第24話 朝凪

 空が白くなり始めてしばらくすると、朝焼けになる。さっきまであった風は少し冷たかった。夜の名残りの、湿った風。

 その風が、すうっと、おさまる。

 港の船達は息を潜める。いつもなら、漁から帰ってくるはずのもの達もなく、身動きするのはわずかな波ばかり。それも、次第に静かになる。

 朝凪の、朝焼けが映る燃えるような海を、すい、と緋色の竜が行きすぎる。

 すい、すい。鏡面のように光る海に、さざなみ一つ立てないで行く。

 するすると太くて長い尾が、海に触れる手前で持ち上げられる。

 見る間に遠ざかる巨体。

 鳥が鳴き始める。

 さながら、雨上がりの直前にそれを察知した時のように。

 息を吹き返したように、波が立つ。風が頬を撫でる。

 頬に張り付いた髪の毛をよけて、またシャッターを切れなかった機器をしまい、散歩の続きに戻った。

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