第25話唐突な呼び出し

 天音のイベントが終わった翌日の朝の事だ。教師が逮捕された事を受け、昨日のうちに学校は三日間の臨時休校になる事が決まった。土日を合わせると計五日間の休みになった。ベッドに横になりゴロゴロしていると─



“PURuuRuuRuu…PURuuRuuRuu…”



 俺の携帯が電話の着信を伝えて来る。画面を見ると電話をしてきたのは優花だった。通話のマークをタップし、電話に出ると──


「もしもしどうした?」


『…………』


「…優花?」


 画面を一度確認すると通話中にはなっている。なんだ…何か胸騒ぎがする…。


『…助け…て…』


 助けてって言ったよな!?聞き間違いじゃあないよな!?


「優花今どこだっ!?何があった!?」


『…じ、自宅の…庭にきて…』


 自宅の庭!?


「すぐ行くっ!」


 優花の家は俺の家から近い。以前は別の県という事で遠かったんだけど今は自宅を出て、隣の隣が優花の家にあたる。 俺は家を裸足で飛び出すと急いで優花の家へと向かった。 優花の家に到着すると同時に素早く門を開け、庭の中を必死に探して回った。


「優花ぁっ!!どこだ!優花ぁーっ!」








『…こ、ここに居るわ!?』



 結論から言えば優花は無事だった…。優花の身に危険が迫ったわけではなかった。いや…危険なのか…?た、助けを呼ぶくらいだしな…。ただ…とりあえず俺はホッっと胸を撫で下ろす事ができた…。


『豊和君?そこに居るのよね!?居るんでしょっ?その…早く助けてよっ!?』


 優花の声が若干曇って聞こえる。顔は見えないからだ…。


「…居るけど。一つだけいいか?そんな所で壁に埋まるような体勢で何してんの優花は?」


 ついでに言えば優花の上半身も見えない。言葉通り埋まっているからだ。


『み、見て分かるでしょっ!?』


「…いや、分からないから聞いてるんだけどっ!?どうしてそうなった?助けてって電話があって俺がどれだけ優花の事を心配したと思っているんだよ?」


『っ!? し、心配してくれたんだ…』


「そりゃあ当然するだろ?」


『ふ…ふ~ん♪そ、そんなに大事なんだ…私の事…』


「当たり前の事を言わないでくれるか?」


『そ…そっかぁ……ふふっ♡』


「とにかく何が嬉しいのから分からんが説明してくれ?家の壁から下半身だけ出ている理由はどうしてだ?」


 そう、そうなのだ…。俺の目の前には家の壁に上半身を突っ込み…下半身だけが取り残されている優花の姿…。これってよくエロゲやエロ漫画であるシチュエーションの壁尻って奴に見えるんだが気の所為か?気の所為ならいいんだ。俺がそういうシチュエーションの漫画を見た事あるからそう思っただけだから…。


 いや、敢えて言おう…コレは壁尻であると…。




『…わ、訳は…言えないわ…』


「はぁ?わ、訳は言えないって?じゃあ、麻美さんや使用人の人達は?愛もいないのか?」


『…居ないわ。全員出掛けてるの…』


「なるほど…だから俺を呼んだのか…」


『…そうよ』


 道理で俺に助けを求めた訳だ…。まあ、正直に言えばこうなった理由を聞きたいんだけどな…。普通そんな風にならないだろ?


『と、とにかく…助けてよ?この通り綺麗に嵌まってしまって…動けないのよ…』


 優花はコレを見てよと言わんばかりにその場で足をジタバタジタバタ──


 そうなるとどうなるか…?スカートが綺麗に捲れて純白の下着が視界に入る…。


「お、おい!?し、下着が見えてるんだが!?」


『んなっ!?ば、馬鹿っ!?と、豊和君のエッチ…スケベ!?』


「…み、見ないから安心しろ…」


 ガッツリ見えてるが…そう言うしかない…。


『ま、まさか…そう言いながらもガン見してるんじゃないでしょうね!?み、見るなら一瞬にしておいてよね!?』


「そ、そんな事しねぇーよ!?」


 見るなら一瞬ってなんだよ?混乱してとんでもない事口走ってんぞ?


『み、見ないの…?私の下着なんかに興味ない…?』


「俺になんと言えと!?」


『見たいなら見たいって言えばいいのよ!』


「…俺にどうしろと?ったく…とにかく腰を掴んでこっちに引っ張るからな?それともお尻を押せばいいのか?」


『…ふぁっ!?ふ、触れるのっ!?』


「他にどうしようもないんだが?」



 業者か何かを呼んで壁を壊してもらうか?


 でも、ここはエロゲの世界だしな…。変な奴等が今の優花を見たら…それこそエロに突入してしまう気しかしないしな…。いや、間違いなく優花に襲い掛かると思う…。俺も年頃の男だ。かなり我慢しているんだぞ?言わないだけで。普段は妹みたいに思ってるけども、可愛くて綺麗な同級生が目の前でパンツ一枚でお尻を突き出してるんだ。パンツをおろしてそのまま行為に及んでもおかしくないんだからな?



『ううっ…わ、分かった…こ、腰を掴んで引っ張ってみてくれる?』


「…了解」


 俺は優花に近付き腰に手を添える。そしてグッと腰を落とす…。コレはアレだな…。第三者が俺達を見たら…絶対に勘違いされる格好だぞ?ぶっちゃけて言うとバックの体勢だよな…これって…。


『ひゃん!?』


「…た、頼むから変な声出さないでくれ」


『しょ…しょうがないでしょ!?くすぐったくて…んっ…♡』


 んっ…じゃないんだよ?そんな色っぽい声出さないで欲しい。さっきも言ったが一応俺も男だからな?


『そ、それに…な、なんか…お、お尻に硬いモノが…あたっ、当たって…』


「ベルトだからな?当たってるのはベルトの金属の部分だからな!?と、とにかく引っ張っるぞ!」


 それは本当にベルトだからな?


『んっ…急にっ!?痛っ…痛い痛いっ!豊和君!?ストップストップっ!?む、胸が引っ掛かってるの~!!』


 俺は引っ張るのを止める…。



 ──と、なると残すは押すのみ…か。


「優花」


『な、何っ!?』


「触るけど邪な感情はないからな?」


『触るって…どこを!? んんっ~~~』


 無我の境地でお尻を掴み…そのまま押す!押して押して押しまくる。 一瞬…柔らかいその感触に呑み込まれそうになるが…俺はなんとか耐える事ができた…。


 …無心だ…無心で押すのみ──



“グググッ──”


『ちょっ!?無理無理無理無理無理無理無理っ!!お尻が痛いわっ!お尻が割れちゃう!』


 お尻は元々割れてるだろ?だけど…優花のその言葉に俺は押すのを止めた。手に残る柔らかいその感触は考えない様にする…。   


「…優花」


『な、何っ?』


「…諦めよう」


 うん…諦めるしかないな…。


『ちょっと諦めないでよっ!?どうにか助けてよっ!?』


「俺の理性が保たん時が来ているんだ」


『理性? ──って…ふぇっ!?』


「い、意味が分かったか?これ以上となると…優花に襲いかかっても…不思議じゃないんだ…」


『……そ、その…す、少しだけというか…と、豊和君なら…私…』


「そういう言葉がガリガリと理性を削っているんだがっ!?」


『と、とにかく…お願いだから諦めないでよ…このまま放置されたら…私…』


「嗚呼!もうっ!」


 俺は優花の腰を掴み…


『んんっ~ ちょっ!ベルトじゃない硬いモノがあたっ、当たってるからっ!?い、いきなりは…だ、駄目ぇ…痛っ!?む、胸がもげるぅぅぅ~~~』


 もう一度だけ力任せに引っ張ってみた…。 すると、“スポン…!”という感じで優花が壁から抜けて…俺達は勢いよく後方へと倒れ込んだ…。


「いたたたっ…」


「……………」


「な、何とか抜けたわね?ほ、本当に…あ、ありがとうね、豊和君?」


「…………」


「豊和君?」




 敢えて言おう…いい匂いであると…。


  敢えて言おう…何でそんなうまい具合に下着がズレるのかと… 。


 敢えて言おう…女性の大事な部分を見るのも直に鼻と口が触れるのも初めてであると…。



 そして思う…。やはりここはエロゲの世界なのだと… 。



「と、豊和くぅぅぅぅぅぅん!?」





 限界に達していた俺は優花のそんな声を聞きながら意識を手放す事に。余談だがこの騒ぎは麻美さんが引き起こした事が発覚するのだが…それはまだずいぶん先の話だ。

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