第31話 またね

 またねって、約束する。

 指きりして階段を駆けおりる。

 雲の上では犬だったり猫だったり、カエルだったり馬だったり、六本足だったり八本足だったりしたけれど、地上へおりるときは、どれか一つを選ばなくてはいけない。

 遊んでいた友達が、どこへ行ったのか、何になったのかは分からない。どうしようかな。

 たくさん撫でてもらえるうさぎか、野原を駆け回るうさぎ。自分の魂がリサイクルされると知った時に、飼っていたあの子にどうしたら会えるのか考えて、それを選ぼうとしていたけれど。

 この間まで自分がそうだった、人間なんてどうだろう。人間も数が多いから、どこの誰になるか分からない。うさぎを飼えるか分からないし、食肉として出会う可能性もある。

 それでも、またね、と約束した誰かに会うかもしれないから、一歩踏み出す。

 生まれ変わりなんてものじゃなくて、体がバラバラの元素として別のものに転用されるように、魂も転用されるだけ。

 けれど、この魂が、あの子達が、できれば楽しかったと言えるように願いながら、新しい自分に変わっていく。

 また、ね。

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その日々をめぐる物語 せらひかり @hswelt

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