第33話 大物狩り(2)

 で、まあどうなったかというと、神兵シイナご一行はホオノキ村の大型魔物を間引いてツツジ村を安堵させ、そのままさらに奥地に向かって超大型魔物を討伐。そののち、帰りに白百合村を経由して賊がまだいれば殲滅ということになった。賊たちの雇い主がアンカレ卿であるなら、虐殺なしでせいぜい徴発でその時に痛い目にあわされる村人がいるくらいで収まるという判断があったからだ。呼び戻されていなくなっていれば、ほっておいてもあちらに侵入した大型魔物に痛い目にあうことになる。

 で、僕たちはというと少し遠いがハンノキ村に行って大型魔物の脅威を除くように言われた。倒す必要はなく、怒らせて奥地へ誘引すればいいと。その時に超大型魔物が倒されていれば、あるいはそれを察して奥地にもどってくれるかもしれない。

 これを、二人でやれと?

 そういいたかったが、そんなことを言うと会議についてきたダルドが一緒に行くと言い出しそうなので内心なきながら最善をつくすとだけ答えておいた。

 ダルド向けに強がってるが内心もう不安でしかたないのがわかったのだろう。

 会議がすむとオリアスが話しかけてきた。

「ハンノキ村の近くにいる大型魔物は身の丈二メートルの猿だ。武器を持つ知恵はないようだが、腕が地面につくほど長く、足はその分短い。槍でも危ないと思う。石礫をなげつけるのがいいと思う。ぶつけて全力で逃げれば追いつかれはするまい」

 安全に勤めを果たせる作戦を授けてくれた。

 それから、オリアスは少し石投げの手ほどきをしてくれた。勝手にかれは斥候だし、レンジャー的なもので弓でも使うのかと思っていたが、飛び道具はなんと石投げだったのだ。手でなげつけることもあるし、皮のカップに丈夫な紐をつけたスリングを振り回して距離を稼ぐこともある。どちらもアストラル体で強化された筋力で投げるので威力が半端ではない。スリングも少し練習させてもらったが、確かに明後日の方向に飛んでしまうことが多い。一応コツのようなものを教えてもらえたので練習はしておこう。

 手でなげるほうは、フォームを直してもらうと劇的に命中と威力があがった。この野球のピッチングみたいなの、どうして野球のない世界のオリアスが知ってるのかと思ったが、特に異世界からの知識というわけではなく、投石を使うスカウトは多くって師匠から弟子に伝播するごとに少しづつ改良した一種の収斂進化だったらしい。

「こんなのもあるけど、高価な上に扱いが難しいからやめておこう」

 と、細い鎖のついた鉄球を見せてくれた。近距離での戦いではこれを投げつけて、鎖で回収してまた投げるなんて戦い方もできるらしい。からんだりすることを考えると扱いが難しいというのは理解できる。

 弓とか使わないのかと聞いてみたが、邪魔だし矢が高いから使わないという返事。それなら投槍器と手製の槍のほうが使いやすいと考えているらしい。

 飛び道具の場合、腕力で投げる武器が一番いいらしい。弓なら常人が引けないほどの強弓を用意しなければならないし、吹き矢は飛距離が少し伸びるだけでもともと威力はないのであまり効果がない。

 クルルがちょっとなにか考えているようだが、時間もあまりなく、衛兵隊から食料のつまった背嚢を借り、皮のシャツとズボンという簡素な防具をもらって出発の準備を整えた。ついでにオリアスのものを参考に、自分で石礫入れを縫ったらびっくりされた。最初はクルルが縫うといってたのだが、彼女は裁縫はあまり得意ではなかったのだ。クルルの失敗作はリドが直してクルルの分もなんとかなった。

 心配だから自分もいくといいだすダルドに留守を任せ、寂しがるカザンになるべく早く戻ると約束し、宝物だという干からびた蛙をもらった。リドは何も言わず、クルルと抱き合って涙をこらえているようだ。

 あんな二人だけで大丈夫かと心配する声が聞こえたが、クルルはなぜか胸をはっている。その背中になんか長めの管があるのでなんだろうと思ったら吹き矢だった。

 彼女はもともとそれで狩猟もやっていたらしい。

「石をぶつけて逃げる。この作戦でいこう」

 危ないから。

 あの訓練方法でどの程度強くなったかはわからないが、けっこう重量のある荷物をかついでいるのに、さほど苦にならなくなった。いじられてもともとある程度強い僕はいいのだが、もともと成長しきっていないクルルが心配だ。

 心配だ、といっている前で僕より大きな荷物を軽々とかつぐ彼女。ちょっとふらつくので少し持とうと申し出たが断られた。

「大丈夫大丈夫、バランスが難しいだけ。これはこれで鍛錬になるわ」

 すごいな、この子は。

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