第22話 雨女
雨女と呼ばれていた。子どもの頃から、行事ごとがあると大雨が降る。学校で、もう、君にはイベントを教えないと宣言され、何も用意なく突然遠足に連れて行かれたが、やっぱり雨が降った。
見る間に曇る空。ゴロゴロ、ご機嫌な雷の音。
「すっごい。降水確率百パーセントなんて、すごいよ」
ほめてくれる同級生の無邪気さが呪わしい。
何人かが噂を流し、どこから広まったのか、見知らぬ人が訪ねてくるようになった。日照りの場所に連れて行かれる。
どんなに乾いた場所にも、湿らす程度でも雨が降った。
傷んだ農作物を見下ろし、それらが息を吹き返すから、少し救われた気がした。二、三日もすれば、豪雨となり、邪魔者扱いされて追い払われるけれど。
帰宅すれば雨は止む。学校も、登下校路も、晴れの日があるから、ずっと雨というわけではない。日常の買い物も大丈夫。特別なお出かけというのは雨が降る。
「じゃあいつか、世界中が自分ちになれば、雨女を卒業できるんじゃないの?」
無神経な同級生は、高校生になってもそんなことを言っていた。
さらに進学して、自分の体質を研究したが、成果は得られない。
ときどき、雨を降らせるために各地に呼ばれて行き、雨を降らせる伝承を集める。
近年は、他の星に移住した人達のために、水分子を出現させる装置のように呼ばれて行った。
自分の子孫もまた、たまに雨を降らせる。
きっと雨が好きな龍が付いているのだと同級生は言うけれど、お前の子どもが悩んでいるときにも無邪気なんだなと、ちょっと呆れる。
一緒にいることにも慣れて、出かける時は雨傘やコートを持ち歩く同級生は、雨女を疎まないまま、まだしばらくは雨に付き合ってくれるらしい。
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