソっ!辞めや辞めやっ!立ち読みなんてしょうもないっ…何か他に面白い事か時間を潰すような事はないのかよっ!」


 仕方なくお菓子でも買って食おうかとお菓子が置いてあるコーナーへと赴く…。


 その時ふと…レジのオッサンが何故か視界にやけに入ったんだ。オッサンは一人で忙しく揚げ物を揚げたりしているみたいで奥へ行ったり来たりしている…。


 そしてアタシはこう思ってしまった。客は…アタシ一人じゃん…と。


 そこからのアタシは凄く馬鹿だった。小さなお菓子を手に取ると、オッサンの様子を窺いながら、オッサンが奥へと引っ込んだタイミングで持っていた小さなお菓子を素早くバックの中へと入れたんだ…。


 そして…ゆっくりとその場を離れ…店の入口へと歩き出す…。そして…ウィーンとゆっくり入口の自動ドアが開くのを確認して外へと出た瞬間にアタシは駆け出したんだ。


 無我夢中で走った…。


“ドクンドクンドクンドクンドクン──”


 心臓の音がアタシの中で高らかに響く。走ってるからではない…。いつまで経っても心臓の音が鳴り止まないのだ…。当たり前だろう。万引きをしたのだから…。アタシは犯罪を犯してしまったのだろ。




 な…何で…アタシは…こんな事を…やってしまったんだろう…。



 走りながらそんな疑問が浮かんでくる…。


 走って…



 走って…




 走って…




 …ふと足を止める。


 


「嘘だ…」



 足を止めた瞬間湧き出た言葉…。



 そんな事をしてしまった本当の理由を…




「アタシは…分かってるだろ…?」


 


 あの時…思ってしまったんだ…。



 それが馬鹿な事なのは…やってはいけなかった事は分かってる。それが犯罪だという事は分かってるんだっ…!!


  でも…でも…万引きすれば捕まって…捕まったら間違いなく両親に連絡がいく…。いくはずだ。アタシは未成年だし…。


 そうなったら…流石に両親も来てくれるなどと馬鹿な事をあの時思ってしまったせいだ…。



「馬鹿だよ…アタシ…」



 アタシは鞄の中から盗った物を取り出し地面に投げつけ捨てた。そして…自宅へと駆け出した…。



 アタシは知らない。普通は知っているだろ?気がつく筈だろ?


 防犯カメラの存在に…。




 そして…この事があんな事になるなんて…この時のアタシは全く思ってもいなかった…。





♢♢♢

~???視点~



「くは~~~っ!マジかっ!?防犯カメラもあるっていうのに…今時本当に万引きなんてアホな事やる奴は居るもんなんだなぁ~~~。テレビでよくその瞬間とか言って放送されてっけどよぅ…まさかこうして俺が見ている時にやるなんて…ご愁傷ってヤツだな…はははっ…」



 モニターから目を離し、席を立つ。



「さて…この事を早くお偉いさんに言ってっと…」



 ふと歩み出そうとした足が止まる…



「…お偉いさんに言ってどうなる?あのおっさんに褒められて嬉しいか?報告したらあのおっさんは金をくれるか?そんな柄か?万引きを見つけたからって毎月の給料を上げてくれるか?」



「そんな訳…ないよなぁ~」




「そういやぁ…ペロッ…アイツの着てた制服どっかで見たよな…?」



「どこだったっけっ…?  そうだっ!!」




「確かあの制服ってあの有名なイイトコの高校の制服だったよな? 」





「それに高校生の癖に良い胸してたよな…。くくくっ…ありゃあ昔抱いた女よりも下手したらあるんじゃねぇか?ボイ~ンボイ~ンってな…」





「くはっ…そうだ!イイこと思いついたぜ☆これをネタにあの女を脅して…くはぁ~~~堪らんな…妄想しただけでもあのでっかい胸は揉み心地良さそうだったし、顔も悪くなかったし、体も抱き心地も良さそうだったよな…くぅぅ~~~~~~」





「そうと決まれば…ああして…こうしたら…。くはぁ~~~☆俺って完璧☆」







♢♢♢


※この物語はフィクションです、万引きは犯罪ですので絶対にされないようにお願いします!筆者からのお願いでした!





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