第11話 関係構築(3)

 物置小屋生活自体は一日で終わった。

 というのも、夜のうちに子供たちがひっそり引き上げてしまったためだ。

 まあ、おたがいさまで彼らも一応大人の男、言葉が通じず何を考えているかわからない相手の近くでは安心して眠れないのだろう。僕は油断もいいところではいってくればものが倒れて大きな音がするような工夫をしたが、これまで不自由な姿勢であまりよく眠れなかったのでぐうぐう寝てしまった。

 で、朝になったら彼らはいなかったというわけだ。

 罠の有無を確かめないといけないが、僕はなじんだ母屋を取り戻すことができた。

 肉は大半彼らにあげてしまった。保存方法がない。二、三日食べ伸ばすつもりで大き目の鍋に煮込んだ分以外はあげてしまったのだ。内臓と皮は処理がわからないので捨てた。育ち盛りだ。あれだけ与えてもぺろりと食べてしまうだろう。

 そのお礼のつもりなのか、食べられる団栗とキノコと木の実がザルにもられて物置小屋の前に置かれていた。毒があるなどで食べれられないものはわざわざ地面に広げて捨ててあって、次から学習しろということらしい。

 彼らとはこれっきりになるかと思ったが、どうやら肉の欲には勝てないらしく、しばらくしたらまた姿を現した。

 やってきたのはクルルとダルドで、お互い警戒しぃしぃ身振り手振りで取引をもちかけてくる。

 僕が彼らに提供するものは肉、生皮、彼らが提供してくれるのは塩、塩漬け肉、なめし皮。他に余った食材があれば。初回は肉の返礼ということで、木の実や食べられる茸、自然の根菜、塩をもらった。仮は作りたくないらしい。取り決めより多い気がしたが、そこはどうも捕まえてひどいことをした謝罪の意味らしい。

 受け取ってしまえば許したことになるけど、まあいいでしょう。渋い顔を作って受け取ることで、不十分だけど大人の対応ということにした。

 この取引で、取引に使う個々の名前、それに秤ももってきたので重さの単位と錘一つがだいたい五百グラムくらいということがわかった。

 以後、取引できるものは順次増やしていけるようにしたい。

 まずはロープだ。編み方を調べ、材料を探して補充していかないとくくり罠が維持できなくなる。

 子供たちがいるところはどんなところかわからないが、取引品目に塩があって、塩漬けなど潤沢に使っているところを見ると、塩の取れるところらしい。岩塩か井塩の取れるところだろう。だいたいの方向はわかるが、あえて探さないほうがお互いのためという気がする。

 こうして、僕たちはゆっくり関係を構築していった。

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