第23話 ストロー

 ストローを加工して風車を作る。風を可視化して歩いていたら、塀の上からじっと見つめるものがあった。

 小型の竜だ。トカゲそっくりな見た目で、掌に収まる程度の大きさ。

 風車が珍しいらしく、目を離さない。

 カラカラ回る簡易的な風車を、近づけて見せてやると、ふう、ふうと息を吹きかけてくる。ちょっぴり炎を吐くのはご愛嬌。

 端が焦げて丸まった風車を、軽く振る。まだ回りそうだ。

 手を振って別れ、また歩き出す。

 この間、風が吹くよと友人の魔女に言われ、どういう風なのか分からないまま、今日はとりあえず風をつかまえて歩いているわけだが。なぜかさっきの竜がついてくる。

 魔女の住むアパートを訪ねると、寝起きの顔で、良い風が吹いてるじゃないかと言われた。

「それは風竜だよ」

「炎竜の間違いじゃない? 風車、焦がされたんだけど」

「炎を吐くのは、風による摩擦熱が強いからで、火を作れる器官は本体にはない」

 飼われていてどこかから逃げ出した個体かもしれないので、一応関係機関に届出をしておく。

 魔女は「どんな風が吹くかは分からなかったから、可愛い風でよかったよ」と竜に話しかけ、馴れ馴れしくしないでと素っ気ない態度を取られていた。

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