第21話 自由研究

 自由研究を申し渡されたので、自由研究を研究することにした。

 自然科学系ならコンクールに出せること。意外と専門的な研究もある。セミの生態や水と水蒸気での温度の感じ方など。人文系は切手や地図、食の研究テーマに合わせて応募先がある。──本人の好みより、賞が目当てになりそうな。

 どうでも良さそうに見守っていた同居人が、こちらの煩悶がうるさくなったのか、気楽な声をかけてきた。

「励みになるなら、いいんじゃない? そこからいつの間にか研究者になってたり、ならなかったりするし」

「まぁ大抵の人は、なったり、ならなかったりするよ」

「そうだけど」

 自由研究をまとめていく。長い、自由研究の歴史をひもとく。宇宙について。惑星間飛行について。瞬間移動と時間移動について。

 中型竜種である同居人の尻尾が、前のめりになったこちらの体を持ち上げる。

「集中しすぎ。はい、立って動いて」

 暇そうだから自由研究でもしたら、と言ってきたのは同居人の方だ。外は砂嵐がひどくて、観測機器が動かないから、今日は仕事が休み。することがなくて、読書も録画データを見るのも飽きてしまって、同居人を構っていたら鬱陶しがられたのだ。

 ──自由研究でもしたらいいじゃない。昔の地球人は、暇な休みの時にそうしていたんでしょ?

 きっと、同居人は分かっていない。

 ある意味、自由研究の先端を歩き続けて、個人で行ける星に行き、勝手に研究して、星に住む住人に「このまま置いておいたらすぐ倒れそう」と心配されて同居になり、世話を焼かれている現在。

 ずっと自由研究だよ。

 隣に意思疎通できるものがいるのも楽しいし、研究も楽しい。

 自分の世界は、ずっと夏休みだ。

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